僕は「まだ、まだ、これからいろいろ探すところやから」と言った。
お姉さんは「あっ。そうか」という感じで笑っていた。
僕の場合、僕は店員さんの顔を覚えていなくても、店員さんのほうが覚えていてくれるということが時々ある。
それで、一番嬉しかったことと言えば、会社をやめて一ヶ月くらい経ったときに、会社の人事課に今後のいろんな手続きのために必要な書類を取りに行った。
その帰りに、会社の近くのすき家に入ってカレーを注文した。
するとすき家のお姉さんが僕に「お久しぶりですね」と言ってくれた。
僕はそのお姉さんのことを全く覚えていなかったので、きっといつも会社の昼休みにすき家に行ってカレーを食べる僕のことを彼女は覚えていてくれて声をかけてくれたんだと思ってとても嬉しかった。
でも、まさか、「会社をやめて、今後必要な書類を取りに来たん出すよ」とは言えなかったので、「そうですね久しぶりですね」とだけ言った。
でも、あのときにこやかにすき家のお姉さんが声をかけてくれたことはきっとずっと忘れないと思う。
先日のユニクロのお姉さんも僕にかごを差し出す時のにこやかな顔つきが僕のことを覚えてくれているような感じの顔つきだったので、ひょっとしたらあのすき家のときと同じパターンで僕は覚えてないけど向こうが覚えてくれているというパターンだったのかもしれない。
僕は買うときも買わないときも、商品を割とじっくりと見るタイプだから無意識のうちにちょっと目立つという場合があるのかもしれない。
ユニクロは大概、商品のそばに、その商品を着用したモデルさんの写真とか、商品の着用イメージのイラストがあったりする。
僕は、ちょっとネックウォーマーが欲しくてネックウォーマーのそばにそういう商品の着用見本の写真やイラストがないか探したけれど見当たらない。
それで、さっきの買い物かごを差し出してくれたお姉さんに、「ネックウォーマーの商品の着用見本の写真かイラストはないですか」と尋ねた。
するとお姉さんはネックウォーマーが置いてある周辺をぐるりと探して「写真やイラストはちょっとないですね」といってそれから一瞬考えて、陳列してあったネックウォーマーを一つ取り出して近くのマネキンの首のところにそのネックウォーマーをつけて「こんな感じですよ。寒いときはこの紐をぐっと引っ張れば風が通りにくくなります」と言った。
「なるほど、そういう感じですね。わかりました」と僕は言った。
なかなかいい感じだったので一つ買ってしまった。
今年はコロナでマスクをしなければならないので、マスクにマフラー、それにニットの帽子だと、老眼鏡をかけたときや、音楽を聴くためにイヤホンをしたときにもういろいろとからまってしまったり、眼鏡が曇ってしまったりして大変。
ちょっとでもマフラーよりも手軽にしたいと思ったのがネックウォーマーを買った理由なのだけれど、もっと寒くなれば結局マフラーと言うことになるかもしれない。
でも、本当にコロナでいつもの年と違うことを考えなければならないのは出費にもなるし面倒でもあるなと思う。
しかし、概して男性は写真がないと「写真はありません」と言って終わる場合が多いけれど、女性は、写真がないならないで、ちょっとマネキンにそれをつけてみたり、そういう機転は男よりもきく場合が多いのでその点は得だなとは思う。
中には怖い女性もいるけれど、、、。
歌の練習をしようと思って、カラオケボックスに予約を入れていった。年末なので予約を入れたほうが確実と思った。
僕は地声が大きいので普通のボリュームの大きさにしていると、マイクの音よりもややもるすと地声のほうが大きくなってしまって何のためのカラオケかわからなくなってしまうことがある。
それでカラオケボックスではボリュームを基本設定値よりもかなり大きくする。
そうしないと、地声の大きさでぶっちぎって歌ってしまって喉を痛めてしまう。
それでカラオケ店の店員の方に迷惑をかけている可能性もあると思っているのでカラオケ店ではできるだけ低姿勢で店員の方に接するように努めている。
やはり店員の方に嫌われると行きにくくなるので、、、。
予約を入れていったところは基本設定値よりもちょっとボリュームを上げるだけでハウリングが起きた。
それでボリュームを基本設定値に下げて声を出すと、カラオケのスピーカーから出てくる声と僕の地声の大きさが変わらなくなってしまう。
まあ、なるべく小さいボリュームで工夫しようと思って基本設定値よりも1か2だけ大きい音量にしてももうハウリングが起きる。
部屋を変えてもらおうかと思ったけれどここのカラオケ店はバイトの入れ替わりが激しい店でしかも学生バイトの比率が高いので、下手にクレームを入れるとクレーム対応がしっかりできるスタッフがいなくてやぶへびになることも十分にあり得ると思った。
大体、都会のど真ん中にあるのに値段が安いので高校生に人気のある店なので、、、。
スタッフもそれほどハウリングのチェックに時間を割いていない可能性が十分にある。
今はコロナで消毒などしなければならないことがいっぱいあるし。
経営者もきっと設備投資の費用を抑えて廉価で利益をあげようという経営方針だろうし、、、。
僕も58年生きてきているのでそういうのはだいたい感覚でわかる。
ここのスタッフがいくら努力しても経営者が設備投資を抑えているところまではバイトの子ではカバーしきれない。
バイトの子に怒りをぶつけてもそれはお門違いと割り切って、フリータイムの料金を払うという念書に受付のときにサインしたのでもうその料金を黙って払うつもりで30分くらいでその店に見切りをつけた。
ハウリングのする機器で歌っても無駄に疲れるだけだ。
何も言わずに、「歌の練習終わりました」と僕は受付で言ってフリータイムの料金を払おうとしたら、バイトの女の子がフリータイムですけれど30分くらいしか利用しておられませんのでとうことで、フリータイムの料金は支払うと念書に受付の時サインしたのにその場の機転で料金を所定の料金の4割引きくらいにしてくれた。
そしてその金額を僕が支払おうとしたら、またちょっと女の子は考えて、「いや、まだ30分も経過していませんので」と言ってさらに所定の金額の7割引きくらいにしてくれた。
さらに「年末年始のお得意様用の割引券はお持ちですよね」と声をかけてくれた。
「はい、それは持っています」と僕は言った。
もう僕の方はここへは二度とこないかもしれないという覚悟でフリータイムで入って30分も経過していないのにもかかわらず所定の料金を支払おうとしているのに、やっぱりこういう時の女性のとっさの判断はちょっと違うなと思う。
もちろん、僕は記憶力がいいのでフリータイムの料金を支払って、後で実際にどういうことが起きたのか消費者センターに報告して相談したりしたらひょっとしたら困るのは店の担当者の人かもしれないとも思うけれど、、、。
しかし、こういう言葉をかけてもらえるとフリータイムでは二度と行かないもしれないけれど30分とか1時間未満くらいの細切れ時間のときなら、また行ってもいいかなと思えてきたりする。
あるいは機器の音質は特に気にならない気分のときとか、、、。
今の時代、バイトの子はほとんど権限を持たされていなくて、あくまで経営者が決めたマニュアル通りにやらなければならない場合が多いのでこういう機転をきかせるのはバイトの子もきっと勇気がいったと思う。
本当に、ありがたいことだなと思う。