たままま生活

子育ての間にこっそりおでかけ・手作り・韓国語・・・。
多趣味な毎日を紹介します。

『僕のおじさんブルース・リー』

2012-09-16 22:38:39 | 韓国文学
チョン・ミョングァンの新作は上下800ページ近い大作。
ブルース・リーにあこがれた純朴な青年のアクション・恋愛・青春ストーリーです。



ブルース・リーにあこがれて、腕っぷしは強いけど気は優しくて生きるのが下手なおじさんを、兄弟のように育った甥の視点から描いています。

物語は僕の小学生時代からスタート。チョン・ミョングァン曰く、아직 사타구니에 털도 생기지 않은 무렵.
(あえて訳しませんが・・・さすがチョン・ミョングァン)
恋をしたり、嫉妬に狂ったり、殴ったり殴られたり傷ついたり傷つけたりの青春話は、読んでいてぐっと胸をつかまれます。

波乱万丈で痛くて切ない話ですが、最後はしみじみとしたハッピーエンド。
イマイチ地味なので、映画化するときにはラストはミュージカルスタイルで、いやさかのぼって全編ミュージカルでどうでしょうか?
なんて、口出ししたくなるほど、チョン・ミョングァンの小説って映画になりそうなんです。

映画畑出身のチョン・ミョングァンのことですから、内幕は本当にそうだったんだろうな、と思わせます。
そして映画の業界用語って結構日本語が多いんだな~という発見も。

長いストーリーを飽きさせないのは、脇役がみんなとっても魅力的だから。
がり勉でかわいげのない兄ちゃんも、何のとりえもない“僕”も、朴訥で気のいいチョンテも、不細工で嫉妬深いオスニも、不良に憧れているドッチも、ドッチの憧れのやくざのウサギも、中国料理屋の馬社長も、憧れのマドンナ、ウォンジョンも。
みんなおじさんとかかわる中で、変わっていきます。
忘れたころにまたストーリーに登場して、大事な役割を果たしていくので、
あの伏線がここにつながっているのか~。と思うとすっきり。

あと、読者に対してとっても律義で、
たとえば、おじさんと僕が離れて暮らしていた、僕は知らなかったはずの当時の話も「おじさんは~ていたけど、僕らはそんなこと全く知らなかった」のように、僕の視点で語られるんですが、「じゃあ、なんで知ってるの?」と突っ込みたいタイミングで、あとから「おじさんは僕と酒を飲みかわしながら当時の話をしてくれた」「泣きながらその話をしてくれた」のように、ちゃんとつじつまを合わせてくれるんです。

====以下ネタばれ===

望まない恋人から逃げるように、そして後から思えば運命の恋人に引き寄せされるように、
田舎を飛び出したおじさんはソウルで働き始めます。
ソウルの映画のメッカ忠武路で、若い時には中華料理屋の出前持ちとして、再び戻ってからはアクション俳優として過ごします。
その間に思いがけない挫折と、三清教育隊での暴力に耐える日々が挿入されています。

一方田舎では、開発の利権を争う暴力組織がアクション映画さながらの血で血を洗う闘争を繰り広げます。

運命の恋人と思いが通じたと思った矢先、彼女を失ったおじさんは、復讐を誓います・・・・・。