田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ミリオンダラー・アーム』 

2014-10-05 10:59:47 | 新作映画を見てみた



「野球はビジネスが全てじゃない。だから楽しむんだ」byJB・バーンスタイン(ジョン・ハム ) 

 インド人として初めてメジャーリーグ球団(ピッツバーグ・パイレーツ)と契約した2人の投手リック・シンとディネシュ・パテルと、彼らを発掘したエージェントのJB・バーンスタイン(ジョン・ハム )についての実話を基に映画化したもので、原題は「百万ドルの腕」。

 シンを『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(12)のスラージ・シャルマ、パテルを『スラムドッグ$ミリオネア』(08)のマドゥル・ミッタルが演じている点にも注目だ。

 前半は、大規模なロケを行ったインドのムンバイ、タージマハルなどを舞台に、選手発掘の経緯をコミカルに見せ、後半は、ロサンゼルスでの新生活と入団テストまでを半ばシリアスに描いていく。この二段構えの構成が“事実は小説よりも奇なり”の面白さを引き出した。

 そして、野球を媒介に、中年男JBの人生やり直しとチャンスをつかもうとする2人の若者の姿を並行して描きながら、利益至上主義だったJBが最後は「野球はビジネスが全てじゃない。だから楽しむんだ」と2人にアドバイスするまでに変化する姿を見せる。

 と、この手の映画の定石を踏まえながら、見る者に好印象を抱かせるクレイグ・ギレスビー監督の演出はなかなかのもの。コーチ役のビル・パクストン、スカウト役のアラン・アーキンが“おいしい役”で好助演を見せる。

By the Way
併せて見るとさらに本作が面白くなる映画に、スポーツエージェントの実態と選手との友情を描いたトム・クルーズ主演の『ザ・エージェント』(96)、史上最年長の35歳のルーキー投手の実話を映画化したデニス・クエイド主演の『オールド・ルーキー』(02)、老スカウトの意地を描いたクリント・イーストウッド主演の『人生の特等席』(12)などがある。

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