『KANO 1931年海の向こうの甲子園』
1931年、日本統治時代の台湾から甲子園大会に出場し、決勝まで勝ち進んだ嘉義農林学校(通称カノ)の日本人、台湾人(漢人)、台湾原住民による混成野球部員と監督の近藤兵太郎(永瀬正敏)との知られざる物語を描く。
その1年前に起きた抗日運動「霧社事件」を描いた『セデック・バレ』(11)のウエイ・ダーションが、今回は日台の交流を描いた本作をプロデュースした。
監督は『セデック・バレ』にも出演し、本作が監督デビューとなったマー・ジーシアン。3時間余りの大作だが、見ていて飽きることはない。
カノの部員たちの健気さに心を打たれるし、近藤の「球は霊(たま)なり。霊正しからば球また正し」という言葉も心に残る。
ところで、本作には後に日本の野球界でも活躍した“2人の呉”が登場する。
エースで4番打者の呉明捷は早大に入学し、長嶋茂雄以前の六大学野球の通算本塁打(7本)の記録保持者となった。
本作ではまだ少年として登場する呉波は、後に呉昌征を名乗り、巨人、阪神、毎日で活躍。打者としては首位打者2回と盗塁王1回を獲得し、投手としてはノーヒットノーランを達成。“人間機関車”と呼ばれ、日本の野球殿堂入りを果たしている。
映画を見た後、2人の呉も描かれる鈴木明の『日本プロ野球復活の日-昭和20年11月23日のプレーボール』を再読した。
『バンクーバーの朝日』
戦前のカナダに実在し、バントと盗塁を駆使して旋風を巻き起こした日本人野球チーム「バンクーバー朝日」の選手たちと彼らの家族、隣人たちの姿を描く。
投手・亀梨和也
捕手・上地雄輔
二塁手・勝地涼
三塁手・池松壮亮
遊撃手・妻夫木聡
監督・鶴見辰吾という布陣
皆、猛練習の跡が伺えるなかなかのプレーを見せる。
インド人として初めてメジャーリーグ球団(ピッツバーグ・パイレーツ)と契約した2人の投手を描いたハリウッド映画『ミリオンダラー・アーム』も含めて、知られざる野球の歴史や逸話が映画の題材として掘り起こされるのはうれしい。
どの映画も野球のプレーシーンがリアルなのがいい。やっぱり野球は素晴らしいと感じることができる。