1892年に芝居小屋としてスタートし、以来122年にわたって地元の人々から愛されながら、2014年に閉館した広島県福山市の大黒座。そこにまつわるさまざまな人々の思いを、ドキュメンタリー的な要素を加えながら描いている。
自主映画や自治体広報映画のようにも見える稚拙な部分もあり、気恥ずかしさを感じさせられるのは否めないが、舞台が閉館間近の映画館ということで、映画好きの琴線に触れるのだ。
ミッキー・カーチスが、高松琴平電鉄100年記念映画『百年の時計』(12)での老画家役に続き、今回は閉館する映画館に現れる謎の老人役(映画館に住む天使?)を演じて印象に残る。
劇中に『素晴らしき哉、人生!』(46)、『ローマの休日』(53)の挿入もあり、ラスト近くの数々のスターの名前が挙げられるシーンにも感慨深いものがあった。
だが、映画館が立ち行かなくなった現実が描かれたこの映画を見ていると、昔ながらの映画館に対するわれわれの思いはもはやノスタルジーに過ぎないのか、こうした映画館はその役割を終えたということなのか…という気もしてくる。
けれども、そうは思いながらも、エンドクレジットに、たくさんの映画を見たり、取材をしたりもした、銀座テアトルシネマ、浅草中映、銀座シネパトス、吉祥寺バウスシアター、みゆき座…と、今はなき映画館の写真が次々に現れると、まるで墓碑銘のようだと感じて、思わず涙している自分がいた。
今や墓碑銘のようになってしまった「違いのわかる映画館」はこちら↓
http://goo.gl/LODlkq