小栗康平監督が、画家の藤田嗣治の半生を、華やかなパリ時代と帰国後の戦中の日本時代に焦点を当てて描く。パリ時代はデカダンな雰囲気を出すためにフェリーニのようなタッチを狙ったと思われるシーンもある。
藤田に扮したオダギリジョーは、風貌やフランス語のセリフも含めて健闘しているのだが、フランスの俳優(エキストラ)たちとの間が合わず、何ともちぐはぐな印象を受ける。これは演出の不備によるものではないか。
この映画を見ていると、藤田の持つ不思議さは何となく分かるのだが、猫と女の画を得意とし「乳白色の肌」と称されたパリ時代から帰国後の精緻な戦争画への転換の謎など、何故?という核心にはほとんど触れていない。というか、あえてぼかして描いたのだろうが、何だかはぐらかされたようで見ていてすっきりしない。
また、セリフを削ぎ落として絵で見せるという手法は、後半の戦中の日本が舞台になると生きてくるが、全体的には暗い画面も手伝ってもやもやとした印象を受け、こちらも成功しているとは言い難い。
そんなこの映画は、東京国際映画祭で見たのだが、残念ながら途中で席を立つ外国人の姿が目立った。