「その気持ち、分かるよ」とはならない
今から30年前の1980年代、フランスのミモザの島の沿岸の海で、一人の女性が謎の死を遂げた。女性の長男であるアントワーヌは、40歳になった今も、母を失った悲しみから抜け出せずにいた。彼は母の死の真相を突き止めようとするが、なぜか家族も知人も母の死については固く口を閉ざす。
海の中道「パサージュ・デス・ゴワ」が重要な役割を果たす家族ミステリー。ヒッチコックタッチを狙ったようなところもあるが、全体的にはいかにもフランス映画らしい、どろどろとした情念の世界が描かれる。
ただ、主人公をはじめ、登場人物の心理描写が総じて中途半端なので、残念ながら「その気持ち、分かるよ」とはならない。当たり前のことだが、国が違えばミステリーの描き方も異なるということか。