田中雄二の「映画の王様」

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『へるん先生の汽車旅行 小泉八雲と不思議国・日本』(芦原伸)

2017-03-29 08:57:37 | ブックレビュー



 ニューヨーク→シンシナティ→トロント→バンクーバー…。横浜→焼津→姫路→松江→出雲→熊本→神戸→東京。

 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)を元祖バックパッカーとして捉え、その生涯を、“旅と鉄道”という視点から追ったルポルタージュ。
作者は雑誌『旅と鉄道』に携わった紀行作家の芦原伸である。

 ハーンの話と作者の話が入り乱れるスタイルに、初めのうちは少々戸惑ったが、慣れてくると、新たなハーン論として思いのほか面白く読めた。中でも、アメリカでのルポライター、記者時代に「マーダー・バラッド(殺人事件をテーマにした物語的なフォークソング)」の影響を受けて書いた文章が、来日後、妻のセツという語り部を得て「再話文学(昔からの物語や伝説、民話などを分かりやすく書き直したもの)」へと昇華していったという件は興味深かった。

 ハーンに関する個人的な思い出は、小学校時代に学校の図書室で読んだ『怪談』、中学時代、英語のリーダーの教科書に載っていた「むじな=MUJINA」、「黒髪」「雪女」「耳無芳一の話」「茶碗の中」からなる小林正樹監督のオムニバス映画『怪談』(65)、山田太一作、ジョージ・チャキリスがハーンを演じたテレビドラマ「日本の面影」(84・NHK)などがある。

コメント
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