初代ジェームズ・ボンド、ショーン・コネリーのシリーズはリバイバルや名画座で見た。だから、オレにとってのリアルタイム、ジェームズ・ボンドはロジャー・ムーアなのだ。そのムーアが90歳で亡くなった。
コネリー・ボンドの最終作となった『ダイヤモンドは永遠に』(71)では、ボンドがやけに老けて見えたのに対し、ボンド役がムーアに交代した『死ぬのは奴らだ』(73)を見た時は、「おっ、ボンドが若返ったぞ」という印象を持ったのだが、実際はムーアの方が三つ年上だったらしい。
さて、ポール・マッカートニー&ウィングスのテーマ曲に乗って颯爽と登場したムーア。ボンドガールは、後に『ある日どこかで』(80)にも出演した美女ジェーン・シーモア、敵役のヤフエット・コトーも怪演を見せたが、映画の出来はいまいちだった。
クリストファー・リーを敵役に迎え、ブリット・エクランドとモード・アダムスという“ダブル・ボンドガール”で臨んだ『黄金銃を持つ男』(74)も不調で心配したが、(同時期に『ゴールド』という詰まらない映画も公開されたので、友と一緒にムーアを“黄金野郎”と呼んでちょっとばかにしていた)。
敵役のジョーズ(リチャード・キール)とボンドガールにバーバラ・バックを得て、コミカルな味も出した『私を愛したスパイ』(77)から“ムーア・ボンド”路線が確立されていったと思う。
ムーア・ボンド作品の私的ベストツーは、カーリー・サイモンが主題歌を歌った『私を愛したスパイ』と、トポルが助演し、シーナ・イーストンがテーマ曲を歌った『ユア・アイズ・オンリー』(81)かな。どれもモーリス・ビンダーのタイトルデザインが素晴らしい。
https://www.youtube.com/watch?v=F2k_95fxCzg
https://www.youtube.com/watch?v=Wy-c8aAntWA
https://www.youtube.com/watch?v=8kNksLL0sv4
また、日本でムーアの人気を盛り上げた陰の功労者は吹き替えを務めた広川太一郎だろう。「ダンディ2 華麗なる冒険」ではムーアではなく相棒役のトニー・カーティスの方を吹き替えていたっけ。どれも懐かしい思い出だ。