策士策に溺れる
ケーシー(アニヤ・テイラー・ジョイ)ら、3人の女子高生が突然見知らぬ男に拉致される。謎の場所に監禁された3人は、やがて男が多重人格者だと知り、恐怖のあまり脱出を試みる。果たして彼女たちの運命は…。
『スプリット』というタイトルの意味は、一人の人間の人格が「分裂」すること。その名の通り、ジェームズ・マカヴォイが女性や子供を含む、23もの人格を持つ男を怪演している。
監督のM・ナイト・シャマランは、異常な主人公と精神科医との対話を挿入しながら、ストーリーを展開させていく。これは、同じく異常者のレクターと捜査官のクラリスの対話を主として謎解きをした『羊たちの沈黙』(91)の路線を狙ったと思われる。
ところがこの映画は、続編の製作を意識したためか、「男はなぜ3人を拉致、監禁したのか?」「男の過去に何があったのか?」「変態後の男の運命は?」「生き残ったケーシーのその後は?」などの謎を解かないままに終わるので、見る側の気持ちは解放されずに消化不良を起こす。
また、監禁ものに見られる一種演劇的な密室劇としての面白さという点でも、最近の『ルーム』(15)『10クローバー・フィールド・レーン』(16)に比べると少々弱い。終始、シャマランという策士が策に溺れたような印象を受け、見ながら戸惑いを覚えた。