『どこかで誰かが見ていてくれる』(01)に続く、「5万回斬られた男」の異名を持つ“斬られ役”の福本清三への聞き書き本を遅ればせながら読了。
今回は、トム・クルーズ主演のハリウッド映画『ラストサムライ(03)出演時のエピソードと、定年を迎えた東映での日常が、あの独特の口調で語られる。
二つの話題から、日米の映画製作の違いが浮き彫りになってくるところが興味深かった。
その点、黒子(聞き役)に徹して、ほぼ全編を福本の語り口調で構成した小田豊二の功績も大である。
さて、この後、福本にはさらなる奇跡が訪れた。『太秦ライムライト』(14)で何と主役を張ったのだ。
無名の斬られ役が、「あの人は誰?」と話題に上り始め、知る人ぞ知る存在となり、著書が出版され、ハリウッド映画に出演し、主役を張るまでになる…。
「一生懸命やっていれば、誰かが見ていてくれるという気持ちで、四十何年やってきた」男への見事なご褒美。たまにはこんな出来過ぎな話があってもいいじゃないかと思わされる。
『太秦ライムライト』公開時に書いたコラムはこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/945120