2016年、大統領選のさなかに、有力放送局FOXニュースから解雇されたグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、同局のCEOロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクハラの罪で告発した。この件に、売れっ子キャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)と、キャスターの座を狙う若手のケイラ(マーゴット・ロビー)は激しく動揺する。
秘密とうそと野望と嫉妬が入り乱れるテレビ局を舞台にした映画には、『ネットワーク』(76)『ブロードキャスト・ニュース』(87)などがあり、いかにもハリウッド好みの題材なのだが、この映画は実際にあったスキャンダルを基に描いている。その点、脚本のチャールズ・ランドルフが『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15)同様、雑多な人物が登場する実話を、フィクションや架空の人物(ケイラ)も交えて、巧みに整理してみせたと言えるだろう。
また、まだ事件の記憶が生々しく、ほとんどの登場人物たちも健在な中で、こうした映画を作ってしまうことを、ハリウッドの底力の証という言い方もできるが、この映画が製作された背景に、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ騒動の影響があることは明らかだ。だから多少ヒステリックなものを感じるのは否めない。
さて、この映画は、『ウィンストン・チャーチル~』でアカデミー賞を受賞した辻一弘の特殊メークの力を借りて、セロンやキッドマン、そしてリスゴーが実在の人物に成り切っている。ただ、今年のアカデミー賞の候補者は、このセロンをはじめ、『ジョーカー』のホアキン・フェニックス、『ジュディ 虹のかなたに』のレニー・ゼルウィガー、『アイリッシュマン』のアル・パチーノとジョー・ペシは、メーキャップやCGでかなり顔を変えている。これは演技とは別のものだという気もするのだが…。