田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『K-19』と原潜映画

2023-09-16 10:39:44 | 映画いろいろ

『K-19』(02)(2005.5.22.日曜洋画劇場)

 テレビの「日曜洋画劇場」でハリソン・フォード製作・主演の『K-19』を見る。艦長と副艦長との対立劇という点では、古くは(これは潜水艦映画ではないが)『ケイン号の叛乱』(54)、最近では『クリムゾン・タイド』(95)などがあり新味はない。潜水艦映画としても『海の牙』(47)『眼下の敵』(57)『U・ボート』(81)といった新旧の傑作には到底かなわない。

 さて、ではこの映画の見どころはというと、実話に基づいたソ連の原潜の原子炉事故処理にあたる乗組員たちの悲惨な闘いの様子なのだが、主役のフォードや副艦長役のリーアム・ニーソンだけがぴんぴんしているという“いかにもハリウッド”的な処理をされては甚だ緊張感に欠ける。

 まあもともと、英語を話し、全くロシア人に見えない俳優たちが、ソ連の実話を演じるという設定自体が変なのだが…。強いて言えば、女流監督キャスリン・ビグローが男だらけの映画を撮ったことは称えたいと思う。



『原子力潜水艦浮上せず』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/343e71ae5a53d686ffb9cd01e1510e4f

『レッド・オクトーバーを追え!』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d5eb5819e196e3322230e09b112cb417

『クリムゾン・タイド』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/24d5ef60a39cbe5c39be93dec01c742c

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『沈黙の艦隊』

2023-09-16 10:30:17 | 新作映画を見てみた

『沈黙の艦隊』(2023.9.15.東宝試写室)

 日本近海で、海上自衛隊の潜水艦がアメリカの原子力潜水艦に衝突して沈没する事故が発生。乗員76名が死亡したとの報道に衝撃が走るが、実は乗員は全員が生存しており、衝突事故は日米が極秘裏に建造した日本初の高性能原子力潜水艦「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だった。

 だが、艦長の海江田四郎(大沢たかお)はシーバットに核ミサイルを積み、アメリカの指揮下を離れて深海へ姿を消す。海江田をテロリストと認定し撃沈を図るアメリカ第七艦隊と、アメリカより先に捕獲するべくシーバットを追う海自のディーゼル艦「たつなみ」。艦長の深町洋(玉木宏)は、海江田に対して複雑な感情を抱いていた。

 1988~96年に漫画週刊誌『モーニング』に連載された、かわぐちかいじの同名漫画を、大沢がプロデューサーも兼ねて実写映画化。

 かつてアニメ化はされたが、ストーリーやテーマのスケールの大きさから実写映画化は難しいとされた題材が、CGや特撮の発達によって遂に映画化された。これは一種のポリティカルフィクションだが、肝心の潜水艦の描写がお粗末なら話にならない。その点、この映画の特撮には目を見張るものがあった。また、『ハケンアニメ!』(22)の吉野耕平監督が、前作とは180度違う大作を見事にものにしていたのには驚いた。

 惜しむらくはアメリカ側のキャストが弱すぎる点。スターとまでは言わないが、せめて達者な脇役クラスでも使ってくれたら、印象も随分変わったと思う。

 また、原作発表からかなりの年月がたち、現代にはそぐわないと思ったのか、原作の男性キャラクターを女性にしたり、原作にはない女性キャラクターを創作しているが、かえって不自然な印象を受けた。なぜ男たちのドラマではいけないのか。要らぬ忖度という気がした。

 ところで、これはあくまで序章で、当然続編ができるような終わり方だったが、果たして…。


『大河への道』『ハケンアニメ!』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cb5db6a39cbcf026b3a483eebe94df06

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『親のお金は誰のもの 法定相続人』

2023-09-16 08:30:42 | 新作映画を見てみた

『親のお金は誰のもの 法定相続人』(2023.8.19.オンライン試写)

 三重県伊勢志摩で真珠の養殖を営む大亀家の母・満代(石野真子)が亡くなった。財産管理の弁護士で成年後見人である城島龍之介(三浦翔平)が大亀家にやってくるが、父・仙太郎(三浦友和)が持つといわれる時価6億円の真珠が家族たちの自由にならないことが分かり、大騒動が巻き起こる。

 そんな中、帰京した三女の遥海(比嘉愛未)は、母を死に追いやったのは真珠の養殖を手伝わせた父が原因であると恨みを募らせる。だが、そんな父に認知症の疑いが…。

 時価6億円の値打ちがある真珠をめぐって起こった、ある家族の相続問題を成年後見制度に絡めて描く。松岡依都美、山崎静代、小手伸也、浅利陽介、田中要次らが脇を固める。監督は『天外者』(20)の田中光敏。

 伊勢志摩の地元密着型映画の趣きがある。シリアスとコメディのバランスがよくないのが残念。三浦友和と石野真子が、老いた両親を演じるところに時代の流れを感じる。比嘉愛未は『吟ずる者たち』(21)に続いて地方発信映画への出演となった。最近はこうした映画が増えてきている。


『あしやのきゅうしょく』『吟ずる者たち』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/538b2ca0b346811f67c2ef16784c9491

『天外者』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b57cbe692513663659d32f770fe671d3

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『アンダーカレント』

2023-09-16 07:39:00 | 新作映画を見てみた

『アンダーカレント』(2023.8.28.オンライン試写)

 かなえ(真木よう子)は家業の銭湯を継ぎ、夫の悟(永山瑛太)と共に幸せな日々を送っていた。ところがある日、悟が突然失踪してしまう。かなえは途方に暮れながらも、一時休業していた銭湯の営業をどうにか再開させる。

 数日後、銭湯組合の紹介で、堀(井浦新)と名乗る謎の男が現れ、住み込みで働くことに。かなえは友人に紹介されたうさんくさい探偵の山崎(リリー・フランキー)と共に悟の行方を捜しながら、堀との奇妙な共同生活を送るようになる。

 フランスを中心に海外でも人気のある豊田徹也の同名長編コミック「アンダーカレント」を、今泉力哉監督が実写映画化したヒューマンドラマ。

 劇中に「みんな本当のことより、心地いいうその方が好き」というセリフもあるが、なるほど、悟の失踪の謎、かなえや堀が抱える屈折の真相を明かしながら、うそとまことの境界を描いた一種の心理ミステリーとして見ることもできる。

 そして、高倉健が演じそうなストイックな役を演じた井浦、うさんくさいが実は…という探偵が似合うリリー、何を考えているのか分からない瑛太といった具合に、主人公のかなえをめぐる三者三様の男たちを演じた役者の演技が見どころの一つ。

 また、探偵がかなえと会う際に指定する場所(喫茶店、遊園地、カラオケ店、海辺のカフェ)の描写も、絵として面白い。今回も今泉監督らしく、かなえを取り巻く群像劇として見ることもできる。


『窓辺にて』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b325436e2c23d20ba12eda2e2e713be0

『かそけきサンカヨウ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/459cef21d2696b6f66bba51e8528c379

『あの頃。』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b1f0abc70d0b73e23f9490b024c0bbbd

『アイネクライネナハトムジーク』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e23802c5befabef19251fdcdb5a12fb1

2010「第4回田辺・弁慶映画祭」『たまの映画』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f65fde8b607b8a85229362cc977171fd

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