昭和30年代後半から、弱小プロの成人指定映画が量産される。ピンク映画である。世の中のひんしゅくを買いながらも、熱気あふれる現場からは山本晋也、若松孝二、高橋伴明、和泉聖治などの名監督も生まれた。だが、今やその作品の多くが失われてしまった。忘れ去られた映画人や作品を追った傑作ルポ。
主な登場人物は、芦原しのぶ、山際永三、本木荘二郎、関多加志、山本晋也、香取環、若松孝二、佐々木元、新高恵子、港雄一、木俣堯喬、和泉聖治、武智鉄二、中村幻児、高橋伴明…。
浪人生だった1979年。予備校近くのエビス地球座や新宿昭和館地下などで、友人と一緒に、半ばやけくそな気分でピンク映画を見まくった時期があった。自分にとってのピンク映画体験はほぼこの一時期に集約される。
ただ、一般映画は見たら必ずメモを取っていたのに、ピンク映画や成人映画については途中で取るのをやめた。羞恥心や後ろめたさもあり、どこかでさげすんでいたのだろう。今となってはタイトルも定かでないこれらの映画をもっと大事にすべきだったと後悔している。
ところで、ピンク映画とAVとの違いは何だろう。いまさらピンク映画を必要以上に持ち上げる気もないが、それは作り手たちがちゃんと"映画"を撮っていたことに加えて、フィルムとデジタル(ビデオ)の違いなのかとも思う。つまりピンク映画への思いはフィルムへのノスタルジーとつながるところがあるのだ。
本書は、そんな諸々のことを思い出させてくれた。著者のピンク映画への愛があふれた好書だ。
メモに残っていた一部。今ならタイトルだけで上映禁止だろう。
『暴行女刑務所』(78・新東宝)監督・高橋伴明 出演・丘尚美、日野繭子、中野リエ
『谷ナオミ 縛る!』(77・新東宝)監督・渡辺護 出演・谷ナオミ、鶴岡八郎、下元史朗
『鞭と緊縛』(79・新東宝)監督・高橋伴明 出演・丘尚美、日野繭子、宮田諭
『縛り責め』(79・東活)監督・小林悟 出演・高木マヤ、早川洋子、山崎かおり
『残酷 女子大生私刑』(79・東映セントラル)監督・東元薫 出演・青木奈美、青野梨魔、笹木ルミ
『女子学生 変態』(79・東活)監督・小林悟 出演・黒沢薫、千葉久美子、真木忍
『女高生 昂奮』(79・大蔵映画)監督・小川和久 出演・三条まゆみ、中野リエ、沢木ミミ
『女高生 快感』(79・新東宝)監督・中村幻児 出演・深沢ゆみ、杉佳代子、鶴岡孝史
『痴漢透明人間』(77・新東宝)監督・関孝二 出演・杉佳代子、市村譲、しば早苗
『快楽痴漢バス』(77・ミリオン)監督・早坂絋 出演・北川玲子、杉佳代子
『痴漢快速電車』(78・新東宝)監督・稲尾実 出演・東祐里子、沢木ミミ、浜恵子
『痴漢横丁交番前』(78・日活)監督・代々木忠 出演・ちなみらら、青山涼子