『赤い砂塵』(59)
以前、幾つかブックレットを書いたディスクロードの「復刻シネマライブラリー」の中の一本。
http://discload.co.jp/works/new.html
南北戦争時代のカンザス。州刑務所を脱獄したカム・ブリーカー(フェス・パーカー)は、昔住んでいた農場にたどり着く。だが、妻は亡くなり、フランスから来た未亡人のジャンヌ(ニコール・モーリー)が家を買い取っていた。
その後、北軍の本部へ連行されたブリーカーは、長官のクレイトン(ハーバート・ラドリー)から、無法者の一団「ジェイホーカーズ」の首領ルーク・ダーシー(ジェフ・チャンドラー)を捕える手助けをすれば自由の身にするという取引を持ちかけられ、ダーシーの根城に潜入するが…。
独立国を作り、拡大させることをもくろむダーシーは、自ら騒ぎを起こし、それを静めることで町民に恩を売って手なずける。いわばマッチポンプのような男だが、カリスマ性があって、間諜として手下となったブリーカーが彼に心酔し、ミイラ取りがミイラになるという図がなかなか面白い。
また、ブリーカーとダーシー、手下のロードン(ヘンリー・シルバ)との奇妙な関係は、同性愛的な愛憎をにおわせるところもある。
監督・製作はメルビン・フランクとノーマン・パナマ。『ダニー・ケイの黒いキツネ』(55)や「珍道中」シリーズなど、喜劇映画を得意としたコンビなので、この映画は彼らにとっては異色作といってもいいだろう。わがリアルタイムの監督作では『ウィークエンド・ラブ』(73)というしゃれた映画があった。
撮影は『シェーン』(53)のロイヤル・グリッグス、音楽は『大いなる西部』(58)のジェローム・モロス、衣装はご存じイディス・ヘッドと一流ぞろい。
主演のパーカーは、ジェームズ・スチュワートやグレゴリー・ペックをルーズにしたような感じだが、ディズニードラマの『デイビー・クロケット』や『ダニエル・ブーン』で活躍後、ワインメーカーに転向したという。
チャンドラーは『折れた矢』(50)で演じたシャイアン族の族長コチーズが当たり役。独特の威厳とカリスマ性を持ち、この映画でも一人だけスーツを着こなしていた。落馬事故がもとで早世したのが残念だ。
フランス出身のモーリーはチャールトン・ヘストン主演の『インカ王国の秘宝』(54)でも見かけたが、なかなか色っぽくていい。
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