『ゼイリブ』(88)(1990.3.25.日曜洋画劇場)
あのサングラスは、一体どうやって作ったのか
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ff361898817df555ba9d7f72a9d16e8a
淀川長治先生の日曜洋画劇場での解説を採録。しゃべり言葉を文章にすると変になるが仕方ない。先生へのインタビューのテープ起こしの苦労を思い出した。
はい、皆さん今晩は。今日の映画は『ゼイリブ』。ゼイリブって何でしょう。「彼ら、彼女らは生きてここにいる」というんですね。さあ、何でしょうねえ。
これは有名な小説の映画化です。けれども、ジョン・カーペンターというこの監督は、これをすごくしましたねえ。小説では、この彼ら、彼女らが正体を見せるところは活字になっています。けれど、この映画はこの正体が分かるんですねえ。その正体が分かった時のメーキャップ、怖くてすごいですねえ。
この映画は、監督も出演者も立派ですけど、この映画はメーキャップ、この彼ら、彼女らの本物の顔がぞーっとしますよ。で、これはジョン・カーペンターという、この監督の奇作です。『ザ・フォッグ』、霧、これがまた怖かった。海の奥から霧がずーっと沸いてきて、霧の中に亡霊がいっぱいいるんですねえ。その映画もありました。
『ハロウィン』いうのもありました。まだまだ『遊星からの物体X』もありました。まだまだ怖いのありますけど、このカーペンターの感覚は、この『ゼイリブ』に見事にあふれています。
主役はロディ・パイパーといいまして、この人は有名なレスラーですねえ。だからこの映画では労働者になって、労働者の塊の、集まっているところに流れ込んできてから、始まるんですけど、この男が格闘するところの、その格闘のすごいこと、すごいこと。また格闘、また格闘。けど、その格闘を見ていると、びっくりするほど、肉体的なすごさ。実はこの人は有名なレスラーですねえ。だから、そのレスラー、ロディ・パイパーファンに、そのレスラーのタッチを見せてるんですねえ。
それからこの映画、怖い映画のくせに音楽がきれいですねえ。ショッカー的な音楽もありますねえ。しかもこの音楽も、この監督が当たっているんですねえ。この監督が、原作も脚色もやって、それから監督して、音楽も当たってるんですねえ。
どうしてかいいますと、この監督のお父さんが、ニューヨークの有名な音楽学校の教授なんですねえ。だから、シンフォニーの指揮もしてるんですねえ。だから、この監督はお父さんの教育で音楽は見事なんですねえ。
というわけでこの映画は、あらゆる意味で注目の作品で、1988(いっせんきゅうひゃくはちじゅうはち)年度の、この監督の出世作、注目作、成功作と申していいでしょう。あるいは、この映画、ご覧になった後で、あなたは自分のお隣に誰か、彼ら、彼女らがいるかもしれないいう恐怖をきっとお持ちになるでしょう。はい、後でまた会いましょうねえ。
はい、いかがでしたか。この映画の監督、若い頃から、少年時代から映画が好きで、とうとう大学を出て、すぐ短編で、『ブロンコ・ビリーの復活』という短編を自分で製作したんですねえ。さあ、それが何と短編のアカデミー賞取ったんですねえ。それからこの監督は、注目受けました。
それから、この映画ご覧になってお分かりでしょうけど、眼鏡を掛けて相手を見たら、相手の正体が分かる、相手の心の内まで分かる。もしもこういうことが本当にできたら、どんなに面白いだろういうことが、若い頃は皆の心にあったと思うんです。
例えば、あの人が大好きだ、あの人が好きだ好きだ思ってるけど、相手の人は一体私を好きでいてくれるだろうか分からない。そうした時に、こういう眼鏡があったら、相手の心の内が分かる。そうしたら、どんなに安心だろう。そしてまた諦める。そういうふうな眼鏡があったらどんなに楽しいだろういうことが、思われると思います若い頃。
それをこの映画はちゃんと利用して、そういう眼鏡で、人間を征服して地球を取ろうとしている、その人たちの姿を眼鏡で見せる。これいかにもフロイド的だし、モダンだし、この映画の面白い着想ですねえ。
はい、もう時間きました。それでは次週の作品、ご紹介いたしましょう。はい、このように続々と注目の作品が登場しますよ。どうかご期待くださいね。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。
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