
歳暮残りの解体セールが終わると店内はバレンタインデーに向かって舞台代わりする。商品の甘い香りはしないが、その装いが店内を華やかのに感じさせる。すでに包装コーナーには列が出来ている。買い求める楽しさが並ぶ人の顔に表れている。みんないい顔だ。
それに比べ、ひと足早くやってくる節分のコーナーは地味な舞台装置でよる人が少ない。鬼を追い払う節分の季節、日本伝来の行事も変化している。赤鬼の面をもらった。黒紙を背景にして目を生かすと、なかなかいい面になる。この赤鬼が泣いた。
それは小学4年の学芸会での「泣いた赤鬼」。青鬼は、村人と仲良くしたい親友の赤鬼のため、悪役となって村で暴れる。赤鬼は村人の前で青鬼をを押さえつけ、またがり、殴り、退散させ、村人と友達になれた。しばらくして親友の青鬼を思い出し訪ねた赤鬼「村人といつまでも仲良く」と書き残し遠くへ旅立った青鬼を知り、我がままで親友を失ったことを知り、赤鬼は泣く。
この劇で私は青鬼役をもらった。劇の中で妙に記憶しているセリフがある。赤鬼が青鬼にまたがり、殴りながら小声で「大丈夫か、痛くないか」と何度もささやく。赤鬼のすまないと思う本心がそこにあったのだろう。でも、しばらくはその気持ちを忘れ楽しい村人との日々を過ごす。
学校でのいじめ問題が大きな社会問題となっている。このお話は道徳教育の教材になっているという。学校での指導内容を知るよしもないが、友を思う、友を助け友に助けられる、そんなヒントがあるのだろうか。
下校する小学生が何人も「こんにちは」と大きな声で挨拶をくれる。大きな声で返事を返す。そこにわがままな姿を感じる事はなかった。