我が家から自転車が消えた。ものごころついたころには父の通勤用が1台いつも玄関で存在を示したていた。2台目は私の高校入学にあわせ通学用にと職場の払い下げ自転車を買ってくれた。通学は徒歩で通し使わなかったが、就職して自転車通勤に使っていた。途中から原付バイクに変えた。父も職場の影響をうけホンダカブ族となり自転車が消えた。
再登場の3台目、結婚してから購入した婦人用スタイルで20数年近く使った。4台目も婦人用、両方とも丈夫な自転車、パンクの覚えもなく20年くらい使ったと思う。定期的に掃除し必要な個所に注油し大事に使った。事情あってここ数年は手入れのみで使うことはなかったしこれからもない、ということで廃車にした。手続きは大型ごみとして回収を依頼するだけで済む。申し込みの最後に「利用可能な部品は使わせてもらえますか」という問いに「喜んで了承」と返事をした。
回収日の前、最後の掃除をしてタイヤに空気を補充、チェーンに注油しスタンドを立てたまペダルをこぐ。久しぶりに回る後輪は静かな回転音を発しながら軽快に回る。ペダルを反対方向に踏むとシャーというチェーンと歯車の協和音もいい感じだ。ひょっとして再登場かと自転車を喜ばせたのかもしれなかったが、回収票を貼り分れとした。
回収後、手入れされれば再びどこかで自転車の役目を授かるかもしれない、いやそうなって欲しいと思いながら回収日の朝、指定された場所に置く。見届けようと注意していたが目をそらした10分の間に回収されていた。「回収票があればお留守でも持ち帰ります」という電話の声を思い出す。見送れば未練が残ったかも。