そのほかにも目を引く収蔵品がある。児童生徒の作文や詩集、学校の沿革史、いつつ玉のソロバンや楽器、地図など歴代の教育に関する資料が揃っている。懐かしい計算尺、電卓の出現までは欠かせなかった計算の用具、その検定試験のため頑張ったことを思い出させた。
かまど、羽釜(はがま)、つり鍋、行火(あんか)、番傘、蓑など、昭和の中頃までどこの家庭にもあった生活用品なども多く展示してある。居合わせた小学校低学年の男の子二人。行火の説明「土で作った箱型の中に炭火を入れてふとんの中をあたためる」を読んで「さっぱり分からん」といいながら、隣の湯たんぽの「ふとんの中をあたためる」説明を読んで「これは家にもある」と喜んでいた。
行火で布団の中をあたためる、実物を見ても、使ったことのある者でないと実際の理解は難しいだろう。風呂沸かしの後の燠を、家族分の行火に入れていた祖父を思い出した。子どもたちがこうした古い家庭用品を見る中で、新しい発見やアイディアを出してくれたら、この資料館の先人や道具たちは喜ぶだろう。
学校教育の発祥の地といえるこの資料館、来館者がどの位あるのだろうか。近所にあり「いつでも見れる」という気持ちがつい先に出て足が遠のいていた。地域史から学ぶ、というわずかな字数のエッセイを読んでいる。その中に、歴史の表に出ないところで改革を支えた無名の地方の士は多いとある。ここに並んでいる資料から知らない小さな史実を見つけ出せるかもしれない、と思うと興味は深まる。