発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

職場写真にまつわるエトセトラ

2013年08月20日 | 日記
 飲食店やコンビニなどのアルバイト店員が、食材や冷蔵庫の上に寝たりピザ生地を顔にのせたりした写真をネット投稿する事件が相次いでいる。
 生のピザ生地を顔にのせるなど、なんだかお肌に良さそうな感じがしないでもないが、他人の食べものを作る場所ではやめてほしい。
 店員が解雇されたり、店がフランチャイズ契約を解除されたり、といったニュースが流れたのちでも、まだ続いている。
 職と職場を軽んずる人々でないとあり得ない行為である。
 なぜ彼らは労働を貶めるようなことをするのか。

 考えてもみて。食材の上や冷蔵庫の中に寝たり、商品のソーセージをくわえたり、ピザ生地を顔にのせた写真を撮ることができる、ということは、かなりの時間、ちゃんとした管理者なしに、低賃金アルバイトだけでその職場は回っているということである。
 マネジャー不在で、ろくに従業員教育もしていない低賃金アルバイトだけで回ることがしばしばある職場。そりゃ経営者は儲かるだろう。だが、その仕事を好きではない、低賃金の、自分が尊重されているとは思っていない、いつクビを切られるかわからない(でも職種を問われなけれぱ次の仕事など結構すぐ見つかる)、それにまだ若くて家族を養っているわけでもなく親掛かりだったりするので、解雇されたところで差し迫って生活苦になるわけではない、という人々からのみ構成される職場であれば、あり得ないおふざけもやってみたくなるということで、実はそういう職域でそういう行為は蔓延していて、そのうちの0.3%くらいの、よりアホな連中がネット投稿した結果がこれである、ということではないかと発行人は考えるのである。
 地方にもよるが、健康な若者であれば、明日もしくは来週のバイトなどすぐ見つかる。貢献意欲などない、今の仕事が自分の将来に役に立つと思っていない、あるいはとてもそうは思えない者の集合が、組織を作ることができるのかという問題の答えはここにある。
 雇用者が労働者を尊重しなかったら、労働者は仕事を尊重しなくなる。顧客も商品も職場も軽んじるようになるということだ。
 流動化した低賃金雇用が、品質の低下をもたらすというひとつの例である。

 全日空のキャビンアテンダントが全員正社員化するというニュースがまさに今日流れた。低賃金でいつクビを切られるかわからない立場のキャビンアテンダントと、正社員として尊重され、それなりの福利厚生を受けているキャビンアテンダントとでは、緊急避難的な場に居合わせたとき、当然違う振る舞いをすると思う。それこそが航空産業の品質なのである。
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過激表現、残酷表現にまつわるエトセトラ

2013年08月17日 | 漫画など
 あの『はだしのゲン』を、松江市の教育委員会が「描写が過激」ということで小学校中学校の閉架図書としたらしい。くやしいのう、くやしいのう、ギギギ……と、ゲンが言っているかどうかはさだかではないが。
 
 この夏、広島呉山中に、リンチのあげく殺した友人の死体を遺棄した少女が、山中の死体を見て自首を決意した、というニュースがあったけど、その話で思い出したことがある。
 私の行っていた市立中学の図書室で、一番過激な本は、最も人気があった。それは『死体は語る』(上野正彦著)である。上野氏は当時監察医。今も時々テレビに出て来られる。
 その本は、臨床が苦手で監察医となった医師が検屍や死体解剖にまつわる話を2ページ1話くらいで著わしたもので、ベストセラーになったものである。白黒で小さい死体写真がいくつも載った本だった。これも閉架行きかしら。
 海岸近くに住んでいた私は、1度だけ偶然に自死者を見たことがある。たぶんまだ5~6歳のころ。季節はまだ寒い春先。時間は日暮れ近く。引き揚がったばかりで警察官が来る前、筵の上に寝かされていた。その女性は、眠っているだけのように見えた。だが、それが僥倖であったことを後に中学時代に図書室で知ることになるのである。まったく、トラウマ背負わず、悪い夢にもならない体験だったのは、ラッキーなことだったと今も思う。
 死んだらどうなる。殺されたら(殺したら)どうなる。倫理や哲学や道徳ではなく生物、化学的に。縊死が自殺か他殺かは、昔の法医学でもすぐにわかる。偽装殺人などバレバレである。『死体は語る』は、犯罪抑止にも役立ったのではないかと。
 それにしても夏場に山中に死体を放置したらどうなるのかわかってなかったのかあの広島のバカ共は? 
 ついでに書くが、すぐ死ななかったらどうなる、生き残ったらどうなる、という知識があれば、なかなか自死したいとは思わないものだと思う。
 中学のとき、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』を読んでの私の感想は、ウェルテル君の恋や悩みや絶望などどうでもよくて「ピストル自殺って、頭を撃っても亡くなるまでずいぶん時間がかかることもあるんだなあ」ということだった。服毒や有毒ガスなども、亡くなるまで苦しいに違いないし、もし生き残ることができても、腎臓、肝臓、脳などに重篤な障害を残す。
 お迎えが来るまで、少々辛いことがあっても、自分の生命をまっとうする。ほかの人の生命もまっとうさせる。それが大事だってことだ。
 死んだら具体的にどうなるか知らない、たぶん本など読んでいなさそーな(失礼かしら)少年少女だから、猛暑の中、山の中に死体を捨てたらどうなるかなんて想像もしなかったんだろうね。腐乱死体を見てはじめて自分たちのやったことがわかって、警察に行こうと思ったのだと。
 死んだらどうなる、から目をそらした清潔な社会は、こんな愚か者を生んだりするのだ。とりかえしのつかないことになるところまで想像が及ばない者が出て来るのだ。
 などと思っていたところに『はだしのゲン』にまつわるニュース。
 取扱いには注意を要するが、過激に見える表現、残酷に見える表現からだって、子どもはちゃんと学ぶ。
 過激な表現、残酷な表現も、その表現の扱い方まで見て、子どもに見せるかどうか決めてほしいと思う。すでに古典化している漫画を、今さら「描写が過激」ということで閉架にするなど、理解に苦しむ。が、却って関心を持って読まれるようになるかもね。
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八代亜紀のジャズ

2013年08月04日 | グルメ
◆団扇
 イムズ。地下から入ると、ロクシタンの店員さんが、新しいオーデコロンを、ボール紙に穴を空けた小さな団扇にスプレーして手渡してくれた。ミントに柑橘系を掛け合わせた夏向けの爽やかな香り。団扇というのは、ステキなアイデアだと思う。
 まてよ。扇子に香水というのは、昔はセットではなかったかと。実に懐古的な雰囲気である。

◆八代亜紀がジャズを歌うコンサート。イムズホール。
 バンドはクインテット。ピアノ、ギター、ドラム、ウッドベース、サックス。ビアニストは実はヴィブラフォン奏者で、サックス奏者は、フルートも演奏。突っ込み所のない一流の演奏をライヴで聴けるなんて、何て幸せ、と思う。そのうち4人は、去年秋に売り出された八代亜紀のジャズCD「夜のアルバム」のレコーディングに参加しているみたい。スピーカーは左右に二個置かれたきり。こうでなくては。大音響のコンサートは、絶対に耳を悪くするよ。
 そして、夕焼けのような赤いドレスで八代亜紀登場である。演歌の女王である。ゴーヂャスなロングドレスの歌手といえば、青江三奈か八代亜紀か。
 まずは、フライミートウザムーン。それからサマータイム。
 みんなが知ってる曲ばかり。ジャズなんて流行歌なのよ。と、八代亜紀御大。
上京して銀座でジャズを歌ってた。でも、先輩の持ち歌は歌えなかったのだと。
 クライミーアリヴァー。
 後半は、ミッドナイトブルーなのか黒いドレスが照明のせいで青く見えているのか。ともかくビーズかスパンコールでキラキラと夜空のように見えるドレスに着替えて。雨の慕情ジャズヴァージョンとか、五木の子守唄~いそしぎ、とか。
 ああ、なんだか大人っぽいな。すごく大人っぽい感じだなと。

◆私は佐川男子に萌えたりしない。
 佐川男子、つまり佐川急便の配達のお兄さんが、フィギュア化されて販売されてるらしい。なんだか人気なのね。でも、ほかのところでは知らないけど、午前中配達を指定して、午後1時より前に来た試しがないのである、うちにくる佐川は。急ぐ荷物なのであらかじめ電話で確認したときもそうだった。興味を持つ以前の問題である。
コメント (1)
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