発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

ポーの一族展 久留米市美術館 「萩尾望都にハズレなし」

2021年06月09日 | 物見遊山
◆美術館の通りにエドガー(「ポーの一族」の主人公)がドドーン
 建物の前には登場人物の皆様がドドーン。                                                                                                                                           萩尾望都「ポーの一族」を中心とした原画の展示だった。
◆死なない、年を取らない子供の話
 といえば、「ポーの一族」か森博嗣「スカイクロラ」(←アニメ映画の予告貼ってます。ひんやりした青空と音楽が素敵)か。
 ………その中年紳士は、30年前に引っ越していった初恋相手にそっくりの少女を見つけて話しかける。
「あなたのお母さまは、メリーベルとおっしゃるのでしょう?」
 少女は、メリーベルは自分で、生みの母親のことは知らないと答える。娘に同じ名前をつけたのだろうと思っていたところに「100も年上のような」冷たい目をした兄エドガーと彼らの養父母が30年前の姿のままで現れ、馬車に乗って去っていく。
    この「ポーの一族」シリーズ第1作「すきとおった銀の髪」は、雑誌に初出したのをリアルタイムで読んだ。
 カラー原稿の美麗さと言ったら!ことに「ゴールデンライラック」の扉絵のきれいなことに瞠目。
 特にコミック本を追っかけて読んでるわけではないけど、紹介されてた半分くらいは読んでる。絵も魅力的だけど、どれも、お話がすごい。古くならない。
「11人いる!」は、コミックはもちろん、アニメのVHSも繰り返し見た。
 原作が別の人の、ブラッドベリのシリーズや、光瀬龍原作などは今回、紹介や展示がなかった。
 でも、「マリーン」(今里孝子=萩尾望都のマネージャー=原作)くらいはあってもよかったかなと。孤独な少年の成長を見守る謎の少女は何者? 最後の4ページくらいで全ての謎が解け、行き場のない悲しい純愛の話だとはじめてわかるの。
 言えることは「萩尾望都にハズレなし」。
◆バラのソフトクリーム
 美術館のある石橋文化センターは、バラ園が有名だけど、真っ盛りは少し過ぎていて、今回は、パッキリと咲いたアジサイがとても素敵だった。
 売店で期間限定のバラのソフトクリームを買った。確かにバラの香り。写真を撮るためにバラのところまで行く。途中で落としたり転んだら大笑いだと思いながら撮影成功。
 ポーの一族は、人のエナジーあるいは生き血とバラのスープやお茶で生きる。バラの庭の中の美術館での展覧会にぴったりなのだ。

 



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夏はジャワ更紗♪

2021年06月05日 | 日記
◆ジャワ更紗 
 ジャワ更紗のシャツを修繕する。細く蝋で模様を描いて染められた、手のかかった生地で、そのまま処分するには忍びないのだ。地味めのコットンアロハにしか見えないだろうけど、気に入って着ている。大量生産でないものは、それなりに敬意を払いたい。アイロンと補修布と近い色の糸と刺繍枠を用意してチクチクコテコテと作業する。
 手作業でつくられたものであるので、手作業を付け加えてもそれほど目立たない(……と思う)。さて、この夏も着よう。
◆ユニクロが既成シャツを変えた
 大量生産といえば、昔は、安い既成のシャツは、ポケットの柄合わせをしていないものがざらにあったし、脇縫いは、ロックミシンで始末したままを縫い合わせてあって、高いシャツだけが折り伏せ縫いにしてあった。今では当たり前の4つ穴ボタンの×字止めボタン付けも、結構少なかった。これらはユニクロから廉価品にも普及したように思う。でもユニクロは、首回りと袖丈の組み合わせではなく、SMLと大まかに分けることでコストを抑えている。標準体型以外の方にフィット感が欲しいなら、そういうのは従前のシャツメーカーにお任せ、ということなのね、きっと。
 宇部にユニクロの本社があったころ、私は出入り業者の下っ端営業として働いていた。オフィスは会議室のようにぐるりと机が配置され、議長席にあたるところで柳井氏が執務していた。紙伝票の時代だったが、ユニクロ様は、ともかく正確だった。あとで照会の電話が必要なことは一度もなかった。毀誉褒貶はあるが、昔からきちんとしていた、さぼらない社長(みんなに見られてたらさぼれないよね)は、成長企業の共通点ではないのか。
◆コート地買って縫ったもの。
 「サザエさん」では、よくフネさんが裁縫箱を傍らに置いて何か繕い物をしている。今の日本の家庭で裁縫箱の普及率と稼働率はどのくらいだろうか。やはり学齢のお子様次第なのだろうか。カツオのゼッケンとか。普通の繕いものは、廃れてるんだろうか。それにつけても刺繍枠って便利。
 あ、私、断じて手作り派ではない。器用ではないし。せいぜいパンツの裾を上げるときにダブルにしてみるくらい。あとはカシミヤ混ヘリンボーン織のコート地が安く売られていたので、切れ端を毛糸でザクザクと刺して毛布を作った程度。まさにブランケットステッチというわけで。それって裁縫なのかと言われると全く自信がない。

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梅雨の晴れ間の博物館

2021年06月01日 | 物見遊山
◆博多駅。どうです、このSF感!アニメ感!
◆九州国立博物館「よみがえる正倉院宝物」展太宰府の池には花菖蒲。毎度おなじみ九州国立博物館。
 福岡県の各美術館博物館は、緊急事態宣言下とはいえ、ほとんどの特別展は予定通りに開催されるようだ。良い事である。
 明治以降、現在に至るまでの正倉院宝物のレプリカと、それを作るプロセス、現代の匠たちの紹介などの展示。琵琶などの楽器や箱に施された螺鈿や象嵌は、いかにも伝統工芸な個人が登場する。文書のレプリカは、コロタイプ印刷を採用している。プロセスはビデオで紹介。つくるのは鳥獣戯画のレプリカを売っているところだ。
 正倉院の建物の構造についても、CGを使った実にわかりやすいビデオ解説があった。新しい再現作品は、すごく精緻で美しくて、エネルギーがあった。
    今回も、実質的には入場制限なし。入口のカメラで熱を計り、連絡先を紙に書いたら、年間パスを持ってそのまま特別展の入り口に行けばよかった。
 常設展示に行き、油滴天目さんにご挨拶。掌に宇宙、って、さわれないけど。ここに来ると、薄暗い天井の高いだだっ広い展示室で、自分が 大海の中のプランクトンになったような気がいつもするんだ。ことに今回のように、人が少ないと。
 博物館を出たら4時を回っていて、ササっと天神様に参拝し、ササっと梅が枝餅買って博多へ向かうバスに乗る。

 行きのバスは12%、帰りのバスは20%くらいの埋まり方である。
 太宰府参道も、日曜としては人が少ない。インバウンドと修学旅行がない。どこも人が多くない。全く密でない。
 「こんな時代だから」「おうち時間」「新しい日常」この3つを売り文句に使う商品は、私は断じて買わない。「自分と大切な人の命を守るため、責任ある行動を」? そんなのは、富士樹海とかビルの屋上の手すりの内側で宣伝されたし。ほとんどの人は死ぬ気などないし家族や友人に殺意などもたない。媒体費用を無駄遣いすべきではない。そう、私はゴキゲンな生活を送りながら怒っている。


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