発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

2018年6月のそのほか

2018年06月30日 | 物見遊山

◆岸田劉生と椿貞雄展

 久留米市石橋文化センター。前回は、20172月で、冬だった。今回はバラがたくさん香ってた。花菖蒲も。美しく整備された庭園。木陰の所々に配置されたガーデンファニチュア。ともかく優雅な場所である。サンドイッチ入れたピクニックバスケットと紅茶の魔法瓶があるといいな。

 ともかく久留米市美術館の特別展。岸田劉生は教科書によく載っている。宿に泊まり、夜トイレなどに起きたとき、廊下に飾ってあったらいやな絵のアンケートをとったら、圧倒的に票を集めるのは麗子像だと思う。自分の実の娘を、楳図かずおの怪奇漫画、もちろん楳図かずおの方があとからになるけど、つまりグロテスクに怪奇に描くというのがもう。あの作風はデロリって言うんですって。総絞りの見るからに上等の着物を着て微笑む麗子ちゃん。油彩実物を初めて見たけどやっぱりこわいよ。椿貞雄の若い頃の自画像は「ザ・目力」というタイトルをつけたいくらい眼光鋭い。お二方とも洋画家なのだが、掛け軸、水墨画類の展示もある。そういえば時代がかぶる小杉未醒も守備範囲広かったよね。

◆丸星ラーメン

 国道3号線沿い、久留米市の宝満川と筑後川の間にあるのが、知ってる人は知ってる丸星ラーメンだっ。BGMは昭和歌謡。はやい、安い、うまいと書いてある。確かに早くておいしいよ。しかも一杯400円。ドロっとしたとんこつラーメンは、郷里宇部で親しんでいる。初めて博多ラーメンを食べたとき「さっぱりしたスープですね」と言って驚かれたものだが、博多は、とんこつスープといってもサラサラなことが多い。

◆元祖長浜屋

   博多らしいっていえば、元祖長浜屋である。メニューはラーメン、肉、替え玉、ビール、酒、焼酎のみだったような。フローリングはコンクリート。装飾らしいものは、お子様は危ないので店内で走らないでね的イラストのみ。丸くて大きなアルマイトのお茶入りヤカンがテーブルにどーん。ハードボイルドなインテリアである。こちらのスープは塩分が少ない。肉はいわゆるチャーシューではない。薄切りの豚肉なのだろうが汁気の少ない、佃煮状に煮てあるものである。この肉の塩気でラーメンを食べるって感じ。すっかり気分は高倉健、菅原文太、あるいは梶芽衣子あたり。年に1~2回、真夜中にしか行くことはありません。

     私はバリカタなどという注文は絶対しない。カタ麺など消化が悪いし、麺の茹で時間が短縮されるのみなので、店にメリットこそあれ、客にいいことなどない。デンプンはアルファ化されてこそだと思う。

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広島、呉。替え歌は加速して行く♪

2018年06月06日 | 物見遊山

広島  写真はクリックで拡大します

  別の日に、これもまた久々の広島。朝、本通商店街アーケードの中を、タクシーとパッカー車が疾走する(速いっ危ないっまさに疾走!!)という、福岡博多では決して見ることがない光景が展開されている。福岡のアーケード商店街はパッカー車が疾走するには狭過ぎるのと、ゴミ収集は深夜に行われるのでパッカー車を朝見ることはなかなかない。紙屋町から広島駅まで迷わずに歩く。脳内GPSは大丈夫のようである。足元には折り鶴のマンホール?踏みにくいぞこれは。カープ坊やもいる。復元されていた猿猴橋もはじめて見た。駅に近い路面電車の電停に猿猴橋町というのがあって、大正の終わりに美しく装飾された橋がつくられていた。装飾は原爆で被災したのではなく、それより前に金属回収令により取り払われたのだった。どこの町もインバウンド市場を狙ったドラッグストアが増えている。脳内地図更新。

◆呉 写真はクリックで拡大します

 これも久し振り。山陽本線海田市駅から南に分岐した呉線は海に沿って走る。牡蠣養殖のイカダとか、整備された海水浴場などが見え、そのうち江田島が見えてくる。海を見ているうちに呉駅に着く。ここのお土産は、鳳梨饅頭。なぜか台湾的なパイナップル菓子を昔から売ってる。とてもおいしいが、生産量が少ないのか、販路は限られているようである。なにしろ駅で売ってない。もみじ饅頭は宮島に行ったときに焼きたてを食べた店で買うことにしているし、海軍なんちゃらというお土産がたくさんあるが昔はなかったような気がするので買わない。駅から数分歩けば店だが、日曜でお休み。駅前デパートで売っていそうなものだが、そごうは今はやってない。閉店して5年くらい空き店舗のままだそうだ。

◆「この世界の片隅に」の舞台だったなあ、呉は。

 駅前で「長之木行き」のバスを見かける。『この世界の片隅に』の主人公が嫁ぐことになった北條家のある地名である。ヒロインのすずは昭和19年の嫁入りのとき、呉駅から木炭バスに乗るが、バスが坂道の途中までしか上がらず、晴着にモンペをつけたまま、両親と妹とともに降りて歩くのである。

 アニメ映画にもなり大ヒットした漫画『この世界の片隅に』は、こんどテレビドラマになるらしいが、このお話については、以前、こうの史代の原画展を見に行ったときに少し触れた。名前も知らなかった結婚相手の北條周作について、戦中男としては完璧に近いと私は書いた。妻のことは常に「さん」づけで尊重、運動神経が鈍い上に体が弱くて兵隊にはとられなかったという設定だが職業は軍属で、しかも物語中では風邪を一度ひくだけである。定職についていて戦争に行かない、つまり稼いで死なない若い男というのはあの時代貴重である。機銃掃射からすずを守るために側溝にすずを引っ張り込む鋭い動きには鈍さのみじんも感じさせない、というツッコミも入れたい。だって漫画だもん、といえばそれまでだけどね。

 ともかく戦争の最中にもひとは結婚していた。物資の乏しいなか、どのように祝われていたか、というところがなかなか興味深くもある。

◆替え歌は加速していく♪ 下の3つのリンクは、歌のついた動画で再生されます。♪

 呉駅の中には、こんなポスター。「呉市 GONNA  呉市」に続く、市の観光プロモーションビデオの続編「呉イン-呉イン」である。これに並ぶ他の町は、鹿児島市の鹿児島実業高校男子新体操部員が踊りまくる「西郷どんも知らない鹿児島」くらいのものであろう。

 で、広島駅に戻り、駅前の福屋デパートのデパ地下を見てたら、あった。鳳梨饅頭。これこれこれだよ。やっと買えた。これは学生時代の友人に呉出身の子がいて、帰省のたびに買ってきてくれてたんだ。

 

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