発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

2019年7月のそのほか 有朋自遠方来

2019年07月26日 | 日記
 月初めに11〜12%だった福岡市ダム貯水率も先週からの大雨で60%台後半に差し掛かり、夏渇水のおそれはなくなった。そういえば今年はプールバッグを持った小学生を見てなかったような。中旬までの水不足で一学期はプールがなかったのねたぶん。
 
◆ミュージカル、オリバーツイスト
 アルモニーサンクソレイユホール、昔は九州厚生年金ホールといった。小倉へ行く。
 ロンドン治安悪っ!!な時代が舞台のお話だけど、ファミリーミュージカルなので、元のお話と違って人が殺されたりしないから安心して鑑賞。

 今回は、悪役ビル・サイクス松原剛志に注目である。というより、ほとんどこの人の生歌が聞きたくてやってきた。ウルトラマンや戦隊ヒーローもののテーマ曲を数多く歌う歌手であり、2009年レ・ミゼラブルではアンジョルラスを演じ、近年では2015年と2017年、デスノートのミュージカルで、冒頭では主役の夜神月と掛け合いで歌う高校の先生、残りは松田刑事を演じている。ミュージカルの松田刑事はマンガと違って、ひたすら男前の若手刑事で、しかも妻子がいる設定。舞台では、お茶目をしている時間がないのだ。
 やっぱり歌うまいっ!! 台詞もよく通る。
 2.5次元ミュージカルと戦隊ものの人なので、どうなのかと思ったが、オタクっぽい人は見かけなかった。告知が地味だったので見逃していたのだと思う。ともかくシアワセ気分。

◆人生の味のするアールグレイ、あるいは島倉千代子気分
 40年ぶりに人に会うというのはどういうものだろう。私と会うときは、本屋を待ち合わせの場所にされて、ひとしきり本自慢が続くのを覚悟してね。
 場所を変えてお茶。自分たちのことや共通の知り合いの消息について話した。まだ20代のあるできごとについて話したとき言われた。
「それはすごく運が良かったんだと思うよ」 
 私もそう思う。過去の自分の選択を呪うようなことがひとつもないのは、たぶんとても運がいいということなのだ。
 誰に会わなかったとしても、今ここに私はいない。さまざまな出会いとあらゆる選択の結果としてここにいる。別の選択の向こうに何があったかなど考えてもしかたがない。これまでの選択と出会いが、私を生き延びさせている唯一の道だったのかもしれない。それにしてもあなたが元気で笑っててよかった。アールグレイは人生の味。
 思い出しもしなかった記憶が引っ張り出され頭を窓ガラスにぶつけて血まみれになるようなこともなく、無事帰宅。20年前ならわからないが、今だったらどんなに痛い黒歴史も「ふふん、これもまた人生の味わいってもんよ」で片づけることができると思う、自信はないが。
 
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で、私の祖先は幕末維新の時期、一体何をしていたのだろう

2019年07月20日 | 本について
◆幕末から明治六年までの、筑前宗像郡のある百姓の目から見た世の中


 新刊『百姓組頭・井上勝次』発売中。写真は福間駅前の伊原書店。

 幕末は、時代小説や歴史小説や時代劇でよく取り上げられるテーマである。坂本龍馬、中岡慎太郎、高杉晋作、桂小五郎、西郷隆盛、大久保利通、勝海舟、近藤勇、土方歳三……ちょっと思いつくだけでもたくさん名前が出てくる。いろいろなお話にヒーローとして何度も登場し、さまざまな方向から活躍に光が当てられている。そういうものを読んだり見たりしていて、ふと、こう思ったことはないだろうか。

 で、私の祖先は幕末維新の時期、一体何をしていたのだろう。

 江戸時代のご先祖は、両親あるいは祖父母あるいは曾祖父母の生家周辺で、主に一次産業に従事していた、という人が一番多いのではないか。この本では宗像郡の人々がどのように暮らしていたのかが丁寧に描かれているが普通に生計を立てることの困難さに目をみはる。天候によっては働き者であっても命を落とすのだが、ともかく勤勉でないと生きられない。厳しい時代の中を懸命に生きのびた人々の末裔であることは誇るに足ることである。     
 
 明治維新は、近郷一の知識人をして「これから何が起こるのかわからん」と言わしめる事態だった。歴史に翻弄される人々は、村の人々に限らない。戊辰戦争にかりだされる武士団が話に登場する。彼らとて、何が起こっているのかよくわかっていない。

◆人生の選択、世の中を選択
 江戸時代の人々の人生と、現代との一番の違いは、個人的選択の範囲である。彼らの生き方は、生まれたときから定められている。縛りが多い。主人公が農閑期の副業として宿場間の運送業(馬子)を開始するにあたっての手続きの煩雑さに驚く。所属の村庄屋を伴って、宿場担当の庄屋を訪問しないといけなかった。

 明治維新は、実は自分で生き方を選べる時代のはじまりだったのである。あのころ、四民平等とはそういうことだ、と、教えてくれる人はいなかったし、いたとして、200年以上続いた価値観の呪縛から解放されるのには時間がかかったはずだ。だから、悪いことばかり起きていると多くの人が思ったのは想像にかたくない。

 今は、一揆を起こさずとも、投票で世の中の方向性を決めることができる。すくなくともデモよりも投票の方がはるかに効力が大きい。なのに投票率は低い。ここに何度も書いてきたが、何度でも書く。昭和のはじめまで貧乏人には投票権はなかった。だから軽んじられていた。戦争が終わるまで女性には投票権はなかった。だから軽んじられていた。投票しない層は軽んじられる。それをよしとするのか?

 ところで、明治になる前に、普通選挙を提言していた人物が日本にいた。あまり知られていないが赤松小三郎。この先進性はどうだろう。暗殺されなければ、憲政も普通選挙ももっと早かったかも知れない。

 

                                        

 

 
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オペラと山笠と、すくらっぷあんどびるど

2019年07月06日 | 日記
◆デパートは残った
 西鉄電車で久留米に行く。オペラだし。喜劇っぽいお話だし。
 電車に乗る前に天神でランチを食べる。ビブレビルの地下にある、揚げ物定食がメインのお店で、いつも満員なのだが、ここも天神コアも再開発でもうじき閉店となる。福ビルはすでに終了、イムズの終了の話はすでにここで触れたことがある。鉄筋コンクリートの建物の寿命が短すぎはしないかと思う。渡辺通をはさんだ向かいのバルコ(旧岩田屋本館)は、長生きしている。福岡大空襲の焼け残り、正確に言えば、米軍が戦後の接収のために残した堅牢な建物である。空襲を受けた各都市で「デパートは残った」話が多いのはそういう事情である。

◆さらば開かずの踏切
 西鉄特急。大橋以南、都府楼前駅(ひと駅先は西鉄二日市)の手前まで、高架化工事が進んでいる。西鉄福岡(天神)駅から大橋まではすでに高架だが、西鉄高架路線の歴史はそれほど古くない。平成になってからである。西鉄天神〜二日市間は過密路線で、それと城南線と呼ばれる道(博多から六本松を経由して西新へ向かう道)が交わる薬院駅前は、踏切があった頃は渋滞しまくっていた。井上陽水の「あかずの踏切」は、薬院駅前説が有力である。今回の高架工事が終われば、近郊のあかずの踏切は激減する。

◆ドン・パスクワーレ
 久留米のザ・グランドホール。久留米井筒屋が撤退したあとに建てられた。
 シルクシャンタンや総レース、久留米マダムたちが華やかに装っている。久留米から八女あたりのマダムの特色としては、上等の(おそらくは久留米)絣をワンピースやチュニックに仕立てて着ている人が結構いることだ。地元愛であるなあ。
 ホールは、まだ新しくて、木の匂いがする。声もよく届く。前半はドニゼッティの楽しい劇。後半はアリアにどっぷり浸かる。歌うのはスロバキア国立歌劇場から派遣されたソリストたちだ。ライブで聞いてみたかった曲もあってシアワセである。
 終わりに白ブラウス黒スカートの地元マダムたちの集団が入場して、何が始まるかと思ったら世界最古のCMソング、フニクリ・フニクラである。ソリストたちが朗々とソロ部分を、マダムたちはコーラス。いやあ、楽しいなあ。
 帰るときにロビーで歌手たちが見送ってくれたときにびっくりした。
ステージからではあまりわからなかったが、近くに寄ってみると女性を含めた全員が180〜200センチくらいありそうなのだ。どの観客よりも頭ひとつからひとつ半は身長が高い。スラブ民族の特徴なのだろうけど。

 歩いて西鉄久留米駅に戻る。六ツ門と東町の商店街は土曜夜市の準備をしていて、ヨーヨー釣りのビニールプールや、かき氷の器械などが運び込まれていた。岩田屋の食堂街はなんと16時にオーダーストップとなる。新館は去年の暮れに営業終了している。ダウンサイジングが進む。天神一極化が進行しているということなのかと。バスセンターの向かいにはドンキホーテが。これも時代の流れなのか。
 西鉄特急で天神に戻ると、さっそく選挙演説がはじまっていた。

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2019年6月のこと

2019年07月03日 | 日記
◆いつもの場所が全国ニュース
 6月4日福岡市早良区の暴走死亡事故現場、早良口交差点は、よく通る場所なので驚いた。私が車で図書館や博物館に行く途中にある。六本松交差点、西新交差点を避けて、町の南側から西側を外まわりするコースで、最短距離ではないが、時間が最短となる。

 8日9日はG20(福岡のは財務大臣、中央銀行総裁会議)なので、バスセンターのゴミ箱も撤去されていた。当日は公共交通機関で市内に入るように、市と警察のポスターが貼ってあった。
 福岡県警のポスターは、れいによってカッコいい。求人ポスターなど、何の映画の宣伝?といつも感心させられているが、今回も颯爽とした白バイ警官の写真でできてた。でもチラシはといえば、目玉ぐるぐる困惑表情の地球の絵だ。イヤイヤ感が感じられて微笑ましい。
 メイン会場のヒルトンは、福岡ドームの隣で、自動車しかアクセスはない。最も近い鉄道駅は、地下鉄唐人町駅で、そこから歩いて15分はかかる。野球観戦やイベントのときは周辺が必ず渋滞するので、イラチの方は球場へは地下鉄駅から歩いた方が精神衛生上良いかも知れない。途中ではホークスファミリーの絵のついたマンホール蓋を楽しむことができる。
 7日に中央区役所に行くと、業者さんではなく職員さんとおぼしき人々が花壇を掘り返し、植え替えをしていた。怪しげなものが仕掛けられてないかのチェックも兼ねていたと思われる。近くに西鉄グランドホテルがあり、そこもまた要人の宿泊場所のひとつであろうから、おそらくは厳戒重点エリアということで。

◆スーパー缶詰売場のデューク東郷さん
 ゴルゴ13ってこういうときに登場するのよねぇ、と思いながらスーパーに行くと、昔からあるキングオスカーのオイルサーディン缶詰にデューク東郷さんの絵がプリントされ「ゴルゴサーディン」と書かれて売られている。そういえば「ベルサイユのばら」も、菓子や化粧品のバッケージにプリントされたりしているが、おととしは、こういうのもあった。短期間だったし、今はメーカーや池田理代子サイトからも消えているが、リンク踏んでごく一部だけを見ても腹筋を崩壊させるには十分である。

◆梅雨入りが遅かった
 江川ダムの水が全然足りてない。九州南部は大雨らしいが、こちらはそうでもない。給水制限の心配は消えていない。明治6年、予定通りに梅雨がやってきていたら、筑前竹槍一揆はおそらく起こらなかった。井上勝次は、農作業をしながら釣り竿作りの副業に成功し、子どもたちを新しくできた学校にやって、後妻のトシと楽しく明治を過ごしていたかも知れない。『百姓組頭 井上勝次』プリンティングなう。


 
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