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三方一両損

2022-02-02 12:27:47 | 観察
冬季オリンピックの「外交的ボイコット」に関連して日本は「三方一両損」で行くべきとの記事を読んで、
よく意味が分からなかった。

記事では「三方良し」ではなく「三方一両損」の戦略で・・・とあったが、よくわからないと言うのは
「三方一両損」がどういう戦略を意味しているのか具体的に見当がつかない。

そもそも落語(記事では「講談」となっていたが)の「三方一両損」は「三方良し」となっている。

登場人物は、三両入りの財布を落とした「吉五郎」とそれを拾った「金太郎」
両名のもめ事をいわゆる大岡裁きで解決した「大岡越前」。
三方とはこの三者のこと。

三両もの大金の入った財布を拾った金太郎。
持ち主の吉五郎に返そうとしたが、吉五郎は無くしたものとあきらめたとして受け取らない。
金太郎は何が何でも返す、吉五郎は頑として受け取らない。
揉めに揉め、奉行所の裁定を仰ぐことに。

奉行の大岡越前は双方の言い分を聞き、出した裁きはこうだった。
大岡越前は自分の金を一両加えて全部で四両とし、金太郎、吉五郎にそれぞれ二両渡した。
そしてこう言った。
吉五郎は三両の持ち金が二両になったので一両損。
金太郎は拾った三両が手に入らず二両になったので一両損。
自分(大岡越前)は一両出したので一両損。
これで「三方一両損」だ。

言葉の上ではみんな損だが、当事者同士は納得して大岡越前のみが損している。
自分の評判は上がり、うまくまとめたと言う意味では「三方良し」と言えなくもない。

これを外交的ボイコットに当てはめるとどうなる?
三方(三者)とは誰? 一両損に相当する行為とは? 何がどういう「損」に当たるのか?
よくわからないと言うのはそういうこと。

ところで、私の知っている落語にはまだ続きがある。

この話を聞いた別の二人組。
自分たちも三両を四両に増やそうとたくらみ、同じように裁定を求めて訴え出る。

ところが大岡越前は、財布を拾った男と落としたとする男に一両ずつ渡し、残りの一両を自分の物に。
そしてこう言った。
財布を落とした本人は、金を諦めていたのに一両戻ってきたから一両得。
財布を拾った人は、金を返してたら何もないのに一両もらえたから一両得。
自分(大岡越前)は、一両手に入れたので一両得。
これで「三方一両得」だ。

善良な市民は得をし、悪だくみは失敗すると言う教訓。
しかも、大岡越前はプラマイゼロになっている。

悪だくみが失敗する点は「時そば」と同じ。
しかし、時そばは悪だくみをまねて失敗しており、元々の「ずる」は成功しているが、
三方一両損では、善良な人が得する点が違う。

いずれにしてもどういうことを「三方一両損」に例えているのかは、やっぱりよくわからない。

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