腕時計修理専門店・トゥールビヨン店主のブログです
腕時計の修理の詳細や腕時計のトリビア、店主の個人的な趣味の話などを気の向くままに書いております。
 



このブログで度々登場する単語“マニュファクチュール”について。

マニュファクチュールとは...
工場制手工業のことで、部品製造から最終組み立てまでを完全に一貫して行うメーカーのことです。
ただ、スイス時計産業はムーブメントや文字盤、ケース、ガラス、など専門メーカーとの分業制が伝統なので、ヒゲゼンマイなどの専門メーカーでなければ製造困難なパーツもあるため、マニュファクチュールの意味も広義化し、現在では自社内でムーブメントを開発、製造するメーカーのことを指す場合が多いのが現実。

だから、ムーブメントはもちろん、裏ブタのネジ1本まで自社製品ってメーカーは非常に少ないのです。
完全自社生産のメーカーで有名なのはジラール・ペルゴ(写真の時計はTYPE375)、その他オーデマ・ピゲ、ランゲ・アンド・ゾーネ、ジャガー・ルクルト、パテック・フィリップ、バセロン・コンスタンチン、ピアジェ、ロジェ・デュブイ、そして我が日本のクレドール。あと数社。
大概のメーカーはヒゲゼンマイの製造が自分のとこで作れないため、他社のヒゲゼンマイを使用しています。そういう会社はマニュファクチュールではありません。

ムーブメントだけを製造して他社に供給している会社もあります。エボーシュメーカーと言います。代表的なのはETA社。あと、ヴィーナス、バルジュー、レマニア、ミネルバなんかもクロノグラフで有名。ETAだけで舶来ブランド時計の80~90%位占めるのではないでしょうか。ファッション関係のブランドやアパレル関係のブランドが出している腕時計、中身はほとんどETA社のムーブメントが入っています。シャネル、グッチ、C・ディオール、エルメス、ティファニーなどなど。ETAが悪いと言っている訳ではありません。でも、それらのムーブメントを見て「ほぇ~!」と感嘆するほどではありません。良いムーブメントは美しいものです。芸術です。アートです。小宇宙です。ビッグバンです。段々言ってることがわからなくなってきましたが...

マニュファクチュールのメーカーって、ある種“頑固一徹”なところがあるんでしょうね。「よその部品なんか信用できるか!」って感じでしょうか。
今このご時勢、下請け、孫請けなんて当然の社会システム。今後もこういう石頭(失礼)なメーカーが存在し続けて欲しいものですし、存在し続けるでしょう。

今日から9月なのでブログの背景を夏休みの思い出風に変えてみました。

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