とみぞうのお気楽ブログ

クルマ、日本、北海道を愛する生粋の道産子50歳♂です。カバー画像は、PC版は増毛駅、スマホ版は733系電車の大谷ver.

E36とE46とE90(Motor Fan illustratedより)(再掲)

2010-05-18 23:43:52 | クルマ
E36
最初の3シリーズ、E30系の設計は前作2002からの直接進化と言って良かった。その後を襲ったE36系はパッケージングも機構要素も大きく踏み出し、現代的FRスポーツサルーンとしての定型を確立した。4人の乗員をきっちりおさめる居住空間、重量配分やヨー慣性モーメントなどの動質の基本を形づくる最適化するエンジン搭載位置、シャシーレイアウト。サスペンションデザインも重要な一部分として構築されている。そこをさらに読み解くとE30までの走りの資質を生み出していた細部の重要なポイント、脚周りの基本的な力学などを受け継ぎつつ、大きく進化させたことが見えてくる。

E46
フロント(マクファーソンストラット)
一見常識的なマクファーソンストラット。しかし、細部に重要なポイントがいくつかある。まずロワーアーム。いわゆるΓ型だが、前方ピボットがタイヤ中心とほぼ一致して横力を受けた時にトーが動きにくいのに加えて、ボールジョイントを使っている。これはE30系から継承。ゴムのたわみがなく正確に動くことで、舵を保持したり動かす時の感触の滑らかさ、しっかり感をもたらしている。後方ピボットはがっしりした円筒形ブッシュ。ステアリングギヤボックスはエンジン前の低い位置に置き、タイロッドの高さと長さをロワーアームに合わせ、トー干渉を最小にしている。
リヤ(ダブルウイッシュボーン)
前方に伸びるトレーリングアームとハブキャリアを剛結・一体化。ダブルウイッシュボーンの基本を構成する上下ラテラルアーム1本づつ、というシンプルな構成。アーム配置の平面形はセミトレーリングアームを想起させる。ラテラルリンク長をたっぷり取ってあるから、ジオメトリー変化は緩やか。車体側ピボットの間隔が広いことを含めて、車輪保持剛性も十分。またトレーリングアーム前端は空間利用のために外に向かいつつ上に曲がって車体骨格側面下部の中に入り込み、強固な箱状構造の中にピボットされる。こうしたデザインが、フロントの正確さと合わせて「素直に直進し、きれいに曲がる」動質を支えている。

E90 トレンド踏襲の設計は幅広い要求への対応策か
フロント(マクファーソンストラット)
1シリーズから導入された新しいBMWスモールクラス用サスペンション。フロントの基本形は定型のストラットだが、ロワーアームを前後分割して転舵中心(下側)を仮想点とした(上側はストラット頂部回転軸)。BMWとしては大型車種で成功してきた原理だが、疑問点は斜め前方に伸びた前側リンクの車体側ピボットに、大きなゴムブッシュを使い、リンクに加わる力で簡単にたわむ構成にしたこと。転舵に対するタイヤ反力、タイヤの前後力がや横力などでこのブッシュがたわむと、それが舵の動き・感触の中に入り込むし、仮想転舵中心も動いたり、2点のピボットの回転運動が滑らかになりにくくなったりする可能性が高い。
実際E90系の舵の感触、保持性はこれまでのコンパクトBMWの身上だった正確さ、滑らかさが薄まり、振動や衝撃を隠すバネ感が強くなっている。今日の上級ブランド商品として、とがった感触を消す事が要求される、ということだろう。
リヤ(マルチリンク)
リヤもこれまでのワイドスパン、素直なジオメトリという設計から一転、短いリンクを組み合わせ、仮想転舵軸を持つマルチリンク形態を採用した。それもアッパーアーム前後分割、前後方向の位置決めと力を受けるリンクも短く斜めに、というメルセデスベンツが20年以上前にW201から導入したマルチリンクの基本形ほぼそのままである。
両社がフロント縦置きパワーパッケージ+RWDのサルーンを、移動空間としては同じ方向に進化させつつ、しかし走りを生み出すエンジニアリングについては別々の最適解を出し、それぞれの同室を実現していたところに意味があったはずだが。ここまで変えてしまうと、走りの資質も継承は難しく、サスペンションに応じた動質にならざるを得ない。それが今日の上級ブランドのトレンドなのかもしれないが。BMWの車両開発とシャシー設計、走行試験の担当者が新世代にガラリと入れ替わった可能性もある。

(抜粋終わり)


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