後期型フォードフォーカス
ご無沙汰しております。転居、転勤先の仕事と環境。いずれにもまだ慣れたとは言いがたい状況です。残業はゼロに近づいていますが、今までだと気を使わずに済んでいたことに気を使っていますので、思った以上に疲れが溜まりやすいです。昼休みの仮眠が何よりの楽しみとなっています(笑)。今日もこれを書いたらさっさと寝るつもり。
ちなみにうちのフィエスタ。実家に預けっぱなしで、2週間ほど全く運転してません。週末に乗りに行こうかな。
さて、フォードフォーカスの後期型が出ましたね。私は2度試乗しましたが、端的な結論は次の通りです。
1 鳥肌の立つような芸術的で快感を伴うコーナリング、まさしく欧州フォードだ!と唸らされたいのなら前期型
2 自動車の人生の大半は直進で、旋回時間はほんのわずか。それより質の高い商品を買いたいと思いたいのなら後期型
私が選ぶのならもちろん1ですが、商品としての正義なら2になるでしょう。2であってももちろんライバルのFF車(ゴルフやベンツA)よりずっと運転は楽しく、欧州フォードの味は残っているのですが、前期型の飛び抜けた旋回の楽しさは薄れていることは疑いのない事実だと思います。
では、9月に後期型フォーカスに試乗した時に、私が某自動車SNSサイトにアップした試乗記は以下の通りです。
--------------
まずは前期型がどういうものだったかを思い出してみます。カーブを曲がる時のフィーリングは素晴らしいものでした。つまり、、、
ハンドルを切ってフロントにスリップアングルがつき、
内側が浮き足立つことなく外側がぐっと沈み込む。
ロールスピードは僅かながら早めで、
ロール量はゴルフに比べると少し多く
(ここが結構絶妙な味付け。しなやかと感じる)
ここから一瞬間を置いてリヤに荷重がかかりだす。
空から見て車の自転軸が後輪からクルマの中心に近づく
有り体に言えば出来のよいFRっぽい曲がり方となる
(参考)
前期型のインプレ1
前期型のインプレ2
、、、だったのですが、後期型はそこまで芸術的なコーナリングとは感じなかったです。
ロール量は少なめで、ゴルフほどじゃないけれどどっちかといえば路面を「いなす」というより「押さえ込む」感じ。日本のお客さんの多くが「いいね」と感じるフィーリングだと思います。クルマの自転軸は後輪寄り、つまり一般的なFF車(例えばゴルフ)の動きに近づいている。個人的な思いとしてフォードにはそれをやってほしくなかったかな。でも、新規のお客さんを取り込むためということなら、今回のフォーカスは良いのかもしれないです。
それ以外、全ての面において質感は向上。
例えば、内装からのミシミシ音の減少とプラスチックの質感の向上、タイヤノイズその他騒音が室内に入ってくる音量が全般的に小さくなった、つまり静かになったと感じます。
これらの積み重ねが全般的に「質感が上がったなぁ」と感じさせるのでしょう。
エンジンは、VW系のように低回転だけトルクがドカンと出てトップエンドで尻すぼみになるようなことはなく、同じフォードのNAエンジンのように回した分だけトルクが返されます。どっちが好きかと聞かれれば、VWのターボエンジンよりフォードのエコブーストと答えます。
ATのトルコンは、出足に適度にスリップさせてブーストの立ち上がりの遅れをうまいこと隠しています。速度を上げていくと、変速の切れはそれほどでもないし吹け上がりもそれほど鋭いわけじゃないのですが、加速Gとエンジン音の高まりはお互い比例して上がっていくので違和感は無いです。音はアルファ156のV6エンジンのように官能的ではないですが、踏み込めばかなり速いです。ダウンサイジングターボはDCTではなく、出来のよいトルコンATの方がいいのかも。BMWのZF製8HPが好例です。
ステアリングホイルのリムの形状が変わり、太くなりました。足回りが前期型と違ってロールを抑え気味にしているのと、アシスト量が小さめ(重ステ気味)なので、これは良いと思いました。例えが少々違うかもしれませんが、クラッチペダルが重いのにシフトレバーが異様に軽い車を運転するとすごく運転しにくい。クルマの動きと操作系の重いor軽いは、全て調和している必要があると思いますのでその点はOKでした。
ということで、記憶が薄れないうちに一気に書いてみました。なにせ今週末まで気を抜けない日々が続くので、そうするとどうだったか忘れてしまいそうでしたし。
2015年の今、日本市場で売るCセグ輸入車としての商品力は向上したと言っていいのでしょう。今回のフォーカスは、どなたが運転しても(私もそう思いました)総合的には「質感が上がった」というのが最も印象に残るはずです。トルコンだからDCTほど不具合を心配する必要はないですし。でも、あの鳥肌が立つようなコーナリング。あれはもう新車では買うことができなくなったのかなぁ、と思ってます。
ともかく近日中に再試乗する予定です。気づいた点があればここで報告したいと思います。
--------------------
先先週の日曜日に再度試乗したのですが、並のFF車よりずっと旋回が楽しいものの、前期型と比べて快感度は薄れていることは疑いのない事実であることを再認識しました。商品としては正義かもしれないけれど、芸術的なコーナリングはすでに失われていたんです。
さて、今月15日に発売になったモーターファンイラストレイティッド。福野礼一郎さんがマイナー後のフォーカスに試乗した記事が載っています。おおむね、私と感じたことと差がないように思いました。一部を抜粋しますと、
(以下抜粋)
フォードのエンジニアは操縦性を犠牲にせずに乗りごごちを改善したと言ってるらしいが、残念ながらそうではなかった。
(中略)
旧型はある意味、それを踏まえた上でハンドリングを徹底的に追及した確信犯的「ワインディング天国」仕様だった。今回のサス改良で乗りごごちは画期的に改善されたが、この連載で乗ったクルマの中でも428iやレンジスポーツと並ぶくらい印象的だったあの夢のようなコーナリングのフィーリングと姿勢は、ひっそりとフォーカスの中から消えてしまっていた。
(中略)
一般的に言えば間違いなく新型のセッティングのほうが歓迎されるだろう。しかしあのゴールドのフォーカスに乗ってもう一回伊豆スカを走ってみたかったというのも萬福コンビの本音である。
(中略)
ゴルフとベンツと1シリーズしか売れないんじゃ、まるで日本人というのは中身なんかどうでもいいみたいだ。そこまでAクラスは良くないし、そこまでフォーカスは悪くない。
(抜粋終わり)
前期型のフォーカスでは、DCTの不具合がそこそこあること(これは結構でかい欠点)、乗りごごちの荒さ、内装の質感の低さといったネガがあります。後期型のいまいちな点は上記のとおりに加え、前窓に熱線が入っていないことです(寒冷地ではイタい)。
これらを踏まえた上で、前期型か後期型のいずれを選択したのであれば、それはどっちであっても正解です。長所も欠点も可能な限り把握した上での選択であれば、決断がどうあれ全て正解。フォーカスの前期か後期を選ぶにしても他社のゴルフなどを選ぶにしても、十分に試乗をしたうえで結論を出してみてください。失敗しない車選びの王道だと思います。
ご無沙汰しております。転居、転勤先の仕事と環境。いずれにもまだ慣れたとは言いがたい状況です。残業はゼロに近づいていますが、今までだと気を使わずに済んでいたことに気を使っていますので、思った以上に疲れが溜まりやすいです。昼休みの仮眠が何よりの楽しみとなっています(笑)。今日もこれを書いたらさっさと寝るつもり。
ちなみにうちのフィエスタ。実家に預けっぱなしで、2週間ほど全く運転してません。週末に乗りに行こうかな。
さて、フォードフォーカスの後期型が出ましたね。私は2度試乗しましたが、端的な結論は次の通りです。
1 鳥肌の立つような芸術的で快感を伴うコーナリング、まさしく欧州フォードだ!と唸らされたいのなら前期型
2 自動車の人生の大半は直進で、旋回時間はほんのわずか。それより質の高い商品を買いたいと思いたいのなら後期型
私が選ぶのならもちろん1ですが、商品としての正義なら2になるでしょう。2であってももちろんライバルのFF車(ゴルフやベンツA)よりずっと運転は楽しく、欧州フォードの味は残っているのですが、前期型の飛び抜けた旋回の楽しさは薄れていることは疑いのない事実だと思います。
では、9月に後期型フォーカスに試乗した時に、私が某自動車SNSサイトにアップした試乗記は以下の通りです。
--------------
まずは前期型がどういうものだったかを思い出してみます。カーブを曲がる時のフィーリングは素晴らしいものでした。つまり、、、
ハンドルを切ってフロントにスリップアングルがつき、
内側が浮き足立つことなく外側がぐっと沈み込む。
ロールスピードは僅かながら早めで、
ロール量はゴルフに比べると少し多く
(ここが結構絶妙な味付け。しなやかと感じる)
ここから一瞬間を置いてリヤに荷重がかかりだす。
空から見て車の自転軸が後輪からクルマの中心に近づく
有り体に言えば出来のよいFRっぽい曲がり方となる
(参考)
前期型のインプレ1
前期型のインプレ2
、、、だったのですが、後期型はそこまで芸術的なコーナリングとは感じなかったです。
ロール量は少なめで、ゴルフほどじゃないけれどどっちかといえば路面を「いなす」というより「押さえ込む」感じ。日本のお客さんの多くが「いいね」と感じるフィーリングだと思います。クルマの自転軸は後輪寄り、つまり一般的なFF車(例えばゴルフ)の動きに近づいている。個人的な思いとしてフォードにはそれをやってほしくなかったかな。でも、新規のお客さんを取り込むためということなら、今回のフォーカスは良いのかもしれないです。
それ以外、全ての面において質感は向上。
例えば、内装からのミシミシ音の減少とプラスチックの質感の向上、タイヤノイズその他騒音が室内に入ってくる音量が全般的に小さくなった、つまり静かになったと感じます。
これらの積み重ねが全般的に「質感が上がったなぁ」と感じさせるのでしょう。
エンジンは、VW系のように低回転だけトルクがドカンと出てトップエンドで尻すぼみになるようなことはなく、同じフォードのNAエンジンのように回した分だけトルクが返されます。どっちが好きかと聞かれれば、VWのターボエンジンよりフォードのエコブーストと答えます。
ATのトルコンは、出足に適度にスリップさせてブーストの立ち上がりの遅れをうまいこと隠しています。速度を上げていくと、変速の切れはそれほどでもないし吹け上がりもそれほど鋭いわけじゃないのですが、加速Gとエンジン音の高まりはお互い比例して上がっていくので違和感は無いです。音はアルファ156のV6エンジンのように官能的ではないですが、踏み込めばかなり速いです。ダウンサイジングターボはDCTではなく、出来のよいトルコンATの方がいいのかも。BMWのZF製8HPが好例です。
ステアリングホイルのリムの形状が変わり、太くなりました。足回りが前期型と違ってロールを抑え気味にしているのと、アシスト量が小さめ(重ステ気味)なので、これは良いと思いました。例えが少々違うかもしれませんが、クラッチペダルが重いのにシフトレバーが異様に軽い車を運転するとすごく運転しにくい。クルマの動きと操作系の重いor軽いは、全て調和している必要があると思いますのでその点はOKでした。
ということで、記憶が薄れないうちに一気に書いてみました。なにせ今週末まで気を抜けない日々が続くので、そうするとどうだったか忘れてしまいそうでしたし。
2015年の今、日本市場で売るCセグ輸入車としての商品力は向上したと言っていいのでしょう。今回のフォーカスは、どなたが運転しても(私もそう思いました)総合的には「質感が上がった」というのが最も印象に残るはずです。トルコンだからDCTほど不具合を心配する必要はないですし。でも、あの鳥肌が立つようなコーナリング。あれはもう新車では買うことができなくなったのかなぁ、と思ってます。
ともかく近日中に再試乗する予定です。気づいた点があればここで報告したいと思います。
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先先週の日曜日に再度試乗したのですが、並のFF車よりずっと旋回が楽しいものの、前期型と比べて快感度は薄れていることは疑いのない事実であることを再認識しました。商品としては正義かもしれないけれど、芸術的なコーナリングはすでに失われていたんです。
さて、今月15日に発売になったモーターファンイラストレイティッド。福野礼一郎さんがマイナー後のフォーカスに試乗した記事が載っています。おおむね、私と感じたことと差がないように思いました。一部を抜粋しますと、
(以下抜粋)
フォードのエンジニアは操縦性を犠牲にせずに乗りごごちを改善したと言ってるらしいが、残念ながらそうではなかった。
(中略)
旧型はある意味、それを踏まえた上でハンドリングを徹底的に追及した確信犯的「ワインディング天国」仕様だった。今回のサス改良で乗りごごちは画期的に改善されたが、この連載で乗ったクルマの中でも428iやレンジスポーツと並ぶくらい印象的だったあの夢のようなコーナリングのフィーリングと姿勢は、ひっそりとフォーカスの中から消えてしまっていた。
(中略)
一般的に言えば間違いなく新型のセッティングのほうが歓迎されるだろう。しかしあのゴールドのフォーカスに乗ってもう一回伊豆スカを走ってみたかったというのも萬福コンビの本音である。
(中略)
ゴルフとベンツと1シリーズしか売れないんじゃ、まるで日本人というのは中身なんかどうでもいいみたいだ。そこまでAクラスは良くないし、そこまでフォーカスは悪くない。
(抜粋終わり)
前期型のフォーカスでは、DCTの不具合がそこそこあること(これは結構でかい欠点)、乗りごごちの荒さ、内装の質感の低さといったネガがあります。後期型のいまいちな点は上記のとおりに加え、前窓に熱線が入っていないことです(寒冷地ではイタい)。
これらを踏まえた上で、前期型か後期型のいずれを選択したのであれば、それはどっちであっても正解です。長所も欠点も可能な限り把握した上での選択であれば、決断がどうあれ全て正解。フォーカスの前期か後期を選ぶにしても他社のゴルフなどを選ぶにしても、十分に試乗をしたうえで結論を出してみてください。失敗しない車選びの王道だと思います。