ヒゲの相棒

昨年の国立病院入院の時でした。
カカァが、　「　このババッチーの、もう要らないよね？　」　と。
ババッチーとは、うす汚れててキタナイの意の、更に気分が入っている言葉です。
この際、ヒゲが毎日使っているひび割れた湯呑を捨てて、新しい物にしようと云う訳ですネ。
「　イヤ、ちゃんと病院にも連れて行こうヨ！　」　と、恐る恐るヒゲ。

　　　　　　　　　　　　

９０年代の田園　～～～
「　マスター、お土産ネ　 」　と、カウンター置いて、Ｏ村さんは光琳の個室に。
女性連れでの珍しい来店です。
注文のお酒は、　“　中吟　”　でとの事。
中吟とは、田園独特の業務用語で、大吟醸酒と区別して使っていました。

８０年代、まだ日本酒の黎明期。　酒の表示が、きちんと統一されてない時代。
ボトルのラベルには、大吟醸表示があっても、首を傾げる酒も多くみられました。
只、それなりに美味く飲める酒はあったものです。
或る日、ヒゲは、スタッフに伝えました。
「　この瓶には大吟醸と書いてあるけど、これは間違え。
　　今日から、コレと、コレ、コレは　“　中吟　”　と呼ぶ。　」

まあ、大吟醸までは行って無いから、中吟醸と云う、いささか安直なネーミングだが。
今で云う、純米吟醸酒がこの類に多かったですネ。
前のブログで書いた様に、現在は、ドドドーッと流行の純米吟醸酒・生に流れ込んでますが、
そんなモン、田園の客は、　“　普通に　”　８０年代から飲んでるゼと。
純米吟醸酒・生などと舌を噛むよな用語で無く、「　チューギン、中吟　」　と呼びながら。

やがて、ヒゲが呼ばれます。
女性とふたりきりでは、間が持たないのでしょう。　（笑）
ヒゲ　「　わあっ、今日はありがとうございます。　良い青磁の湯呑ですネ。　」
Ｏ村　「　今日が、●●先生の所の窯開きだったッタイ。
　　　　　コレが、いっぱつ気に入って、マスターの焼酎のお湯割り用にでもテ思うて。
　　　　　●●先生も、最近は腕を上げらして、将来の人間国宝て言われよラス。　ハハハ（＾◇＾）　」

こうしてヒゲの所にやって来た湯呑。
倒れた後からは、焼酎のお湯割りを飲む機会が増えて、ずっと付き合ってくれている相棒。
カカァから見ると、子供が拾ってきた野良猫みたいに、ババッチーのでしょうか？
あわよく、ゴミ箱行きを免れた相棒は、病院にも伴い、ｉＰａｄと共にテーブルに並んだのでございました。

　《　カカァの言い分　》
　　　　頂いた経緯も、しっかり判っていますし、愛着もあるのでしょが　・・・
　　　　長年使っているうちに、貫入に染み込んだものが、汚れに見えます。
　　　　漂白しても綺麗になりませんし、見るに耐え難くて。

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