見識～菊と田園客

最近では、ごく当たり前の光景。
居酒屋だけでなく、料理屋まで普及（？）しているシーン。
赤いマグロの刺身に、緑色の大葉、そこに黄色の菊の花。
信号機を彷彿とさせる豊かな配色ですネ？

或る日の田園、仕入れから戻ったヒゲ。
今日は、カウンターで常連客の特別献立も用意しないといけないから、バタバタして居ます。
やがて夕刻、何時ものコースの刺身が部屋に運ばれているのを見て、「　シマッタ！　」　と
気付きましたが、後の祭りです … 。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
その日ヒゲは、料理用の菊の花箱がたまたま安かったので、購入したのです。
それ迄は、高価な為、ほとんど使った事がありませんでした。（笑）
次の日、何か和え物でもするつもりでした。
所が、自分自身が仕事に追われてしまい、調理場に連絡をし忘れたのでした。
「　菊の花は、そのまま　・　使わず　・　とって置く様に　」　と。
しかし、連絡の無い調理場では、ためらいもなくソレを使う事に。
勿論、調理場には何の落ち度もありません。
其れどころか、そんな些細な事は、いちいち言われ無くてもするのが、気の利いた料理人と　・・・　。

そして、待ってましたとばかり、菊の花はそのまま（！）刺身の上に載せられ、
座敷の中に消えたのでした。
やがて、しばらくすると、ママちゃんが呼ばれます。
客は、くだんの黄色い菊の花を端で摘まみ上げて、つぶやきます。
「　こんなン、このまま食べれるのかい？　全く田園らしくないね！　」　
じくじくと、いびる様に。
冷え～　恐れ入りました。　「　ご指摘、ごもっとも。　」
イントロの刺身のシーン。
極彩色の料理で、他店なら喝采モノの仕事と称されのに。
同じ事を田園がしたら、客からは大ひんしゅくモノ。
板場は、当然良かれとばかりに、菊の花を飾ったのですが、コレが大間違い？
うるさい田園客には、むしって茹でたりの仕事が必要だったのです。

　　　　　　　　

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