FPと文学・エッセイ 〜是れ日々なり〜

ライフプラン、資産設計のほか、文学・社会・芸術・文化など気まぐれに日々、FPがつづるエッセイ。

孫への相続ミステリー? 

2011-04-09 03:18:03 | シニア&ライフプラン・資産設計

2月の新聞で、「おや?」と思う記事がありました。 

遺言で母親が長男Aに全財産を相続させようとしたところ、長男Aが親より先に死亡してしまい、その後まもなく母親自身も亡くなりました(父親はその前に死亡しています)。こういう場合、民法では、長男Aの子B(母親からみて孫)が長男に代わって相続できることになっています。最高裁で出された判決では、これがどこまで認められるかというものでした。

 

今回のケースでは、母親が「自分の全財産を長男Aに相続させる」と遺言に残しました。母親には、長男Aのほかに長女Cがいます。子が2人いるにもかかわらず、長男にだけ「全財産」を継がせようとしたのです。その遺言自体、法的には問題ありません。ただ相続人どうしで争いは起きそうです(実際起きました)・・・。

 

問題になったのは母親より先に子が死んでしまったためです。それにより「全財産」が孫にいくかどうかということで最高裁まで争われたのです。相続人である子Aが相続が開始する前に死亡した場合は、亡くなった子Aを跳び越して孫に相続権が移ります。これが「代襲相続」といわれるものです。遺言には「全財産を長男へ」と遺してあります。長男Aが生きていれば問題は起こりえませんでした。全財産がそのまま長男Aに相続されるからです(もっとも遺留分といって、長女Cには法定相続分の2分の1、このケースでは1/2の半分で1/4を請求する権利があります)。

 

長男Aが死亡した以上、民法の趣旨からすれば長男Aに代わって孫Bが「全財産」を相続でき、一審・東京地裁でもそれが支持されました。訴えたのは、もちろん、長女Cです。そもそも、自分も法定相続人なのだから、長男Aが生きているうちから母親の全財産の半分は相続できると思っていたはずです。それが、全財産は長男Aにいくとされ、その長男Aが死亡してからは孫Bに遺産が全部行ってしまう・・・。

 

先だっての最高裁の判決では、孫Cへの特段の明記(つまり、「Aが先に死んだらBに遺産を全部継がせる」という内容)がない限り、母親の遺言は長男Aの死亡によって孫Bまで効力が及ばないとしたのです。

 

どういうことかと言うと、孫Bへの代襲相続は当然認められるが、遺言どおりに「全財産」が相続されるのではない、ということです。遺言は長男Aだけに宛てた遺志として認められるものの、「長男が先に死亡した場合は、孫に全財産を相続させる」と明記されていたわけではないからです。

 

 

最終的には、遺産は遺された長女Cと孫Bの間で遺産分割協議により決められます。長女は「子」として、孫は「代襲相続人」として、それぞれ遺産の分割割合を決めていくことになります。

 

問題は代襲相続にあるのではなく、「全財産」という意味です。長男Aが存命中も、死亡後も、長女Cは相続人としての存在が無視されています。被相続人(母親)と相続人(長男A,長女C)、相続人どうし(長男Aと長女C)の愛情関係と遺産に対する思い。それは、当事者以外には窺い知ることができません。

 



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