重度の障害を持つ詩人の藤枝利教さんの絵本を出したいという夢・・・私はこの夢を実現するためのプロジェクトに参加させていただいております。その完成朗読会&原画展が2017年10月14日につくば市の「つくば市民ギャラリー」で行われました。
「3粒のブドウ家族」は藤枝さんが幼少期にある施設で受けた虐待をもとに作られたお話で、障害で手と口の自由がきかない藤枝さんがヘッドギアにつけられた棒で一文字一文字打って、12年もかけて完成させた作品です。
この作品を絵本にしたいという藤枝さんの夢が、プロジェクトを立ち上げた橋本美佳さんをはじめ、クラウドファンディングで寄付を頂いたみなさま、20枚以上の挿絵を描かれた野歌つぐみさん、藤枝さん作詞の主題歌「アオシのように」を作曲・編曲された順いづみさん、CDの録音に携わった朗読メンバー、多くの人たちが力を合わせてCD付き絵本という形で現実のものとなったのです。この中で私は、イノシシの声の朗読を担当させていただきました。
朗読会は先月9日に東京の新富町に続いて2回目、この朗読会でプロジェクトとしてはひと区切りとなります。
会場入りしたのが朝の9時、何もないがらーんとしたギャラリーに原画を飾り、藤枝さんの詩を書いたパネルを掲げ、椅子を並べて、音響装置とキーボードの準備、会場らしくなっていくごとにテンションが上がってきます。3方を池に囲まれた会場の窓際のパネルを開くと水辺の景色が背後に広がって素敵な会場に仕上がりました。流れを大まかにつかむ感じでリハーサルを進めていると、ちらほらと来場者の姿がみられます。
前回は都内での開催で、狭い会場ながら30人ほどの来場者で満席でしたが、今回は東京から少し離れたつくば市なので、どれくらいの人が入るか不安がありましたが、開演時間を迎えるころには並べてある椅子では足りず、別の場所から椅子を追加する盛況ぶりです。会場にも置いてありましたが、当日朝の情報紙「常陽リビング」に掲載された公演の記事を見て来て下さった方が多かったそうで、タウン紙の影響の大きさにびっくりです!
開演の時間を迎え、開会の挨拶、絵を描かれた野歌さんの挨拶に続いて藤枝さんの挨拶、これを代読させていただくのが私。挨拶文は文章にして15行ほどですが、藤枝さんがこれを打つのに長い長い時間を掛けていることを思いながら、ひとつひとつの言葉を大事に読ませていただきました。そして、締めの部分は藤枝さんにトーキングエイドで読んでもらいました。
いよいよ絵本「3粒のぶどう家族」の朗読。CDと同様に5人の朗読メンバーでの群読です。イノシシ役は台詞は多くないのですが、イノシシがその場にいる設定の場面が多いので、そのあたりはあたかもその場面にいる気になって話の中に身を置きます。ストーリーに合わせて入るB.G.M.が話を盛り上げてくれて、心地よく語れました。
B.G.M.がイントロに変わってSaigottimoさんが歌う主題歌「アオシのように」。テンポ良い曲で、藤枝さんの作詞に今回ピアノを担当されている順いづみさんが作編曲したもので、「3粒のぶどう家族」のストーリーが基になっています。
ここで、前回のプログラムにはなかった絵本の感想文の読みが入ります。藤枝さんの地元茨城県日立市の小学生たちが絵本を読んだ感想を寄せてくださったもので、学年ごとに文章ずつで私は2年生を担当しましたが、どの学年も話の主題をよくつかんでおり、小学2年生になりきりつつも感心しながら読ませていただきました。
続いて、順いづみさんのピアノ「グレイウインド」、橋本美佳さんが歌に加わって「ともに愛」、どちらも順いづみさんが作曲された曲で、本当にメンバーが持ち味をよく出しているイベントという感じでした。
藤枝さんは、詩人として「春雪トンネル」という詩集を出しています。朗読の締めくくりは、その詩集に収められている詩の朗読です。海辺の季節の移ろいを描いた「秋空のこよみ」、クリスマス・イブの街の風景を猫の目線で読み取った「クリスマス・イブとドラ猫」などなど、車椅子に乗りながら移動も大変なのにどうやってこれだけの感性を身に着けたのか、本当に感心しました。
そして、絵本になくてはならない絵を描いてくださった野歌つぐみさんのギャラリートークは、ぶどうやアリをどう描くかで苦労した話と本業の看護師さんとして見た虐待の話でしたが、「3粒のぶどう家族」をもっと広めないといけないと思いました。
フィナーレは、「アオシのように」を全員で合唱。来場者の中にも絵本にある歌詞を見ながら歌ってくれた方がいらしたのがよかったです。
今回のプロジェクトは、メンバーが朗読会やライブで知り合った人たちが多く、それぞれのメンバーが特技を活かして完成させたもので、とってもよい経験になりました。プロジェクトのきっかけを作ってくださった藤枝さん、メンバーのみなさま、ありがとうございました。こんな素晴らしいプロジェクトに協力させていただけて、嬉しかったです。
そして、遠くからご来場いただきましたみなさま、本当にありがとうございました。
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