YouTube買収がGoogleにもたらすメリットは?
YouTubeはオンラインビデオ市場の約50%を握っており、Googleにとってはそのトラフィックに大きな価値があるとアナリストは考えている。(ロイター)
Web検索大手のGoogleは10月9日、ビデオエンターテインメントサイト最大手のYouTubeを株式交換により16億5000万ドルで買収することで合意した。コンシューマー生成メディア(CGM)サイトに新たな莫大な価値がついた格好だ。
この買収は、新世代のユーザー参加型サイトに初めて10億ドルを超える値が付いたケースだ。この取引によりWeb検索そして急速な革新と同義語に なったGoogleと、動画共有ブームの先陣を行くシリコンバレーの新興企業YouTubeという2つの人気インターネットブランドが統合されることにな る。
この買収を見込んだ投資家により、Google株は9日、8.50ドル(2%)高の429ドルで引けた。4月後半以来の高水準だ。買収発表後の時間外取引で、同社株は427.63ドルに下落した。
GoogleのYouTube買収が近いかもしれないという報道があった6日時点で既に、同社株は約2%値上がりしていた。ここ2営業日の間、同社の時価総額は約40億ドル――YouTube買収のために支払う額の2倍以上――増加した。
Googleにとって、YouTube買収はビデオ広告という新しい市場に迅速に踏み込む力となるとアナリストは語る。この市場では、同社はYahoo!やさまざまなWeb新興企業に比べると小さな足場しか持たないという。
「YouTubeはトラフィックという点で非常に価値がある。インターネットセクターでは、トラフィックは不動産における場所のように重要だ」とOppenheimerのアナリスト、サザ・ゾロビック氏は言う。
「YouTubeはオンラインビデオ市場の約50%を握っており、Google Videoと合わせると、トラフィックの60%近くを手にすることになる」と同氏は語り、16億5000万ドルという買収額はインターネットビジネスの評価額に沿ったものだと付け加えた。
YouTubeは2005年2月に、数十の新興インターネットビデオ企業の1つとして設立された。ユーザーがホームビデオやテレビ番組のコピーの短いクリップを共有できることから、昨年11月から爆発的に人気が高まった。
今年に入ってからほとんどの間、YouTubeには買収されるのではないかという憶測がつきまとっていた。同社を買収しそうな企業としては、 GoogleのライバルのYahoo!のほか、MySpace.comのオーナーであるNews Corp.、MTVを傘下に持つViacomなどのメディア企業も挙がっていた。
「この買収はGoogleにとって戦略的に非常に良い。同社があまり勢力を持っていなかったインターネット分野で成長する可能性を開くからだ。そ の分野とはビデオだ」とAIG SunAmerica Asset Managementのポートフォリオマネジャー、スティーブ・ニーメス氏は指摘する。
「財務的には、Googleは100億ドルの現金を持っており、買収額は予測の範囲内であるため、たいしたことはないだろう」(同氏)
YouTubeは、同社サイトでは毎日およそ1億件のビデオが視聴されており、大手メディア企業は同社のページに許可なく掲載された著作権付きコンテンツに監視の目を向けていると語る。
Universal MusicとSONY BMGは9日、YouTubeと配信契約を結んだと発表した。これはYouTubeに対する訴訟の脅威を回避する対策になりそうだ。先月にはWarner Music Groupも同様の契約を結んでいる(9月19日の記事参照)。
グーグルのユーチューブ買収 動画分野を独占か
米インターネット検索大手グーグルによる米動画投稿サイト大手ユーチューブの買収合意は、動画投稿サービスの集客力が、ネット業界で無視できないほど大 きくなったことを示した。ウェブ検索で圧倒的シェアを握るグーグルが、1日1億回の閲覧数を誇るユーチューブを取り込むことで、ネット業界の覇権をめぐる 争いが激しくなりそうだ。ただ、動画投稿サイトには「著作権侵害」との批判も強く、対策を迫られる可能性がある。
グーグルが6月末時点で保有する約100億ドル(約1兆2000億円)もの現金・有価証券などに比べると、買収額の16億5000万ドル(約2000億 円)は大きくはない。だが、グーグルはこれまで、世界中の優秀な技術者を集め、自社開発を重視する姿勢をとってきただけに、大型買収に乗り出すのは創業8 年で初めてのことだ。
動画投稿サイトは、グーグル自身も英語圏で自前のサービスを展開しているが、米国内のシェアは1割程度。ユーチューブ買収で、出遅れを一気に取り戻す考えだ。
日本のあるネット企業首脳は「パソコンソフトの分野のマイクロソフトのように、グーグルが映像分野で独占的立場を握りかねない」と警戒心をあらわにする。
国内でも動画投稿サイトは活況を呈している。フジテレビの関連会社が7月から動画投稿サイト「ワッチミー!TV」を始めているほか、日本テレビも運営するネット動画配信サイト「第2日本テレビ」に、11月から投稿システムを導入する。
ただ、著作権の問題には、各社とも頭を悩ませている。
ユーチューブには、過去のテレビ番組などが勝手に投稿されているが、国内外から寄せられる大量の動画の著作権をすべて確認するのは困難で、グーグルは法的な問題も一緒に抱えることになる。
ネット広告大手サイバーエージェントの動画投稿サイト「アメーバ・ビジョン」は7月の運営開始から3カ月で3万本の投稿映像を集めた。映 像は投稿の瞬間に掲載されるが、24時間のチェック態勢を敷き、著作権侵害の疑いのあるものは削除する。渡辺健太郎執行役員は「ユーチューブがグーグル傘 下に入ったことで、テレビ会社などとの関係が改善されるかどうかを注目している」と話す。【過去記事】保守.9 2.0の貴公子
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