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保守記事.9-7 2.0の大騒動

2006-10-20 13:23:58 | 記事保守
ユーチューブが3万件削除 著作権侵害の指摘受け(共同通信) - goo ニュース

 日本のテレビ局や映画、音楽など23団体・事業者は、米動画投稿サイト「ユーチューブ」に対して著作権者に無断で投稿された映像など約3万ファイルの削除を要請、ユーチューブ側がこれらのファイルをすべて削除したことを20日、明らかにした。

要請を取りまとめた日本音楽著作権協会によると、今月2日から6日まで同サイトを調べた結果、テレビ番組や音楽のプロモーションビデオ、映画など2万9549ファイルが無断で投稿されていることが分かった。

23 団体・事業者は今後、ユーチューブ側に投稿ファイルの事前審査や違法ファイルの投稿者に対する利用禁止など実効性のある対応を求めていくとしている。同協 会は「ユーチューブ自体を否定するわけではないが、違法な投稿ができないようきちんと対処してほしい」と話している。

「確信犯」的な態度を貫く「ユーチューブ」の加速感

 動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」人気の加速感は、見ていて怖くなるほどだ。グーグルをはじめ、いずれ世界を席捲することになるネット・サービスの初期普及スピードをあまた見てきたが、ユーチューブほどの加速感は初めてである。
 ユーチューブ(http://www.youtube.com/)は、二〇〇五年二月に創業されたシリコンバレーのネット・ベンチャー。同社のビジョンは「ブロードキャスト・ユアセルフ(あなた自身を放映しよう)」。ユーザがビデオ映像を自由に投稿し、ネット上に発信できる無料サービスである。
 私が拙著『ウェブ進化論』を脱稿したのは今年の一月初旬だったが、わずか七カ月前のユーチューブは、ネット世界に現れては消えるたくさんの挑戦者たちの一社に過ぎず、ユーチューブについて本の中で言及するなど全く考えもしなかった。
 しかし今年の三月頃から普及に加速がつき、六月中には二十五億本のビデオが閲覧され、七月十六日には一日の閲覧数が一億本を超えた。ユーチューブの 「ネット上ビデオ閲覧の世界シェア」も一気に六〇%に至った。ユーザからの一日の投稿数も、五月の五万本から七月中旬には六万五千本に増加。一日は八万六 千四百秒だから、まもなく投稿数が毎秒一本を超える。
 むろんユーザは、自分で撮影したオリジナル映像ばかりでなく、テレビ番組等から録画した映画・ドラマ・アニメ・バラエティ・スポーツ・CM等の断片をど んどん投稿してくる。そのため、質的な「玉石混交」に加え、著作権上の「白黒混交」をも飲み込んだ渾沌とした空間が、ユーチューブ上に作り出されている。 そしてそこがユーザにとっての最大の魅力だ。ちなみに、日本からも大量の映像が、著作権者に無断でユーチューブに流れ込んでいる。
 企業としてのユーチューブの秘密は、動画ビジネスでは絶対に避けて通れない著作権問題に対して、本音と建前を巧みに使い分ける「確信犯」的な態度を貫く経営姿勢にある。
 建前は「ブロードキャスト・ユアセルフ」というビジョンに象徴されるように、あくまでもユーザ制作のオリジナル映像の投稿サイトという位置づけだ。著作 権者から侵害申し立てがある投稿は迅速に削除していく方針。ダウンロードはできず見るだけ。画質はかなり悪く、映像の長さに十分以内という制限もつけてあ りすべてアマチュア仕様で作ったもの、というのが公式の立場だ。
 しかし本音は全く違う。
 ユーザ参加の入り口(投稿時)で検閲のような規制をかけたら、ネット・サービスは絶対に成功しないという確信がまずある。そして、現行の著作権法を厳守していては、ネット上で動画のビッグビジネスは作れるはずがない、と腹をくくってもいる。
 たとえば、フジテレビが試験運用を始めた動画投稿サイト「ワッチミー! TV」(http://www.watchme.tv/) のコンセプトは、ユーチューブの建前と全く同じだが、本音のところでも著作権厳守という絶対方針を貫き、ユーザが投稿した動画はすぐにはアップされず、ス タッフが著作権侵害の有無を検閲してから一般公開するルールになっている。ユーチューブは、こんなお行儀のよい順法サービスでは、巨大ビジネスにつながら ないと考える。
 これだけユーザ投稿数が多ければ「侵害申し立てと削除」はどうせいたちごっこになる。よって誰もが見たいと思うような旬の映像は、「永遠にユーチューブ 上には存在せずとも、かなりの確率で適切なタイミングで存在する」という著作権的にグレーな状況になるはずだ。そういう違法映像を含む巨大な渾沌が生み出 す人気をバネに全力疾走し、ネット上の絶対多数を味方につけてしまう。そして「検索・イコール・グーグル」と同じ意味での「ネット上の動画・イコール・ ユーチューブ」という「事実上の標準」を確保する。そこまでたどりつけば、広告のビジネスモデルもついてくるだろうし、著作権者に対して某(なにがし)か の新提案も可能だろう。そう読んでいる。
 過去に潰されたナップスターをはじめとするファイル共有ソフト・サービスの場合は、その台頭がCDやDVDという「有料の情報製品」の売上げに直接の打 撃を加えるという「わかりやすい脅威」を音楽・映画業界に与えた。しかし、ユーチューブを敵視するのは主にテレビ局だ。そのテレビ局は、放映済みの大量の 映像から巨大事業を生む確固とした枠組みを持っていないではないか。そこに付け入るべき大きな隙がある。だから、音楽・映画業界に比べて、テレビ局は与 (くみし易し。ユーチューブはそう見ている。その証拠に、米NBCは看板番組の宣伝ビデオをユーチューブに配信する「緩い提携関係」を結び、さらに大きな メリットを模索し始めた。
 ユーチューブの加速感を見るに、なるほど動画とは、文章や写真などとは比較にならないほどのパワーを持つメディアだと痛感する。言語の壁も容易に超えていく。インターネット勃興から十三年目にして初めて、動画を巡る新旧勢力の本格的な試行錯誤が始まろうとしている。
梅田 望夫