霞が関、戦々恐々 首相肝いり「消費者庁」構想
2008年01月30日08時14分
福田首相が打ち出した消費者行政の「司令塔」となる新組織の構想に、「霞が関」の中央官庁が戦々恐々としている。規制権限から人員、予算まで、新組織に奪われかねないためだ。官僚らの抵抗感は強く、首相が掲げる「消費者重視」の旗印も実現は容易でなさそうだ。
福田首相の意向を受け、自民党消費者問題調査会がまとめた中間報告では、新組織の形として、新省庁の設置、内閣府国民生活局の行政委員会化などの案が示された。経済産業省は、この新組織構想を「省の死活問題」と警戒する。
経産省は、規制緩和の流れの中で権限を手放してきた。残る規制分野も、資源エネルギー庁や原子力安全・保安院など「外局」が中心で、経産省本体は「生きる道」として消費者行政に力を入れている。
きっかけは、一昨年発覚したパロマ工業製のガス湯沸かし器による死亡事故。事故の報告を受けていながら、省内の連携不足で対応が後手に回った。製品の安 全だけでなく、住宅リフォームの詐欺事件など悪質商法の対策も強化。甘利経産相は「製品や業界を担当しているから、改善指導と表裏一体の行動がとれる」 と、現体制の優位性を強調する。
農林水産省も新組織には慎重だ。若林農水相は「消費者からの情報提供が非常に大事で、たらい回しにせず、組織が一体となってすぐ行動することが重要だ」と力説。背景には、同省の「食品表示110番」が一定の役割を果たしていることに対する自負がある。
食品偽装などの情報提供は、昨年6~12月で3196件。前年同期比の4倍だ。三重県の「赤福」の偽装事件も「110番」がきっかけだ。
食中毒などの健康被害を監視する厚生労働省の幹部も「相談窓口を内閣府あたりに一本化して対応を各省庁に割り振れば済む話ではないか」と、新組織に否定的だ。
自民党の調査会案は、新組織の機能として、消費者の相談窓口、省庁間の政策調整、勧告権限などを示した。各省庁の権限縮小や予算、人員の削減の記述はあいまいで、省庁には「消費者行政の一元化とは認識していない」(経済官庁幹部)との楽観論もある。
だが、町村官房長官は、29日の記者会見で「法律や予算、人員が本当にその組織に何が何でもなければならないものかどうかは、もう少し頭を柔らかく」と、省庁再編の可能性を示唆。独立行政法人改革に続き、「霞が関」の抵抗が今後活発化しそうな雲行きだ。