4月6日プレ初日の観劇記です。詳細なネタバレありで書きますので、これから観劇予定の方は要注意です
~あらすじ~
偉人たちの、意外な一面を描いて定評のある三谷幸喜が、野田秀樹にあてて描くのはフランス史上最大の英雄ナポレオン・ボナパルト!! 天才か、狂人か? 神か 悪魔か? 高潔な英雄か 人格破綻者か?…その存在のあまりの大きさゆえに、その人間性のあまりの幼さゆえに、あがめられ、畏れられ、愛され、憎まれた男、ナポレオン。幽閉の地、大西洋の絶海の孤島セント・ヘレナ島での最期は、病死とも暗殺とも伝えられ、その死はいまだに謎に包まれている。「おのれナポレオン」と殺意を胸に抱く者たち、「ナポレオンの名誉 L’honneur de Napoleon」をかけてその企てに立ち向かう者たち。そしてナポレオン自身が仕掛ける一世一代のたくらみとは…。(東京芸術劇場HPより)
上演時間は2時間20分、休憩なしの1幕です。センターに向かってせり出した八百屋舞台。「100万回生きたねこ」の時は奥行きがある上に前方席が逆八百屋状態なので観づらかったと聞いて心配していたのですが、今回は全然観やすかったので良かった~~センターはF列から、上手&下手ブロックはC列から、ステージシートは舞台上に左右に5列ずつ。通常の客席と同じシートになったいたみたいなので、いつぞやの演目のようにお尻が痛くなることはなさそう……キャストとの絡みもほぼなしですので念のため
今日のお席は上手のF列だったのですが、野田作品にありがちなイメージ
今回は野田さんは役者一本ですが、、、真ん中に舞台があって4方向から観る形に似ているように見えましたね~~役者陣もいろんな方向でお芝居をしてくれるので様々な見方ができると思いました。ステージシートも後姿ばかりで取り残されるということもなさそうです
セント・ヘレナ島に流されたナポレオン。一般的には胃がんで死んだと言われていますが暗殺説もまことしやかに囁かれ……そこら辺の事情が三谷ワールドを通して描かれた作品になっています。舞台の前正面に椅子がドドーン!ナポレオンの死から20年、その死に疑問を持った医学生が真相を暴くべく関係者の元を訪ねてそこに座っているという設定、セント・ヘレナでの出来事を関係者たちに語らせるという形で物語が進んでいきます。20年後⇔20年前それぞれの場面、、、後ろを向いたり羽織っていた衣装を脱いだりした瞬間からナポレオンが生きていた当時にタイムスリップ!一瞬にして空気感の変わるところはさすが実力派が揃った舞台だな~と思いました
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中の人ネタ?と思うようなこともありましたね~~山本耕史くんのギター生演奏あり、天海さんのフラメンコあり、、、そうそうピアノは本当に弾いていたっぽいです。ナポレオンとベートーベンのエピソードが出てきて音楽経験者は密かに楽しめるというか(笑)月光ソナタの第1楽章で同じ旋律の繰り返しが気に入らないから端折れ!というトコなんて面白すぎて……今度そうやって弾いてみようっと
そうそう、内野さん演じるハドソン・ロウがナポレオンと戦法の話をするところで孫子の兵法がどうのこうのって……勘助サマッ
結局のところ自殺……と言うか、英雄としての名誉を守るべく自分を殺させるように腹心を使って周りの人たちを巻き込んでいくという、ミステリー的にはありがちな“落ち”なので特に驚きもせず「あぁやっぱりね
」という感じでした。そういう意味では捻りなしの単純な展開なのかなぁ~とは思います。でも、みるべきところはそこじゃないと思うんですよね~~交錯する人の気持ちや本音が描かれているのが面白い!もちろんそこは三谷流、、、まぁ正直言って構えてしまった部分というか思わず拒んでしまう部分はありました。ものすごく重くて深いことなのに変に軽さを与えてしまう“笑い”の要素、、、その絶妙さが好きな人には堪らないんだろうけど、じいにはそれが割り切れないというか何が面白くて笑えるの?と思ってしまうところが…。斜めった物言い、明らかな演出なんだろうけどそこがちょっとね~~三谷節だなと
後半も冗長でもう少しあっさりしてても十分に伝わるのにと思いました。ただ、今回は題材とそれに対するあて書きの仕方、個性満載の素晴らしい出演者、それらがしっくり来ていたのかな~~今まで拒絶感のあった三谷作品とは違って意外にも楽しめましたよ~
ナポレオン
ハドソン・ロウと思いきや、山本耕史くん演じるシャルル・モントロンだって同じじゃん、いや、こっちの方がナポレオンを厭らしく甚振ってないかい?と思いましたね~~かつてコルシカ島でナポレオンに家庭教師をしてもらい、憧れて軍隊に入ったのにナポレオンは覚えていない、それどころか女性を巡るナポレオンの嫉妬により失脚、恨みを持ち復讐するべく落ちぶれたナポレオンに近づく……でもね~~確かに復讐する気持ちは本物だけど、それと同じだけ逆の感情があると思ったんですよね~~ちょっと切なくなってしまいました
叶えられない、叶えたくない思いというのが堪らなかったです。
でもそれ以上に複雑な思いを感じたのが内野さん演じるハドソン・ロウ。彼のナポレオンに対する憎悪や殺意は他の誰よりも本気、そして殺したい以上の思いが溢れているんだろうな~と。。。冒頭、ナポレオンがセント・ヘレナ島にやってくるという場面では、囚人扱いする気満々のくせに(笑)英雄ナポレオンに会える!と喜びを隠せない姿は本当にお茶目。その分思い描いていた姿とは真逆の現実を見せつけられた時の裏切られ感……ってお前が勝手に期待していただけじゃん!と突っ込みたくなりましたが(笑)全く素直じゃないんだからぁ~
と何だか微笑ましくなってしまいましけどね~~でも、、、そこには凄い葛藤と複雑さがあるのは物語が進むにつれてヒシヒシと伝わってきました。ヤマ場的な場面であり結末に結びつく伏線の1つと言ってもいいかな~~ナポレオンとハドソン・ロウのチェスの勝負。二人の戦術や性質の違いが如実に表されている対決になっているのですが、論理的に積み重ねていくロウ総督と一見ハチャメチャなように見えるのに成功していく天才ナポレオン……当然勝つのはナポレオンなんだけど、それを認めようとしないで反則抗議で対抗するロウ総督、、、ホント小さい男なんだから(苦笑)ここも笑いの要素を含んだ軽いやり取りで進んでいくけど、そこにはグサッと来る重い言葉が随所に含まれていましたね~~負けから学ぶということ、本当の戦争ならやり直しは通用しないこと、人を率いるにはチェス駒を動かすように部下を扱うのではなく自分が危険にさらされる覚悟で人心掌握すること、、、それでいて人を駒のように扱うという逆説性も含んでいて……でもね、ナポレオンの臨終間際にロウ総督が枕もとでポロっと漏らすんですよね~~「俺はあのナポレオンとチェスで勝負して負けたんだ。それを自慢したいんだ」って……そして20年後、ナポレオンの死に疑問を持って訪ねてきた医学生を関係者たちが結託して闇に葬る、、、死の真相と名誉を守るために。その時にナポレオンの企みに協力した側近のマルシャンから報酬を受け取るんだけど、ハドソン・ロウだけはそれを受け取らないんですよね~~そしてマルシャンからナポレオンの本音を伝えられて頑なに拒絶し最後まで呼ばなかった名前→皇帝陛下!と……その後のセリフを含めてここら辺が内野さんがインタでおっしゃていた難しいセリフなのかなぁ~と思ったのですが、そこに込められた二人の気持ちに思わずホロッと
大好きで大嫌い、そこら辺の心の機微が突き刺さりました。
キャストは実力派の面々でまさに夢の企画に相応しい夢の競演状態
野田さんはナポレオンそのもの!無理なく一瞬にしてスッと入ってきましたね~~ザ・あて書きというのも超納得(笑)存在感と時折垣間見せる黒々しい迫力に圧倒されました。シャルル・モントロンの山本耕史くん、、、悔しいけど(笑)かっこよくて思わずクラクラ~っと
膨大なセリフが軽妙に前に出ていて良かったです。医者のアントンマルキを演じた今井朋彦さん、、、内野ハドソン・ロウとのやり取りは別の意味でゾクゾクしながら見入ってしまいましたが、相変わらずの怪しさといけ好かない存在感が素晴らしくて
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マルシャンの浅利陽介くんも大健闘!頑張っていました。紅一点のアルヴィーヌ・モントロンの天海祐希さん。実は生でお会いするのは初めて。いろんな面で好きな女優さんです。テレビで見た通りの姉御肌、ハンサムウーマンで全然色っぽくない←褒めてます!役の振り幅的にはどうなんだろう?と思ったのと、やはり所々にヅカだなぁ~と感じるところがありましたが、今回の役は似合っていたと思います。
そしてハドソン・ロウの内野さん
久しぶりに(笑)普通にかっちょいい風貌。キャラ的には器が小さくて嫌な男でしたが、それさえ可愛いと思える自分……アホだわ
相変わらずの汗っかき、何度もハンカチで拭ってましたね~~ナポレオンに踏まれたブーツを掃ったハンカチで思わず汗を拭きそうになりハッとした姿は可笑しかったですぅ~~
最初の方は浮いている感があって、空気感や雰囲気も含めて馴染んでいないな~と思ったんですわ。仕草も大げさと言われかねない感じだったしイギリス人っぽさも???まだまだ内野さんの中にハドソン・ロウが入っていないのかなぁ~と違和感があったような、なかったような……ただ、気がつくと取り込まれていたというか、セリフの言葉に乗せられた複雑な感情がヒシヒシと伝わってきてやっぱりコレが内野さんよね~~と
プレ→初日で演出等々またガラッと変わってくる可能性大だし、全体的に硬さがあったように感じたのでこなれてきたら違ってくるのかなぁ~~進化/深化していく舞台、楽しみです
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~あらすじ~
偉人たちの、意外な一面を描いて定評のある三谷幸喜が、野田秀樹にあてて描くのはフランス史上最大の英雄ナポレオン・ボナパルト!! 天才か、狂人か? 神か 悪魔か? 高潔な英雄か 人格破綻者か?…その存在のあまりの大きさゆえに、その人間性のあまりの幼さゆえに、あがめられ、畏れられ、愛され、憎まれた男、ナポレオン。幽閉の地、大西洋の絶海の孤島セント・ヘレナ島での最期は、病死とも暗殺とも伝えられ、その死はいまだに謎に包まれている。「おのれナポレオン」と殺意を胸に抱く者たち、「ナポレオンの名誉 L’honneur de Napoleon」をかけてその企てに立ち向かう者たち。そしてナポレオン自身が仕掛ける一世一代のたくらみとは…。(東京芸術劇場HPより)
上演時間は2時間20分、休憩なしの1幕です。センターに向かってせり出した八百屋舞台。「100万回生きたねこ」の時は奥行きがある上に前方席が逆八百屋状態なので観づらかったと聞いて心配していたのですが、今回は全然観やすかったので良かった~~センターはF列から、上手&下手ブロックはC列から、ステージシートは舞台上に左右に5列ずつ。通常の客席と同じシートになったいたみたいなので、いつぞやの演目のようにお尻が痛くなることはなさそう……キャストとの絡みもほぼなしですので念のため
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セント・ヘレナ島に流されたナポレオン。一般的には胃がんで死んだと言われていますが暗殺説もまことしやかに囁かれ……そこら辺の事情が三谷ワールドを通して描かれた作品になっています。舞台の前正面に椅子がドドーン!ナポレオンの死から20年、その死に疑問を持った医学生が真相を暴くべく関係者の元を訪ねてそこに座っているという設定、セント・ヘレナでの出来事を関係者たちに語らせるという形で物語が進んでいきます。20年後⇔20年前それぞれの場面、、、後ろを向いたり羽織っていた衣装を脱いだりした瞬間からナポレオンが生きていた当時にタイムスリップ!一瞬にして空気感の変わるところはさすが実力派が揃った舞台だな~と思いました
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結局のところ自殺……と言うか、英雄としての名誉を守るべく自分を殺させるように腹心を使って周りの人たちを巻き込んでいくという、ミステリー的にはありがちな“落ち”なので特に驚きもせず「あぁやっぱりね
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ナポレオン
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でもそれ以上に複雑な思いを感じたのが内野さん演じるハドソン・ロウ。彼のナポレオンに対する憎悪や殺意は他の誰よりも本気、そして殺したい以上の思いが溢れているんだろうな~と。。。冒頭、ナポレオンがセント・ヘレナ島にやってくるという場面では、囚人扱いする気満々のくせに(笑)英雄ナポレオンに会える!と喜びを隠せない姿は本当にお茶目。その分思い描いていた姿とは真逆の現実を見せつけられた時の裏切られ感……ってお前が勝手に期待していただけじゃん!と突っ込みたくなりましたが(笑)全く素直じゃないんだからぁ~
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キャストは実力派の面々でまさに夢の企画に相応しい夢の競演状態
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そしてハドソン・ロウの内野さん
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プレ→初日で演出等々またガラッと変わってくる可能性大だし、全体的に硬さがあったように感じたのでこなれてきたら違ってくるのかなぁ~~進化/深化していく舞台、楽しみです
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