6月3日(初日)の観劇記です。注
若干のネタバレあるかも!
~あらすじ~
さびれた芝居小屋の楽屋。客入れの演歌が流れる中、女座長・五月洋子は、座員に檄を飛ばし始める。支度の最中も、口上や十八番「伊三郎別れ旅」の母と子の再会の場の稽古に余念がない。そこへ突然の来客が...。
クリスマス間近の芝居小屋の楽屋。座長・市川辰三は、夜の部も迫った40分前、切羽詰まった様子で座員に口立て稽古をしている。そこへ孤児院の恩師が、なにやら大切な話がある様子でやってきた...。
休憩なしの1時間35分。前半は子供を捨てた母の立場から、後半は母に捨てられた子供の立場から演じられる一人芝居。セットはどちらも壁を大漁旗で覆った楽屋。違いと言えば行李に書かれた一座の名前と吊るされた衣装ぐらい
ほぼ同じセットなのですが実は最後にちょっとした仕掛けあり。物語の核を表しているのか、虚と実を仄めかしているのか、繋がっているようで繋がっていなくて……そんなこんなの“表裏一体”が見られます。冒頭の方は前半&後半とも横たわった姿から始まるのですが、照明が良いのよね~~セピア色から徐々にリアルな色へ……昔の写真に固定された一コマが息を吹きかけられて蘇り止まっていた時が動き出したかのようでした。BGMは微妙に違っていたのは座長の違いから
アーメンの方の養護施設出身だからなのかクリスマスな季節設定だからなのか洋なチョイスが多かった気がします。ただじい的に耳の残って離れなかったのは前半に流れまくっていたちあきなおみの喝采
有森也実さん演じる女座長の五月洋子。風貌はかっこよくて嵌ってたと思います
芝居をしつつ化粧をしつつ最後は見事にその日演じる伊三郎のいでたちに!かっこいいなぁ~と惚れ惚れしてしまいました
ただお芝居的にはちょっと厳しかったような……演目の話をしているのか、稽古の話をしているのか、あるいは自身の生い立ちを喋っているのか、平面的に感じるので綯い交ぜになってしまっているように感じました。観ている側の事情によって如何様にも捉えられる余白がある作品ではあると思うのですがもう少しセリフの交通整理をしてほしいような……公演数を経る中での進化を期待したいなぁ
内野さん演じる市川辰三、初日のギリギリ感を感じさせない余裕と貫禄!女形を演じる仕草で少しケンジを思い出してしまいましたが
やっぱり板の上の内野さんは一等素敵
最初の方の楽屋衣装の姿なんてホントもう
後ろ姿のシルエットもかっこよすぎて倒れるかと思いました
辰三の方も化粧をしながらのお芝居だったのですが、白粉を叩いて馴染ませる場面の……は…ず、きっとそうなのですが、ゴメンナサイ
アレは明らかに手拭いで汗を拭いていた!突っ込まずにはいられなったのですが、汗っかきさんには大変な演目だと思いました
辰三のキャラがあんなに笑いを取っているというのは少し意外でしたね~~もう少しシリアスな感じかと思っていたので
一座が演じるのが「瞼の土俵入り」で力士役なので当たり前と言えばそうなんだけど肉襦袢が出てきた時には昭和のコントを彷彿させるようで大笑いでした
しかもその上に紋付き袴を着ないといけないので相当大変だったようで……帯が上手く留められないハプニング?があって「これは難しいんだ!」とお茶目な一言が!でもそんなキャラクターの後ろにある切ない感情。捨て去ろうとしながらもどうしようもなく欲している母という存在があちこちに滲み出ていて胸が苦しくなりました。
「この世は点がつながった果ての線 線で導かれた母と息子 散りばめられた過去が一つになる 過去と現在が一つに重なる時、それが親子の因果のはじまり」とありましたが、まさにその通りだと思いました。2つの物語が違ったとしても根っこは同じ、みんな抱える事情も思いも生い立ちもそれぞれだけど普遍的に共通する“何か”があるような……観終った後もじんわり沁み続ける演目です。
じんわりと言えば……辰三を訪ねてくる孤児院の恩師はカナダ人宣教師、ということは日本語のイントネーションが怪しい設定
一人芝居なんだけど辰三がその宣教師の喋りを繰り返す形を取って話を進めていくことになっていて……もうね~~そのセリフ回しが面白すぎて耳から離れないのよ
内野さんが上手すぎるせいなんだから