6月8日ソワレの観劇記です。
初日の幕が上がってからもう少しで1週間という公演でしたが初日に比べて確実に良くなってる~~
セリフや振りの1つ1つがとても自然でがストンと落ちてくるように感じました。1度通して観ているせいもあると思うのですが、前半と後半の図式というか関係性というか、大きく小さく見る余裕が出てきて頭に心に沁みました
有森さんの五月洋子、、、キャラ的に嫌いじゃない
若干作った感じはあるもののオバサーーン的でちと厭らしい物言いとか癖になりそうな味わい
特に死ぬ前の長台詞に対するツッコミ、、、大衆演劇ならそういうものなんぞやったらお客さんから批判されるのに新劇のお客さんは怒らなくて「新劇のお客はおっとりした方が多いんですねぇ」のところは……何気に好きな場面です(笑)初日は正直厳しいかなぁと思っていた前半ですが(爆!)今回は随分とこなれて良くなっていました。やっぱり一座で演じるお芝居の部分はもう少し切り離した感じというか自己の語りとは一線を引いた緩急をつけてほしいなぁと思いました。特に最後の「自分の息子は死んだ」ことにしようと言い聞かせる、ある意味見得を切るようなシーンがあるのですが、そこは特にお芝居お芝居している感じを出してほしかったなぁと。。。でも子供を捨てざるを得なかった、あるいは捨てるしかなかった洋子の人生は伝わってきました。出演依頼の為に来たテレビ局の人は「お芝居という安全な枠の中で自分を罰し、最後に捨てた息子に自分を許させている」と指摘していましたが、後悔懺悔だけの意味合いではないのかなとじい的には感じました。自分を罰する以上にお芝居という虚構の中で自傷することによって一種の快楽があったというか←変な意味や趣向ではないよっ
甘えがあったんじゃないかなと……実際には傷ついているんだけど傷つかないところに逃げ込んでいる。そんな身勝手な部分と母としての消せない思いの中で揺れ動く終盤、、、グサッとホロッとしました。。。
内野さんの方は相変わらずの汗っかきさん……もうぅ~~1分もしないうちに額から汗の玉が
その中で化粧水?ローション??を叩くところから始めるものだから、ついつい自分が夏の超暑い時期に風呂上がりで汗が引かないうちに化粧水を付ける時のイライラ感を思い出してしまってムズムズと(苦笑)そのうち今度は首から汗が滝のように何筋にもなって流れ始め……確かに板の上は暑いけどそんなに動いてないよね?もうぅ~~と何だか無性に可笑しくなってしまって心の中で大爆笑
でもね、、、仕上がりちょっと前の白塗りの顔!これまた汗で若干崩れかけているんだけど、その時の横顔が物凄~~~く色っぽくてドキッ
卒倒するかと思いました
後半も一人芝居なのですが、ちゃんとそこに内野さん演じる辰三以外の人間も見えるんですよね(爆!)実際に誰か(具体的な俳優とか身近な人とか)みたいなこういう人!という断定した輪郭はないのですが確かにそこに存在しているのが伝わってくる。まるで本を読んで想像した人物のような……なーんか無限に広がる感じが堪らないです。そして辰三の口立て稽古も堪らないっっっ
芝居とは何ぞや、役者の生き方とは何ぞやを語るのが内野さんというのが何かすっごく良くて
もちろん辰三として存在しているのですが、その味わいが無性に嬉しくて……変な言い方ですが堪らなく好きな場面です。しかし、、、つくづく思うけど瞼の土俵入りのおはまを演じてみせるところの所作!1つ1つの動きが浮いていないんですよね~~殺陣でいうと下半身がドッシリ据わっているというのと同じ感じかな~~良い意味で一挙手一投足が重い。これぞ座で修業してこられた賜物なのかなと惚れ惚れします
母を拒絶しても否定しても消しても思慕する息子、、、訪ねてきた孤児院のジュール先生が辰三のことを甘えん坊と指摘したけどいろんな意味でその言葉は当てはまっていると思いました。前半の洋子と同じく辰三もまたお芝居という虚構の中に逃げている部分がある。こうあってほしい、そうでないと自己肯定されないから……でも前半を踏まえていると頭を過るのですが、残酷なようだけど実際には辰三が求めているような母ではないような?!もちろん切っても切り離せない思いはあるけれども決してそれだけでは「解決」できない生々しい感情。
ジュール先生の言葉、ってかあのイントネーションはヤバイ
母さんがいたからそんな気持ちになれた、頑張れた、母さんがいたから立派になれたという発想。実は最初ものすごーい違和感を感じたんです。それまで織り交ぜられてきた大衆演劇のお芝居の話は日本人、敢えてその言葉を使いますが、日本人のDNAに響いて堪える価値観であったり筋道だったりする……ってこれが分かる歳になったのか
でもジュール先生が言ったのは他者によって生かされるという考え方。アーメンの施設的発想?!個人的にはグッと分かりやすく噛み砕かれた感じがしたのですが、超絶和物と超絶西洋物……全く別個のものでありながら共通する抗えない人間の土台?みたいなものを描く、井上作品で母息子を描くとこうなるのかなと思わせる一片を感じた気がしました。
実はね、、、今回は超神席での観劇
最前列ほぼ真ん中で至福の1時間35分。内野さんだけ見て、目の前でお芝居されてこんなに贅沢な環境は滅多にないわ
初日を観た後の数日間どうしようどうしようと狼狽えつつ(笑)覚悟を決めていったのですが実際には意外と冷静でした、自分(笑)