日常

洲原神社 彼岸花(曼珠沙華)

2016-10-04 00:11:06 | 生活
美濃の旅(2016-10-02)の時に、洲原神社にも詣でた。

白山信仰の美濃側の入口だった洲原神社。
奈良時代に創建された歴史を感じる空間。

白山信仰は農耕的な信仰も強く、洲原神社は農耕と養蚕の神様として信仰を集めた。
ここ最近、お蚕様が妙に気になっているので、ここでも不思議な符合があった。


川と浮島とが浄土のようで、素晴らしい神社だった。
彼岸花が美しく咲いていた。


洲原神社
〒501-3706
岐阜県美濃市須原468−1-1




彼岸花は、曼珠沙華(マンジュシャゲ)という別名もある。
彼岸花の学名はリコリス(Lycoris radiata)。ギリシャ神話の女神・海の精)だ。
生薬で最もよく使われる「甘草」もリコリス(Liquorice)と同じ名前で呼ばれることもあり、紛らわしい。ちなみに、甘草の学名はグリチルリチア(glycyrrhiza)。

彼岸花(曼珠沙華)でも甘草でも、「リコリス」という共通の音の響きは、何か人間の生命や健康に関わる植物である、ということだろう。
音の響きは全身に訴えてくるものがある。
リコリス・・・。


ちなみに、甘草は全漢方薬の6-7割に配合されている(緩和作用、止渇作用)。ヒポクラテス全集(紀元5世紀)にも出てくるし、ツタンカーメン王の墓の中にも大量の甘草根が入っていた。中国最古の医薬書「神農本草経」にも、あらゆる薬の中心として、「国老」という名を与えられている。
医心方という平安時代の医学書を1年かけて読んでいると、今という時間にいろんな時代が溶け込んでくるようになるものだ。


彼岸花の別名である曼珠沙華(マンジュシャゲ)は、サンスクリット語(manjusaka)で「天上に咲く紅い花」という意味があり、よいことがある前兆ともいわれる。ただ、同時に不吉な花とも言われる。おそらく、それは彼岸花の「毒」によるものだろう。


彼岸花の球根は、甘草と違い「毒」がある。
ただ、でんぷん質が豊富に含まれていて水洗いをすると毒が抜け、彼岸花(曼珠沙華)は飢饉のときの食料としても育てられていたようだ。だから神社仏閣にはよく見られる。
彼岸花が畑やお墓に見られるのは、「毒」によりその場を守る働きもあるのだろう。


彼岸花の名前の由来は、秋の「彼岸」ごろに開花することが由来だが、毒は「彼岸(死)」へも運ぶし、食べ方次第では薬となり「彼岸(死)」から救う。そうした両義的な意味が込められているのかもしれない。
人間の使い方次第で、すべては毒にも薬にもなる。

僕らが「彼岸(死)」を不吉なものと見れば彼岸花は不吉なものと見えるし、豊かなものと見れば彼岸花は美しいものにも見える。
植物は、そうして人間の認識を反映する鏡のようなものとして、ただ静かに美しくあり続けているようだ。
死の香りが濃い宇多田さんの「Fantôme」を聞いていて改めて思った。
自分は、彼岸花を美しいと思う。

花を含めてすべての自然物は、その社会的な貢献によりノーベル賞を与えられることはないが、そうした自然界の全体こそが人類やいのちを深く支えていることは思い出し続ける必要があると思う。それは人類の営みを超えたものだから。