日常

うた恋いレ・ミゼラブルBushidoTATSUMI

2013-01-30 22:23:04 | 
漫画を定期的にチェックしています。
自分が一番尊敬するのは手塚治虫先生。これは小学生の時から変わりません。


日本のいろんな文化レベルが高いのは、幼い時から日本のハイレベルな漫画文化にさらされ続け、イメージ言語が発達するからじゃないかと、勝手に昔から思ってます。
日本の漫画は、その辺の難しい哲学書の数倍深いことが書いてることが多いのです。


だから、定期的に新しい漫画をチェックしておるのです。
最近のお奨めを少々。



「超訳百人一首 うた恋い。」杉田圭(2010/8/4)



この漫画は素晴らしい。テレ東でアニメ化もされているようですね。知らなんだー。


百人一首を現代風にリアルにアレンジ。
こうして漫画で読むとかなりぐっとくる。親近感が湧く。

思いを17文字に凝縮する。それだけでもウルトラCの芸当なのに。
その珠玉の百選がこうして百人一首として残っていると考えると、その純度や密度たるやすごいものだ。


例えば。こんな感じの超訳。
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13 陽成院
筑波嶺の みねより落つる みなの川 恋いぞつもりて ふちとなりぬる 

『あるかないかの想いでさえも 積もり積もって
 今はもう君のことがとても愛しい』
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54 高階貴子(儀同三司母)
忘れじの ゆく末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな 

『一生君だけだと あなたは誓うけど 人の心は移ろうわ
 だから私は今日死にたい 最高に愛されたまま』
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51 藤原実方朝臣
かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを  

『私の想いがどれほどか 君に言えるはずもない 
 だから君は 知りもしないだろうね 私の本当の気持ちなど』
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12 僧正遍昭
あまつ風 雲のかよひ路 ふきとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ 

『風よ強く吹いて 天女が帰る道を閉ざしてくれないか
 今しばらく 彼女の姿を見ていたいから』
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57 紫式部
めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな 

『あれは本当にあなただったのかな……
 曇る夜空の 月みたいな人
 見えたとも思ったら またかくれる』
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「レ・ミゼラブル (まんがで読破)」ユゴー(2009/1/30)



この(まんがで読破)シリーズは愛読しています。
名作は、やはり元の脚本がいいので漫画にしても面白すぎる。

「レ・ミゼラブル」は最近の映画でも話題なので見に行きたいな、と思っていて、まず漫画で読みました。
あまりの面白さに大感動!最後の終わりが泣ける。

思わず、DVDもアマゾンで買ってしまった・・。
1000円位で安いんだもん・・・。夕ご飯一食抜いたと思えば安い買い物。




この勢いで上映中の映画も見に行きたい。
敬愛する一条真也さんのブログにも書かれていて気になっていました。



「武士道 (まんがで読破)」新渡戸 稲造(2008/4/1)



この武士道もかなりいい味出している。
「武士道」の偏見やイメージに惑わされず読む必要があります。
新渡戸稲造がBushidoを英語で書くきっかけになったのは
『1889年頃、ベルギーの法学者・ラヴレー氏の家で歓待を受けている時に宗教の話題になった。
ラヴレー氏に「あなたがたの学校には宗教教育というものがないのですか?」と尋ねられ、ないと答えると
「宗教なしで、いったいどのようにして子孫に道徳教育を授けるのですか?」と繰り返された。私はその質問に愕然とし、即答できなかった。』
というのがきっかけ。これは今にも通じる。

今、自分がそう問われたらどう答える?笑顔でお茶を濁すとか・・。(^^;



岩波文庫版を読むと、新渡戸稲造の西洋東洋を問わず自由自在に古典から引用している引き出しの多さ、そして文章の素晴らしさやリズムの素晴らしさや構成の美しさに驚きます。




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新渡戸稲造「武士道」岩波文庫(1938/10/15) より まとめ

Bushido: The Soul of Japan

第1章 倫理システムとしての武士道 Bushido as an Ethical System
→武士道は日常生活においても守るべき道。「騎士道の規律」「ノーブレス・オブリージュ」(身分高い者に伴う義務)

第2章 武士道の源  Sources of Bushido
→武士道は仏教と神道から大きな影響を受けている。源は孔孟の教え。王陽明の「知行合一」(知識と行いを一致させる)の実践だった。

第3章 義もしくは正義 Rectitude or Justice
→サムライにとって、卑怯な行動や不正な行動ほど恥ずべきものはない。

第4章 勇気、勇猛心と忍耐 Courage, the Spirit of Daring and Bearing
→勇気は、義のために行われるものでなければ価値はない。勇気とは、正しいことを行うこと。

第5章 仁、惻隠の情 Benevolence, the Feeling of Distress
→愛、寛容、他者への愛情、同情、哀れみは、至高の徳。仁は、優しい母のような徳。孟子は「惻隠(そくいん)の情は仁のルーツである」と言った。

第6章 礼儀正しさ Politeness
→礼儀は、他人の気持ちを尊重することから生まれる謙虚さや丁寧さ。

第7章 真実性と誠意 Veracity and Sincerity
→真実性と誠意がなければ、礼儀は茶番か芝居である。サムライの約束は証文なしに決められた。証文を書くことは面子を汚すことだった。

第8章 名誉 Honour
→名誉は、この世における最高の善だった。若者が追求する目標は、富や知識ではなく、名誉だった。

第9章 忠誠の義務 The Duty of Loyalty
→武士道は、自分の良心を主君の奴隷とすることを良しとしなかった。

第10章 サムライの教育と訓練 The Education and Training of a Samurai
→教育で重視されたのは、品性の形成(to build up character)だった。貧しさを誇った。

第11章 克己心 Self-Control
→不平不満を言わずに耐える不屈の精神を訓練した。
自分の悲しみや苦痛を外面に表すことで他人の楽しみや平穏を損なわないように、という礼儀正しさを教えた。
心の奥底の思いや感情(特に宗教的なもの)を雄弁に述べ立てることは、誠実でないこととして受け取られた。

第12章 自殺と仇討ちの法制度 The Institutions of Suicide and Redress
→切腹は単なる自殺の一手段ではなく、法制度としての一つの儀式だった。

第13章 刀、サムライの魂 The Sword, the Soul of the Samurai
→適切な刀の使い方を強調した。誤った使用には厳しい非難を向け、嫌悪した。

第14章 女性の訓練と地位  The Training and Position of Woman
→女性が夫、家庭、家族のために身を捨てることは、男が主君や国のために身を捨てるのと同様、自発的になされるものであった。

第15章 武士道の影響 The Influence of Bushido
→武士道精神を表す「大和魂」は、日本の民族精神(フォルクガイスト)を象徴する言葉だった。

第16章 武士道は生き続けるか Is Bushido Still Alive?
→武士道はこのまま廃れるのだろうか。芳しくない兆候が漂いはじめている。

第17章 武士道の未来  The Future of Bushido
→武士道は独立した倫理的な掟としては消え去るかも知れない。しかしその光と栄光は、廃墟を越えて生き延びるだろう。
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こういうことが漫画から学べます。
(まんがで読破)版の武士道も、岩波文庫に負けず劣らずいい漫画です。手軽なのが何よりヨイ。
体の中心が熱くなるのを感じました。




「TATSUMI」辰巳 ヨシヒロ (2011/7/20)



辰巳ヨシヒロさんも、手塚先生に憧れて漫画家になった方。
手塚先生を尊敬しているからこそ、手塚先生とは違う「劇画」というジャンルを作られた。
海外の方でむしろ高い評価を受けているらしい。

シンガポールのエリック・クー(邱金海)監督がアニメーション化もしたらしい。<カンヌ11ある視点>部門の出品作とのこと。Youtubeでもイントロは見れる


辰巳ヨシヒロさんの作品にはなんとも形容しがたい独特の世界観がある。この日常に潜む屈折した不可思議な世界というか。
基本的に、社会の底辺を生きる人たちの心の世界を書いているように思えた。屈折した心の世界を、屈折したなりの角度から優しく表現するような。社会の底辺で生きる人々への深い愛を感じた。



ということで。漫画は日々進化してますねぇ。