日常

大学病院という迷宮にて

2009-06-02 00:49:35 | 
大学病院で働き始めている。
色んな発見があり、日々面白い。


大学病院は迷宮。
もうどこがどこだかわかんないし、機能性なんて何も考えてない!
縦割りも横割りもどこ行く風の、全てが縦割り! 横との連携なんてナンセンス!縦割り最高!閉鎖性最高!


とにかく室内がドンヨリしていている。
世界を開くために、せいの!で全ての窓を全開に開けたくなる。

もう、全てがドヨーンと、鬱々とうっ滞してる感じ。
そんな鬱々とした空気を誰かが吸って、吐いて、またそれをそのまま吸って、吐いて・・・って何億回も繰り返している感じ。



そんなドンヨリした濁った風景と同時並行で存在しているのが研修医や学生。
研修医や学生は向学心に燃えている。
それなりに一人前になりたい。馬鹿にされたくないと、誰もがどこか思っている。
違う自分になりたいと、どこか思っている。
指数関数的な成長のようなものを実感したいと、どこか思っている。


研修医も、慢性的な睡眠不足のせいか、魚が腐ったような眼をしてゾンビのように歩いているのを見かけるけど(笑)、アカデミックな話を色んなことと関連付けながらオモシロおかしく講義してあげると、目をキラキラして聞いてくれる。さっきまでの腐った眼はどこに行ったんだ!って感じで(笑)
目の中に星がキラキラ輝いている感じ。
いいわー。少女マンガのようにキラキラして見える。



そして、そんな研修医や学生に、過去の自分を見る。


「あんな先生は嫌だ」「あんな医者になりたくない」「あんな風に言われるとこっちの立場がない」「表面的なことじゃなく、もっと根本的に教えてほしい」「もっとわかりやすく教えてほしい。分からないのは教え方が悪いんじゃないか。」・・・

自分が駆け出しの医者のころ、数年先を行く医者に対して傲慢にもそんな風に不満を持つこともあった。


今度は自分の番である。
今は、自分が数年先を行く医者として存在している。


目の前にいる若く怖いもの知らずの研修医は、過去の自分である。
過去の自分と出会っているのだ。


そんな風に、過去の自分と思える無数の存在と出会えるのは嬉しい。
過去とは、概して歴史をイメージすることが多い。歴史となった過去は黄泉の世界で、実際に会って話すことはできないことが多い。


でも、今出会っている過去は、生きている過去である。

研修医や学生のような、生きたままの状態である過去の自分と出会うことは、実はなかなか楽しいことなのです。


大学病院という迷宮にて、そんな風に過去と現在も交錯しているのかもしれない。

4 コメント

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研修医はananあるいはSPUR (H.P.)
2009-06-06 08:53:50
研修医のころは、指導医のもとで安心したいと思う一方、耳学が一番こわいと警戒しておりました
しかし、目の前のことをこなすのに必死で、
と申しますと言い訳。
実際のところは、手足を動かしたことだけで充足感が満ちる傾向があり
結果として、正書に学ぶのも
効率的にはできなかったなと感じます

2年目からは
貪欲な研修医に接することで
様々に知見を得ようと、いわゆる他力本願でした
この発想は、我が髄に遷延しております
稲葉の主催してくれた勉強会への特別枠での
参加、今でも感謝しているよ

ときに、
先月、ピアノリサイタルがあり
初めてサントリーホールへいってきたよ
あんな施設がすぐ側にある環境
つくづくうらやましい

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村社会 (いなば)
2009-06-07 00:52:55
>>>>>>>>>>>
H.P.様
>>>>>>>>>>>
今日は静岡まで当直のバイトに来てます。
地方は医者が少ないんですねー。わざわざ東京から1時間30分近くかけて人を呼ばないといけないっていうくらいですし。


ここでは救急外来の仕事もしていて、救急車とかバンバン運ばれてくると、HP先生たちとやっていた、あの若き研修医時代の忙しさを思い出して懐かしい!あの頃は忙しかったなー。

僕やHP先生の時のように、救急外来では下に研修医2年目の先生がいるんで、すごくやりやすいです。点滴も看護婦さんがとってくれるし。

大学病院だと全部自分一人で孤独にやらないといけないから、ほんと横の連携が全然ないんですよね。そこが空しい。やっぱ、基本はチーム医療だと思いますし。

救急って、数多く診て場数を踏むと、反射神経的にできるようになるけど、ちゃんと教科書とかに戻って勉強する癖つけないと、教わった先生の根拠がないやり方だけ覚える傾向があって、特に医療って閉じられているから、そこだけでしか通用しないローカルルールみたいなのも多くて、ほかの病院では全然通じないこと多い。
ほんと、日本の医療はつくづく村社会だなーなんて思います。


・・
サントリーは元社長・佐治敬三さんが芸術とか音楽とか、文化全般への造詣が深くて、いいですよね。ミッドタウンのサントリー美術館もすばらしいし。

あんな施設が東京にはあふれるようにあるけど、なかなか近いといかない傾向にあります。
でも、最近はディスカバー東京って感じで、東京・江戸文化のものを積極的に観光しにいってます。やっぱり、東京は昔憧れの地だったし、旅人の気持ちに戻って色々楽しんでますよ。
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コメントつながりで (雨音)
2009-06-07 13:27:29
静岡市の西にあるF市に数年住んでいましたので、いなばさんのお話は懐かしく読みました。
そんでもって、先週は神○市の実家にも帰ったので新幹線の車窓から静岡付近をじろじろ懐かしくながめると共に、来週はいなばさんたちもここに来るのだなぁ~と思って通り過ぎました。
研修医制度が変わる前までは静岡は東大医学部と京大医学部がせめぎ合う境界線のようなところで、優秀な医師達が集まってきた高水準の医療を受けられる地であったように思います。
そんな土地からもどんどん医師が流出しつつありましたが、今は更に廃れてきているのでしょうか?

そうだとしても、静岡は気候が良いし、自然や食べ物も豊富ですし、人口もほどほどで住みやすいところだと思っています。
街からちょっと離れたら、野菜の無人販売はあるし、お茶、いちご、魚などなど、何でも揃っています。
ただ東京のように、さまざまな催し物はなく、いちいち、東京まで出掛けなくてはならない不便さはありますね。
首都圏に住んでいる今は気軽に催し物に出掛けられますが、それでも、海外から来るクラシックのチケットの高騰には付いて行けない気もしています。

H.Pさんのおっしゃるとおり、サントリーホールはいいですよね!
からくり時計が時間を告げるのもいいですし、ホールだけではなく、ホールの周囲にあるコーヒーショップなどで、開演前や終演後の余韻に浸るのも私は好きです。

今日も朝から、大好きなマリス・ヤンソンス,バイエルン放送交響楽団,とヨヨ-マ,五嶋みどりの共演のチケットが発売されましたがあまりの高額で買うのはやめました。。。
前回に行った公演は(マリス・ヤンソンス,五嶋みどり)もう少し安かった気がしますが???
ソールドアウトでチケットを取れない人もいたくらい人気があるので高額でも仕方ないのかな。
それに大勢の楽団員を海外から招いているので、経費も高くなるのは仕方ないかもですが。

いなばさんにも時間と余裕があればお薦めの公演です。

ところで、医療については静岡のみならず、全国的に地方は疲弊していると、いなばさんから見ても感じられますか?
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泥舟 (いなば)
2009-06-08 12:31:03
>>>>>>>>>>>>>>>>>
雨音様
>>>>>>>>>>>>>>>>>
静岡のF市に住んでたんですねー。
あの辺は海もあって魚が間違いなくおいしそう!
そして日本の最大の霊山の富士山が見える!
山と海に囲まれて、風土としては最高に恵まれた場所ですよね。


確かに、静岡は東と西を代表する東大と京大がせめぎ合って陣取り合戦みたいなのしてたかもしれません。
結果として、それが質をあげたりすることはありますよね。
競争原理も、質を向上したりFeedBackがかかったり、自浄作用がある意味では有用なシステムですしね。

新幹線使えば、東京まで1時間ちょっとで行けるし、都内での移動で一時間以上かかることもあることを考えると、実はそんなに遠く感じないです。ちょっとしたイベントのときは東京に出てくればいいわけですしね。


雨音さんもクラシックお好きなんですねー。
僕も初心者ですけど、生で聴きに行きたいって思ってるので是非お勧め講演あれば教えて下さい!

踊りを見に行っても思いましたが、やはり家でテレビ見てねっ転がっているんじゃなくて、
自分を開いて外に出ていって、その一期一会の場で体感しないと分からないことってほんと多いです。

未来では、そんな一期一会の流通できないような商品にこそ価値を認めていくような時代になっていくと思いますね。
今の拝金主義とか、金さえあれば・・って風潮は直感的にもおかしいし、システム全体としても破綻している予感がしますし。


医療については、いつかブログに書いてみてもいいですが、全国的に地方は疲弊していると思いますねー。
格差社会っていうのと同じで、地域格差が激しいと思います。

それは、たとえば東京であっても地域によっては医者が偏在して医師不足な地域があるのは間違いない。
適正配置がなされていないんですよねー。

なんとなく自由放任に任せて病院の数とか医師の偏在とかをそのままにしてたから、
明らかにしわ寄せが出てから、いまさら慌ててるって感じです。
きっと、こうして医療が崩壊していくのは、前からわかっていたはずなんでしょうけど。

それは、日本が高齢化社会に向かっていて、国債で借金バンバン発行しながら、一部の変な政治家が、自分の小銭稼ぎに奔走して日本の未来を考えていないのと同じことでしょうね。
もう泥船のようなもので、いつか沈むのはわかってるけど、床上浸水してくるまで見ないふりしてるようなもんでしょうか。


今の日本の医療制度は、もうとっくに床上浸水してきてると思いますね。
本気でヤランと、かなり危ないって感じてます。
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