「原発のウソ」は専門家らしく、批判は出来ても面白くない(例えば「安全な被爆量は存在しない」に対し、「常識的に考えて大したことない」なんて批判しても、面白くはない)と前回書いたのだが、放射線の専門家の本を読んで、小出氏も専門家と言っても放射線の専門家ではないので、肝心のところが「間違っている」ことに気付いたので、改めて批判する次第。今後も何か大きな間違いに気付いたら、随時批判していくことにする。
その前に小出氏の経歴を確認すると、京都大学原子炉研究所助教、東北大学工学部原子核工学科出身とある。「原発のウソ」にある経歴だけではやや分りにくいところもあるが、どうも原子力発電の専門家らしい。更にウィキペディア「小出裕章」(2011-07-10 23:50)を確認してみると・・・
>大学入学時は「これからは石油・石炭でなく原子力の時代」と考え原子力工学を志したが、現代の原子力工学における放射線被害の実態を知ったことで、所属機関の趣旨と逆の、原子力発電に反対するスタンスをとるようになったとしている。以後現在まで一貫して「原子力をやめることに役に立つ研究」を行なっている[2]。
>2.googleビデオ「なぜ警告を続けるのか~京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち~」(2008年10月19日放映、大阪毎日放送)
出典がついているので確実だと思うが、どうやらズブズブの反原発専門家のようだ。ムラから弾き出されて止むを得なかったのかもしれないが、これでは間違っても原発に都合のいいことは(正しくとも)言いそうにない。「原子力をやめることに役に立つ研究」って言われてもねぇ・・・。自分の知らない専門的知識を並べられて評価しすぎたようであり、その辺は素直に反省している。
そしてこの本の重要な柱は、「安全な被爆量は存在しない!」というところにあることに異論がある人はいないと思う。何せ、帯に赤字で強調されているのだし、第二章・第三章を使って放射線について解説しているのだから。
ところが、あえて言い切れば、ここが間違っているのである。何故そう言えるかというと、放射線の専門家の本を読んだから。小出氏の言は反原発専門家が専門外のことについて煽ってみたが間違っていたということでいいようだ。
で、その放射線専門家の本だが、元ICRPで大阪大学名誉教授(放射線科)の中村仁信氏の「低量放射線は怖くない」(遊タイム出版)。この人は低量放射線は全然問題ないが、原発はいずれ無くすべし(まえがき5P)という人なので、間違っても御用学者が原発擁護をしているということではないところが、逆に信用できると思う。また、原発無くすべしという政治的オピニオンは、専門外だからあまり気にしなくてもいいのではないか。それはともかく、この本の趣旨はタイトルでも分るように、放射線アレルギーを吹き飛ばすことにあるようなので、有難く参考にさせてもらう次第(科学的知見は好き嫌いではないし、あくまで中村氏のスタンスは中村氏のスタンス、ブログ主のスタンスはブログ主のスタンス。くれぐれも誤解なきよう)。
>LNTモデルを採用していない国際放射線防護委員会(ICRP)ですら、生体防御機構は低線量においてさえ、完全には効果的ではないようなので、線量反応関係にしきい値を生じることはありそうにない」と述べています。※「原発のウソ」72p
大体がICRPを持ち出した時点で、ICRPは日本政府の決定を支持していたはずだが・・・という疑問もありはしたのだが、やはり元ICRPの人の意見は説得力が全然違う。
まず、原発のウソではICRPはLNTモデル(しきい値なし仮説)を採用していないと書いているが、元ICRPの中村氏がICRPはLNT仮説だと書いている。原発のウソの小出氏自身が、ICRPはしきい値を生じることはありそうにないと書いているのだから、素直にICRPはLNT仮説と考えるべきで、小出氏にはどうも日本政府の決定を支持したICRPは原発よりだというバイアスがあって、ICRPの立場を何か勘違いしているのだと考えられる(原発よりのICRPですらというニュアンスを匂わしたいあまり、基本的なことで間違ったのではないか)。
ならば、小出氏のしきい値なし論が正しいかと言えば、さにあらず。この辺は長々引用すると、本の丸写しになってしまうので、そこまではやらない。興味のある人は購入して是非自分の目で確認してほしいが、ひとつだけ例を示すと・・・。
>LNTモデルが出てきた背景には、非常に長い期間にわたる研究の積み重ねがあります。広島・長崎に原爆を落としたアメリカは、1950年から被爆の健康影響を調べる寿命調査(LSS:Life Span Study)を開始しました。※「原発のウソ」70p~71p
中村氏が原爆調査に関する指摘を自分なりに要約すると・・・。
①原爆のデータは急性被爆に当たり、はっきりした結論は出ていないことに注意する必要があるが、急性被爆の場合は慢性被爆に比べて危険性は低いと考えて良い。
②100ミリシーベルト以下の発ガンリスクは1%以下で統計的に有意でない。
③原爆の調査は綿密に行なわれており、データは信頼できる。
④5ミリシーベルト以下は問題にならない。
⑤原爆被害者の発ガンは被爆だけが原因ではなく、被爆後のストレスが原因と推定できる。被爆者が「熱傷、外傷、食糧難による栄養不足、家族、友人の死、生活基盤の崩壊、敗戦のショック、将来への不安、恐怖」で激しいストレスに晒されたことは容易に想像できるが、これが免疫機能を低下させ、発ガンリスクを高めたのではないか。
つまり、(小出氏も長い研究の積み重ねとする)原爆調査という確たるデータに基づけば、100ミリシーベルト以下程度は統計的に有意でない1%以下のリスクしかなく、それも急性被爆の場合で、発ガン性を高める環境(ガンは日常的に発生しており、免疫機能がガンを抑えている)にあったのも明らかということ。
更には、低量放射線を浴びて返って長生きしたというデータもいくつも載っており、理論的な話も載っている。買う楽しみが無くなるといけないので書かないが、チェルノブイリの被爆の森の話も興味深い。
簡単に纏めてしまうと、低量放射線なんかよりは、過度のストレス・タ○コの方がよっぽど怖い(「低量放射線は怖くない」36p)ということ。そして免疫機能が大切。
最後に東日本大震災について考え直してみると、放射線を心配するよりは津波被災者のケアの方が大切ではなかろうか。あまり西に住んでる人間は言わない方がいいのかもしれないが、寧ろ、クヨクヨ放射線のことを心配する方が寿命が縮まりそうな気さえする。
その前に小出氏の経歴を確認すると、京都大学原子炉研究所助教、東北大学工学部原子核工学科出身とある。「原発のウソ」にある経歴だけではやや分りにくいところもあるが、どうも原子力発電の専門家らしい。更にウィキペディア「小出裕章」(2011-07-10 23:50)を確認してみると・・・
>大学入学時は「これからは石油・石炭でなく原子力の時代」と考え原子力工学を志したが、現代の原子力工学における放射線被害の実態を知ったことで、所属機関の趣旨と逆の、原子力発電に反対するスタンスをとるようになったとしている。以後現在まで一貫して「原子力をやめることに役に立つ研究」を行なっている[2]。
>2.googleビデオ「なぜ警告を続けるのか~京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち~」(2008年10月19日放映、大阪毎日放送)
出典がついているので確実だと思うが、どうやらズブズブの反原発専門家のようだ。ムラから弾き出されて止むを得なかったのかもしれないが、これでは間違っても原発に都合のいいことは(正しくとも)言いそうにない。「原子力をやめることに役に立つ研究」って言われてもねぇ・・・。自分の知らない専門的知識を並べられて評価しすぎたようであり、その辺は素直に反省している。
そしてこの本の重要な柱は、「安全な被爆量は存在しない!」というところにあることに異論がある人はいないと思う。何せ、帯に赤字で強調されているのだし、第二章・第三章を使って放射線について解説しているのだから。
ところが、あえて言い切れば、ここが間違っているのである。何故そう言えるかというと、放射線の専門家の本を読んだから。小出氏の言は反原発専門家が専門外のことについて煽ってみたが間違っていたということでいいようだ。
で、その放射線専門家の本だが、元ICRPで大阪大学名誉教授(放射線科)の中村仁信氏の「低量放射線は怖くない」(遊タイム出版)。この人は低量放射線は全然問題ないが、原発はいずれ無くすべし(まえがき5P)という人なので、間違っても御用学者が原発擁護をしているということではないところが、逆に信用できると思う。また、原発無くすべしという政治的オピニオンは、専門外だからあまり気にしなくてもいいのではないか。それはともかく、この本の趣旨はタイトルでも分るように、放射線アレルギーを吹き飛ばすことにあるようなので、有難く参考にさせてもらう次第(科学的知見は好き嫌いではないし、あくまで中村氏のスタンスは中村氏のスタンス、ブログ主のスタンスはブログ主のスタンス。くれぐれも誤解なきよう)。
>LNTモデルを採用していない国際放射線防護委員会(ICRP)ですら、生体防御機構は低線量においてさえ、完全には効果的ではないようなので、線量反応関係にしきい値を生じることはありそうにない」と述べています。※「原発のウソ」72p
大体がICRPを持ち出した時点で、ICRPは日本政府の決定を支持していたはずだが・・・という疑問もありはしたのだが、やはり元ICRPの人の意見は説得力が全然違う。
まず、原発のウソではICRPはLNTモデル(しきい値なし仮説)を採用していないと書いているが、元ICRPの中村氏がICRPはLNT仮説だと書いている。原発のウソの小出氏自身が、ICRPはしきい値を生じることはありそうにないと書いているのだから、素直にICRPはLNT仮説と考えるべきで、小出氏にはどうも日本政府の決定を支持したICRPは原発よりだというバイアスがあって、ICRPの立場を何か勘違いしているのだと考えられる(原発よりのICRPですらというニュアンスを匂わしたいあまり、基本的なことで間違ったのではないか)。
ならば、小出氏のしきい値なし論が正しいかと言えば、さにあらず。この辺は長々引用すると、本の丸写しになってしまうので、そこまではやらない。興味のある人は購入して是非自分の目で確認してほしいが、ひとつだけ例を示すと・・・。
>LNTモデルが出てきた背景には、非常に長い期間にわたる研究の積み重ねがあります。広島・長崎に原爆を落としたアメリカは、1950年から被爆の健康影響を調べる寿命調査(LSS:Life Span Study)を開始しました。※「原発のウソ」70p~71p
中村氏が原爆調査に関する指摘を自分なりに要約すると・・・。
①原爆のデータは急性被爆に当たり、はっきりした結論は出ていないことに注意する必要があるが、急性被爆の場合は慢性被爆に比べて危険性は低いと考えて良い。
②100ミリシーベルト以下の発ガンリスクは1%以下で統計的に有意でない。
③原爆の調査は綿密に行なわれており、データは信頼できる。
④5ミリシーベルト以下は問題にならない。
⑤原爆被害者の発ガンは被爆だけが原因ではなく、被爆後のストレスが原因と推定できる。被爆者が「熱傷、外傷、食糧難による栄養不足、家族、友人の死、生活基盤の崩壊、敗戦のショック、将来への不安、恐怖」で激しいストレスに晒されたことは容易に想像できるが、これが免疫機能を低下させ、発ガンリスクを高めたのではないか。
つまり、(小出氏も長い研究の積み重ねとする)原爆調査という確たるデータに基づけば、100ミリシーベルト以下程度は統計的に有意でない1%以下のリスクしかなく、それも急性被爆の場合で、発ガン性を高める環境(ガンは日常的に発生しており、免疫機能がガンを抑えている)にあったのも明らかということ。
更には、低量放射線を浴びて返って長生きしたというデータもいくつも載っており、理論的な話も載っている。買う楽しみが無くなるといけないので書かないが、チェルノブイリの被爆の森の話も興味深い。
簡単に纏めてしまうと、低量放射線なんかよりは、過度のストレス・タ○コの方がよっぽど怖い(「低量放射線は怖くない」36p)ということ。そして免疫機能が大切。
最後に東日本大震災について考え直してみると、放射線を心配するよりは津波被災者のケアの方が大切ではなかろうか。あまり西に住んでる人間は言わない方がいいのかもしれないが、寧ろ、クヨクヨ放射線のことを心配する方が寿命が縮まりそうな気さえする。