観測にまつわる問題

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沖縄のジュゴンをどう考えるか

2018-03-05 19:03:08 | 政策関連メモ
普天間基地の辺野古移設を考える上で、鍵になってきそうなのがジュゴンの存在です。翁長知事は環境アセスで抵抗する構えのようですが、辺野古の自然が貴重であることは否定できず、安倍政権は苦戦を強いられる可能性もあります。そこで沖縄のジュゴンをどう考えるか考察してみました。

ジュゴン(ウィキペディア)

ウィキペディアを眺めると、ジュゴンの棲息地として圧倒的なのはオーストラリアです。モートン湾は「300頭もの群れで大集結する世界で、まれな海」(オーストラリア モートン湾 幻のジュゴン 大集結を見た(ワイルドライフ))、シャーク湾は「世界最大の生息地。その数は1万頭」(地球最古の生物とジュゴン生息地!西オーストラリアのシャーク湾 skyticket 観光ガイド)、ジュゴン漁で有名な木曜島もあります。いずれもジュゴンの主な棲息地である広大な熱帯や亜熱帯の浅海が広がる地形です。つまり沖縄に巨大なジュゴンコロニーができる可能性はないと考えられます。


モートン湾(スタンプメイツ


シャーク湾(パースで手作りざんまい


木曜島(木曜島の歴史

仮に復活しても観光資源としてはジュゴンはやや厳しい感じです。モートン湾やシャーク湾でもジュゴンはそれほど観光資源になっていないようです。これはジュゴンが「極めて警戒心が強いため、「幻」と言われるほど目撃が難しい生きもの」(先のワイルドライフのリンク先より)であることが関係しているようです。世界遺産シャーク湾の売りはシェルビーチであり、ストロマトライトであり、ジュゴンが大規模に棲息していることであり、モンキーマイアで大規模に棲息しているイルカと触れ合えること、アボリジニの文化であるようです(モンキーマイア(カンタス航空))。数が極めて多いオーストラリアでもジュゴンとの触れ合いは売りになりません。実際に沖縄での目撃例は限られています。イメージ戦略にジュゴンは有効とは思いますが、過剰な期待をするべきではないと考えられ、結局は現在の棲息地をあまり壊さないようにして、仮に数が増えて他に手を挙げるところがあれば環境整備していくという方向性がいいのではないかと思います。あまり数が減りすぎると増やすことは困難になりますし、仮に例えばオーストラリアからジュゴンを連れてくると仮定してたとしても、棲息地の小ささなどを考慮すれば、あまり明るい展望があるやり方のようには思えません。

近年でたびたび目撃されている沖縄の残るジュゴンの棲息地は沖縄本島の辺野古が面する大浦湾や古宇利島周辺のようです。この内古宇利島では検索しましたが、いるにはいるようですが目撃例はやはり少なく、少なくとも観光で売りにはなっていません。2005年に開通した古宇利大橋がジュゴンにプラスと思えませんが、特に反対運動も無かったようです。今、辺野古でジュゴンの保護を騒いでいる人達も、辺野古移設問題の片がつけばスーッといなくなるんじゃないかと思いますね。ちなみに古宇利島で盛んなのはウニ漁のようです(今帰仁漁業協同組合)。ウニはジュゴンの餌のアマモを食べます。

漁業だけでは先細り… 辺野古新基地の請け負い目指す 会社を設立した漁師の胸中(沖縄タイムズ 2017年8月24日 06:00)

>子どものころから大浦湾で潜って魚を捕ってきた。海面から透けて見えるたくさんの魚やサンゴに「気持ちが晴れた」と振り返る。25歳で漁師となり、沖合でマグロ中心の漁をしてきた。しかし最近は漁獲量が減り、赤土の流出などで目に見えて大浦湾が汚れてきたと感じている。4月には基地建設のため大浦湾を埋め立てる工事も始まった。

辺野古基地反対もいいですが、本気でジュゴンを守る気があるのなら、赤土の流出対策とか他にもたくさんやることはあるのではないですか?所詮はジュゴンは基地移設反対の口実であるように見えます。どうも農業が不味いようで対策が必須のようです(なぜ、赤土等の流出が起こるのか NPO法人おきなわグリーンネットワーク)。

辺野古の住民は基地移設に概ね賛成です。大浦湾に臨む住民が環境保護に熱心だという話もないようですし、基地が出来たからと言って大浦湾の環境が決定的に損なわれる訳でもないでしょう。

基地はそれはそれとして、沖縄のジュゴンはそっとしておくのが良いのではないですか?本気で守る気があるのなら、基地だけに拘らずあらゆる方面で全力で保護に動く必要があると思いますが、そんな様子もないようですしね。

最後に沖縄の環境に暗い話題が続いたので、世界遺産の話をしておきますが、沖縄や奄美の自然で本当に希少なのは海の生物ではなく、陸の生物だと思います。海は繋がっていますしね。進化論はガラパゴスで生まれましたが、海で分断されることによって固有の生物が島に棲息することになります。また、島の固有の生物は生息数が少なく滅び易い条件にあると思います。世界遺産の主目的は保護であって、必ずしも活用ではないようです(そちらはジオパークがあります)。世界遺産に選ばれるにしろ選ばれないにしろ、ヤンバルクイナ(環境省)が棲むやんばるの森(やんばる野生生物保護センターホームページ)、イリオモテヤマネコ(環境省)が棲む西表島の原生林(西表野生生物保護センターホームページ)、アマミノクロウサギ(環境省)が棲む奄美大島(奄美野生生物保護センター)や徳之島の環境を守っていこうということですね。

※3月6日追記:分かり易いシンボルがいる環境を守ることが他にはない価値になり、地域のブランド力を高めると思います。

地域ブランド学序説(地域ブランド研究会 中嶋聞多)

>表2 ブランド・モデルの8要素
①ブランドの強み ブランドの核となる“地域性”の強みは何か? 他地域と比較して 明確な独自性・革新性はあるか?
②ブランドの領域 何にブランドネームを付けるのか? ①地理的な範囲と、②“地域性”(何で括るのか、何のまちか)の両面で明確化する必要がある。
③送り手 当事者意識が高く、“競争の場”で実行力のある送り手主体となってるか? そもそも送り手は明確か?
④送り手の夢 理念はあるか? 受け手からも共感される夢か? 送り手の都合になっていないか? 共有できているか?
⑤受け手 受け手は誰か? 戦略夕一ゲットは誰か? 主要なターゲットは誰か?
⑥シンボル ブランドを一瞬で想起するシンボルはあるか? ブランドが提供できる価値を連想できるか?
⑦ステークホルダー ブランドの独自性を高める協力者はいるか? ブランドの一貫性を乱すことなく夢を共有できているか?
⑧約束 結果としてブランドは受け手に対し何を約束しているか? 送り手の夢やブランドの強みを“受け手価値(受け手の言葉)”に置き直すと何を提供できることになるか?
出典:二村宏志2004「地域ブランドはマネジメントして創る」商工ジャーナル30(8 353)

明確な独自性があり、領域もハッキリしており、夢も理念も受け手(自分で開拓しないといけない要素もあると思いますが)もシンボルも約束(他にない自然、癒される環境など)もあるでしょう。後は送り手がやる気を出してステークスホルダーを巻き込んでいけば、地域ブランドは確立していくと思います。地域ブランドが確立すれば、環境以外の要素にも波及すると考えられます。

正義と秩序を基調とする国際平和と日本国の安全を誠実に希求する憲法改正案

2018-03-05 16:42:32 | 政策関連メモ
本日の読売社説をもとに憲法9条に関して考えてみます。

日本国憲法第9条
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

憲法9条改正案 世論喚起へ具体的に論じよ(読売新聞 2018年03月05日 06時00分)

>2項を残した上で、「自衛隊」や「自衛のための必要最小限度の実力組織」の保持を明記する案が出ている。いずれも「自衛力」を明文化する規定と言える。2項が禁止する「戦力」とどう違うか、明快な説明が求められる。

2項に「前項の目的を達成するため」とあるので、1項を参照して戦力の定義を考えるしかないと思います。1項抜きに戦力の定義を考えると、戦力とは戦闘力を持つ部隊だと一般には定義されるようですから、自衛隊は違憲と判断される可能性が高まると思います。

これまでの政府見解も必ずしも誤りではないと思いますが、誤解を招く表現だったのではないでしょうか?実際問題、憲法学者の多くが自衛隊を違憲と見做し、裁判所は自衛隊の憲法適合性を判断していない状況があります。

憲法9条に関する学説は多々あって、論争を決着させることは困難でしょうし、決着するとしても万一違憲になったら自衛隊を解散させるのかという問題があります。自衛隊は国民の多くに支持されていますし、どう考えても解散させる訳にはいきません。こうした状況に終止符を打つのが自衛隊明記案だと思います。

具体案として出てきた政府見解を憲法に書き込むという条文案には筆者は反対しています。今まであった解釈する余地が無くなってしまうからです。それだったら9条改憲しなくていいと思っていますが、改憲せずに違憲判決リスクを無くせると思っている訳ではありませんし、憲法学者の反対や裁判所が判断しないことを軽くみている訳でもありません。実際に平和安全法制の時もそうでしたが、安全保障を考えないことが平和だと思っているかのような人達の根強い反対に政府与党・自衛隊は苦しめられてきました。その非生産的にも思える反対論の根拠となってきたのが憲法9条です。それもむべなるかなで9条には戦争放棄・戦力放棄と現に書かれています。ならば政府見解をそのまま書けばいいという話が出てきていると理解しています。その主張を仮に認めるとしても、政府見解そのものが憲法学者の多くに無視・反対され、裁判所に判断を避けられているのですから、論争が始まると案外苦しくなる可能性もあると思います。

筆者は2項削除というか憲法9条そのものを全部書き換えるのが本来はベストだと思いますが、やはり政府与党の一致や国民の理解を得るのが難しいようですから、他に何か考えなければなりません。やる以上は当然より理解が得られる条文案にすべきですが、条文改訂が安全保障政策にマイナスになるのも本末転倒のように思います。何故マイナスだと見るかと言えば、専守防衛を貫くとしてもミサイル時代ですから、相手がミサイルを持って攻撃してきてもこちらはミサイルで反撃しないというような考えは、安全保障政策をニュートラルに考えるなら、有り得ない考えだからです。常識的に考えれば、自衛が認められるなら、相手が持っている兵器は大体認められるはずです。こういう直感的な意見を改憲で潰してしまっては、安全保障論からの賛成論が盛り上がってこないと思います。しかしながら、こういう考え方そのものに抵抗感が強いことも理解できます(ロシアや中国に対抗して核・ミサイル開発するというような話は現実的ではありません)。ですから、解釈の余地がある現状及び現在の自衛隊の現状を維持しながら、法改正で環境の変化に対応できる条文案が必要ではないかと思った次第です。

しかしながら、同害報復の環境をただちに整備しようとしていると受け取られるとやはり改憲にマイナスである可能性は確かにあります。そういう訳で現行の9条で同害報復を狙っていないと受け取れる解釈を考えてみました。

1項には正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求すると書かれています。これを持って暗黙の脅しにならないようこれまで通り敵本土の攻撃を主目的とした装備を否定できると考えられます。以前、西教授の憲法改正案(産経ニュース 2018.2.22 11:00)に賛成しましたが・・・

「現行の第9条をそのまま残し、新たに第9条の2を加える。第9条の2
(1)日本国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、自衛隊を保持する。
(2)自衛隊の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属し、自衛隊の行動については、文民統制の原則が確保されなければならない。
(3)自衛隊の編成及び行動は、法律でこれを定める。」

・・・とある中、例えば(3)に「装備体系」を追加することも考えられます。法改正が必要になると思いますが、「無用の脅威を感じさせないため、敵本土の攻撃を主目的とした装備はこれを認めない」などと書いておけば、誤解の余地がありませんよね。ただ、これを憲法でやるのが嫌な訳です。例えばアメリカとて神様ではありません。安倍政権とトランプ政権の関係は良いと思いますが、将来どうなるかは誰にも分かりませんよね。下手に憲法で同害報復を否定すると、アメリカとの関係が悪くなったと仮定して、撤退するよと言われた時に、一々憲法改正して対処するよと返すのは具合が悪い訳です。別に日米同盟を悪くしようという訳ではないですよ?でもあらゆる可能性を想定しなければ、安全保障になりません。法改正でよければ、必要だと考えられることは直ぐに対処し易い訳です。軍刑法の問題もありますし、ポジティブリストの問題もあります。本来は政府の判断ひとつでできればいいですけど、それだと疑われて改憲が難しくなるなら、法律で決めるのはどうでしょうということです。

そういう訳で現行の9条を残すという条件であれば、筆者は解釈変更・法律の改正で現状可能な安全保障政策を制限する如何なる条文も憲法に追加すべきでないと考えます。

勿論9条改正に消極的になった訳ではありません。平和安全法制の時の混乱を繰り返さないためには、自衛隊が違憲でないとハッキリさせること、法改正で対処することは何ら疚しいことではないと明らかにすることは大きな意義があると考えられます。そのためには現在の政府見解をそのまま憲法に明記するべきではなく、芦田修正が追加された経緯を重視して(そもそも合憲であるので)、現行の憲法9条の条文をそのまま肯定した上で自衛隊を合憲化するというようなやり方が妥当と思うようになりました。これは現行の憲法9条そのものには手をつけない加憲案でもあります。

そうした内容で国民投票が通らない可能性があるなら、自衛隊が違憲と誤解されかねないので、発議しないだけだと思います。最終的に決めるのは国民なのですから、まずは広く議論を喚起し国会で議論していくことだと思います。