観測にまつわる問題

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四電は困惑しているのでは?

2018-03-25 16:24:36 | 日記
伊方原発 運転差し止め、執行停止申し立て却下 広島高裁(毎日新聞 2018年3月22日 19時46分)

>四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じた昨年12月の広島高裁の仮処分決定について、同高裁は22日、四電による執行停止の申し立てを却下した。三木昌之裁判長は「差し止め命令を取り消す明らかな事情があるとはいえない」と理由を述べた。

>四電は「認められなかったことは残念。異議審で早期に命令を取り消していただけるよう主張・立証に全力を尽くす」とのコメントを発表した。住民側の原告団は「予想通りの内容でとりあえず安堵(あんど)している」としている。

この件は、筆者は勿論再稼動派なんですが、擁護の論調もやや違和感あったんですよね(伊方原発「差し止め」 広島高裁「阿蘇山の巨大噴火」が理由 産経「原発以前に九州が灰燼に 説得力に乏しい判決」 朝日「周辺に火山多く、影響大」 東京「何と明快な論法」と評価 産経新聞 2017.12.20 10:00)。破局的噴火を想定するべきではないという主張に見えますが、破局的噴火についての知見がまず大してないようですし、原発に対する厳しい世論はあるので、ここは破局的噴火を想定してもいいんじゃないだろうかいう気がしました。まぁ勿論地質学的スケールでの危険を真剣に取り合ってもしょうがないというのは分かるのですが(極論を言えば九州に住むなということにもなりかねません)、まぁあまり意識しない巨大な危険が話題になってもいいんじゃなかろうかと(阿蘇周辺に風評被害があるかもしれませんが、想定するなという結論だと危機管理は不可能ですし、未知のものにチャンレンジしないというのも面白くありません)。日本で起こらなくても何処かで起こるかもしれませんしね。どうせ無風で伊方が再稼動してもドミノ倒しで再稼動する訳でもないですし、再稼動して万一のことがあったら困ります。逆にこれをクリアした方が再稼動の流れも強まるかもしれません。

高裁は四電が前と同じ主張をしていると言っているようであり、四電はそれを否定していないようであるので、高裁の人の中では四電の主張が理解できていないのかもしれません(筆者は四電の主張に納得しています 中央構造線活断層系にまつわる誤解(伊方原発問題なし))。判決全文とか一々見てられないというか、そういうのは四電がやるでしょうから、とりあえず高裁に同情的な論調の記事を少し覘いてみます。

「伊方原発の運転差し止め」を決めたベテラン判事の本音を読み解く(現代ビジネス 町田徹 2017.12.19)

>四国電力の伊方原発の運転再開を差し止めるとした仮処分で、130km離れた阿蘇カルデラが全国で1万年に1回程度とされる「VEI(火山爆発指数)7級」の「破局的噴火」を起こす可能性を指摘、原発立地として不適当なだけでなく、十分な噴火対策を講じていないことは国の原子力規制委員会の審査上の不備だと断じたのだ。

>広島高裁の決定文は実に400ページを超す力作だ。

>争点を、(1)司法審査の在り方、(2)新規制基準の合理性に関する総論、(3)新規制基準の合理性に関する各論、(4)保全の必要性、(5)担保金の額――の5分野とし、このうち③の新規制基準の合理性に関する各論を、(ア)基準地震動策定の合理性、(イ)耐震設計における重要度分類の合理性、(ウ)使用済燃料ピット等に係る安全性、(エ)地すべりと液状化現象による危険性、(オ)制御棒挿入に係る危険性、(カ)基準津波策定の合理性、(キ)火山事象の影響による危険性、(ク)シビアアクシデント対策の合理性、(ケ)テロ対策の合理性――の9項目に整理。

>そして、この5分野9項目のうち、たった1項目を除いて、伊方原発の運転を差し止める仮処分の根拠になるものはないと断定した。それが、火山の影響だ。

>現在の火山学の知見では、阿蘇カルデラの火山活動の可能性が十分小さいと言えず、噴火規模の推定もできないことから、約9万年前に起きた過去最大の噴火VEI7を想定して、伊方原発の立地の適切性を評価せざるを得ない、と決定は指摘。

>四国電力が行った地質調査や火砕流シミュレーションから、火砕流が原発の敷地に到達する可能性が小さいと言えないので、原発の立地として伊方原発は不適切だと断じたのだ。

脱原発派の人は結論が原発を止めるなら、プロセスなんてどうでもいいのだと推察しますが、プロセスを見ることを否定したら、どんな判断も成り立ちません。筆者の目には、火山以外を問題なしとしている広島高裁の判決は脱原発派に厳しいものも含まれているように思います。火山以外ならほぼ日本の電力会社は安全の問題をクリアして再稼動してしまうのではないかとも考えられるからです。実際問題、(大津波に関係なさそうな日本海側の)原発の再稼動は進んできています。

さて判決全文は検索しても見つからないようですので(あっても400ページを超す力作を全部読みたいとは思いませんが)、「広島 高裁 全文 伊方」で検索して出てきたページにわりとまとめているようなページがありましたので、それで確認してみます。

【伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立】広島高裁による決定【原文・要旨全文】(法律ニュース部 2017/12/17)

>2 司法審査の在り方(決定175頁~184頁)
>(1) 抗告人ら住所地と伊方原発との距離(広島市居住者につき約100km,松山市居住者につき約60km)に照らすと,抗告人らは,伊方原発の安全性の欠如に起因して生じる放射性物質が周辺の環境に放出されるような事故によってその生命身体に直接的かつ重大な被害を受ける地域に居住する者ないし被害の及ぶ蓋然性が想定できる地域に居住する者といえる。

非常に強い違和感を感じます。松山市居住者が重大な被害を受けるというなら、筆者も重大な被害を受けることになりますが、寝耳に水です。伊方から松山ぐらい距離が離れていたら、別に事故が起こっていいとは思っていませんが、まず影響ないと考えるのが普通です。広島居住者に至ってはシャシャリ出てくるなでしょう。


ふくしま復興ステーション                            原発事故原子力規制委員会によるシュミレーション

風向きによっては絶対にないとは言いませんが、やはり避難する可能性は低いでしょうし、帰宅困難地域になる可能性はまずないと言っていいのではないかと思います。

アメリカは複数原発で事故が起きたケースを想定するべきと指摘しているようですが(福島第1原発事故 避難範囲、なぜ国内外で違うのか 日経新聞 2011/3/20 17:44)、常識的に考えて複数の原発で同時に事故が起きたとして(災害の場合は近くにある原発は同じ問題が起きると考えるべきです)、消防の数などの問題はあるにせよ、避難範囲は大差ないとする専門家の意見を採用すべきです。一体全体どういう原理で離れた原発の事故が影響しあって掛け算になるのでしょうか?

火山の場合は原発事故が起こるような破局噴火が起きた場合は、帰宅困難地域は大体原発の影響に拠らず破局噴火の影響で全滅していると考えるべきではないかと思います。どういう影響があるか分かりませんが、原発が埋まる可能性だってあるでしょう(ただし筆者は伊方が埋まるとは思っていません)(筆者が気になるのはそういうシミュレーションです)。いずれにせよ、破局噴火で原発事故が起きたとして、電力会社が賠償責任を負うか非常に怪しいところがあるのではないでしょうか?

ですから、破局噴火を想定した原発事故を想定した避難訓練を考えてみますと、原発以前に到達する可能性のある全ての地域で避難訓練をするべきではないか?(逃げられるとは思えないが)ということになります。それが破局噴火です。誰のせいでもありません。地球のせいです。何時起こるかも分かりませんが、破局噴火を想定して原発を止めるならば、原発が関係ない範囲の地域でも破局噴火を想定した対策を求めないと辻褄が合わないということになります。原発どころじゃない範囲で被害があるのに、原発だけ云々しても仕方ありません。ですが、起こりそうにもなく避けられない九州全滅を想定して何になるのかと思いますよね。気になって仕方がない人は九州から逃げるなり、日本から逃げるなりしないといけないようです。

【閲覧注意】火山噴火の火砕流に巻き込まれると、こういう風に死ぬことになる(YouTube)

火砕流が原発に届くとどうなるか興味あるのは間違いありませんので、誤解なきよう(さすがに大きな噴石や溶岩が届く範囲に原発はないと思いますが)。

結局のところ、破局噴火で死亡が想定される人は原告になれず、破局噴火が届かないところの人は原発の被害も概ね届かないと考えられ、原告になれる人がいないのではないかとも考えられますが、それを言っても仕方が無いので先に進みます。

>(2) このような場合には,伊方原発の設置運転の主体である四国電力において,伊方原発の設置運転によつて放射性物質が周辺環境に放出され,その放射線被曝により抗告人らがその生命身体に直接的かつ重大な被害を受ける具体的危険が存在しないことについて,相当の根拠資料に基づき主張立証(疎明)する必要があり,四国電力がこの主張立証(疎明)を尽くさない場合には,具体的危険の存在が事実上推定されると解すべきである。

原発事故以前に、破局噴火で原告が死ぬという具体的危険が存在しないことについて、相当の根拠資料に基づき主張立証(疎明)する必要があり,原告がこの主張立証(疎明)を尽くさない場合には,具体的危険の存在が事実上推定されると解すべきである・・・ということになりますが、よろしいでしょうか?破局噴火で死ぬなら放射能を少々浴びる浴びないは関係ないですよね。よほど原発に近くない限り事故で即死は考えられません。どう考えても火砕流の方が即死要因です。原発事故よりよほど危ないのが破局噴火です。より大きい危険を見ず小さな危険を云々してもしょうがありません。調査していないと思いますが、松山や広島で阿蘇の破局噴火の影響がない薄いと証明可能であれば、伊方でも証明可能です。そして伊方では既に調査済みです。

>(2) 本件では,伊方原発の地理的領域に位置し将来の活動可能性のある火山である阿蘇カルデラ(伊方原発から約130km)について,現在の火山学の知見では,伊方原発の運用期間中に①の火山の活動可能性が十分小さいと判断することはできず,②の噴火規模を推定することもできないから,③により阿蘇カルデラの過去最大の噴火である阿蘇4噴火(約9万年前)の噴火規模(火山爆発指数〔VEI〕7)を想定し,火砕流が伊方原発敷地に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価することになる。

>しかし,四国電力が行った伊方原発敷地周辺の地質調査や火砕流シミュレーションからは,阿蘇4噴火の火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできないから,④により伊方原発の立地は不適であり,伊方原発敷地に原子力発電所を立地することは認められない。

こんなことじゃないかと思いましたが、結局のところ要するに四電の火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいという調査を否定しているだけですね。全くの予想通りです。じゃあ前回見りゃ分かるだろで端折った部分を詳しく書いておきましょうか(といっても大したことありません)。

伊方発電所火山影響評価について(四国電力)

まずボーリング調査・地表調査結果が13p~17p・19pで見られます。これは比較的堆積条件がよく阿蘇4噴出時の堆積物が保存されやすいと考えられる地点を3つ含みます。これでないと言うのだからないでいいんじゃないでしょうか。実際に大分や山口などでは堆積物が確認できています。堆積物が見つかりやすいところでないと言っているのに、これ以上探したところで、尚更見つからないと考えられます。あるのに見つかってないというより、ないと考える方が妥当です。もしもこの調査で不十分だと考えるなら、どの辺が不十分なのか具体的に指摘するべきです。不十分を指摘できていないならば、調査を否定できようはずもありません。調査を否定できていないのに、認められないとか言って裁判所に一々発電所を止められたら日本はやってけないですよ。

地裁はよくトンデモ判決を出すと揶揄されますが、高裁でもあるにはあるんでしょうね。

なぜ地裁はトンデモ判決を出すのか 〜地裁ウォッチャーの分析〜

>打ち上げ花火型
>これまで積み重ねられて来た一般常識や通念・風習、あるいは政権や与党に対して一石を投じる系の判決を出す裁判官はこれに分類されます。彼らの多くに共通するのは、純粋な正義感持って誇り高く長年仕事をこなしてきたにも関わらず裁判官としての出世が見込めなくなり、自らの理想と現実とのギャップに耐えきれなくなり、意図的にヤバい判決を出してしまうパターンです。福井で話題になったトンデモのうち原発再稼動の方はこちらに該当します。
>この「意図的に」というのが大事で、彼らはさざ波が起きることを期待して、あるいは確信を持った上で、池に対して判決という石を投げています。ここがロマンティック路線型との大きな違いです。
>つまり判決を出すにあたって裁判官個人に動機があるわけです。それは名誉欲であったり、政権に石を投げつけることで心のバランスを取ったり、また退職後に人権派弁護士として活動する為の下地を作るためという極めて危ない動機によるものもあります。

まぁこの裁判官の何を知っている訳ではありません。トンデモ判決だなと思ったのは事実ですし、そういうことってあるらしいね、似ているなと思ったのも事実です。あくまで個人の感想に過ぎません。ここはチューゴクではありませんし、(裁判所ですが)お上に逆らったところで、消されることもないでしょう(この裁判官の方が上に逆らっているような気はしますが、消されることもないでしょう)。

さて伊方の火山影響評価に戻りますが、注目すべきは18pです。火砕流シミュレーションが行われ、伊方原発に届かないことが示されています(シミュレーション結果は既存文献に示された大分県における阿蘇4火砕流堆積物の分布と概ね整合的である)。要するに距離がありますし、それ以前に佐賀関半島が邪魔なんですよね。佐賀関半島までも16kmありますが、佐田岬半島は40kmもあって、伊方は付け根あたりにあります。火砕流が向かってきている八幡浜にも届かない感じで伊方に届くとは考え難いところがあります。念のため

阿蘇火山 火砕流堆積物とカルデラ(kubota)
阿蘇1~3はそこまでの大きさではなく、阿蘇4が一番大きい訳ですが、いずれも火砕流が向かう方向が地形により限定されていることが分かります。4回の阿蘇の破局噴火の証拠(堆積物)を見る限り、到底伊方に届くとは思えません。

規模が大きければ大きいほど距離の近いところで尾根などものともしないのは分かりますが、距離が離れれば離れるほど流動体の性質で低いところを流れる・・・ような気がします。


伊方発電所火山影響評価について(四国電力)

ここで破局噴火の可能性を論じるのは止めておきます。何故なら、最大レベルの破局噴火を想定しても、伊方までは届かないと証拠を持って認定できるからです。明らかに起こる可能性が非常に低い上、届く可能性がないものを論じてどうしようというのでしょうか?

四電もこれは同じことを言ったとしても仕方ありません。理解できていないのか?と思ってしまいますよね(あるいはわざとだろと見切っているかもしれませんが)。何処が悪いのか指摘できないダメ出しは困るものです。

北の漂着船の謎

2018-03-25 13:43:51 | 注目情報
北の漂着船の正体…上陸パニックが起きる日 拓殖大学教授 荒木和博(産経新聞 2018.3.24 01:00)

>拉致被害者を本気で救出しようとするならこの状況をもっと積極的にとらえ、情報の収集をしていくべきである。直接の情報ではなくても北朝鮮の最新の状況についてなにがしかの情報は得ることができるからだ。
>一方、漂着急増について国民にはまだ十分な情報が提供されていない。

北朝鮮漁師が流れ着くことはしばしばあるみたいですから、最初漁師かと思っていましたが、そうではないやはり怪しいという意見も多いようですね。

本当に漁師なのか漁師じゃないなら何なのかは少なくとも徹底的に明らかにしていくべきかもしれません。

一般に不法入国・不法滞在・不法就労以外に犯罪を犯していない場合は強制退去させるようですが、本人確認がとれなかったら、検察官に引渡しても良いようです(不法入国で逮捕された場合の処理 オーバーステイ・不法滞在からの在留特別許可申請)。国交がない北朝鮮人は必ず本人確認がとれませんので(仮に北朝鮮に照会しても信じる術がない訳です。信じられるならとっくに拉致被害者は帰ってきています)、国が通達しておけば必ず取り調べができるのではないでしょうか?中国には朝鮮族(中国人になります)がいますが、海から来る可能性がありません。ロシアにいるのは朝鮮人でしょう。韓国人は韓国が協力すれば身分は照会できますので、可能性は除外できます。ゆえに身分照会できないのは北朝鮮人だけだと考えられますし、それで良いのではないでしょうか?

>例えば現状で海では海保、陸に上がったら警察ということになっている。しかし、排他的経済水域まで含めて五百万平方キロ近い海面を全て合わせて一万三千人の海上保安庁の人員で対処するのは不可能だ(しかも今は尖閣周辺にかなり人員が割かれている)。

尖閣から海保が解放されることは考えた方がいいかもしれませんね。一番いいのは上陸して基地をつくることですが、これが難しい以上、銃撃で効率的に漁船を蹴散らすということになります。他所の国では一般的だと思いますけど(例えば韓国が中国に発砲しているというニュースは目にすることはあります(韓国、中国違法操業の漁船に発砲200数発 大紀元 2017年12月21日 18時30分))、工作船事件でもない限り、海保が銃撃したというようなニュースを見ることはありません。この違いが何なのかについて筆者は良く分かっていません。

領海等に関する用語(海上保安庁)を見る限りでは、排他的経済水域で銃撃するのは国際法的に可能ではあるように思えます。日本も憲法上漁業資源を守るために銃撃する法的根拠がないという訳ではないのかもしれません。9条1項に国際紛争を解決する手段としては~とありますが、目的としては漁業資源を守るためだからです。これがアウトなら外国人の違法行為を取り締まるための銃撃が不可能になってしまいます(日本の警察が銃撃はそもそもあまり聞かない話ですが)。

漁船じゃない公船を追い払うための銃撃はEEZにおいて9条1項の関係で難しいとも考えられます。接続水域以内は(密入国扱いで)それも可能であるように思えます。

日本の漁船等は尖閣海域に立ち入らないように指導されているようですが、それも止むを得ないところだと思います。何をされるか分からないですしね。

中々海保は厳しい環境におかれている印象ですが、日本の海を守る仕事を頑張ってほしいと思います。

違憲論争に終止符を(日経新聞 2018/3/25 社説 感想)

2018-03-25 02:21:44 | 日記
問題残したままの自民の自衛隊明記案(日経新聞 2018/3/25)

>現実主義的で政治的な改憲論に、法律的な筋論から異論を唱えたのが石破茂氏らである。
>9条2項の「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を削除しなければ戦力とは何か、否認した交戦権の意味は何かといった議論が続き、自衛隊の存在を含め、どこまでいっても9条問題は決着しないという考え方だ。

自衛隊明記案では自衛隊の司法における違憲判断リスクがほぼ無くなり(自衛隊が明記されているのですから)、憲法学にも政治にもそれは波及すると考えます。納得しない人がいるのは仕方ありませんが、概ねこれで下火になるはずです。自衛隊の存在は世論の高い支持を得ていますし、司法が違法と判断しないならば、何が何でもの人に勝機はありません。やはり違憲論争に終止符(日経新聞 2018/3/25 11:40)が打たれると言っていいと思います。

>議論の最終段階で実力組織としての自衛隊の範囲について「必要最小限度」としていたくだりを不明確だとの反対論を受けて削除した。自衛権に言及すべきだという意見も踏まえ「必要な自衛の措置」という表現に変更した。
>しかしこれは同じことである。その範囲がはっきりせず、集団的自衛権の行使の問題などこの議論が続くのも避けられない。自衛の範囲をめぐる解釈論のくびきからも逃れられない。

(必要)最小限を説明するのは厄介です。必要な措置を説明するのは何でもありません。

集団的自衛権(ウィキペディア)は「ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利である。その本質は、直接に攻撃を受けている他国を援助し、これと共同で武力攻撃に対処するというところにある」とされます。集団的自衛権の範囲については、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であって、これにより我が国の存立が脅かされた時」に武力行使できると定められています。存立危機事態とは日本の範囲内で米軍(基地)等が攻撃される事態、核抑止が攻撃される事態が想定されるところです。日米同盟が崩壊すれば核抑止は崩壊しますし、核抑止が崩壊すれば、日本は明らかに存立危機事態に陥ります。

自衛の範囲も集団的自衛権の範囲が定まればおのずと定まります。

議論や解釈論が一部で続いてもいい訳です(下火になるでしょうが)。大事なのは違憲判決リスクを無くすことで、これがほぼ実現するのが自衛隊明記案です。

>もうひとつ指摘しておかなければならないのは、首相が自衛隊明記でも解釈は変える必要がなく、国民投票で否決されても自衛隊合憲に変わりはないと説明している点だ。これでは何のための自衛隊明記なのか訳が分からない。

政府解釈は変える必要はありません。自衛隊は認められているという解釈を憲法に書き込むだけだからです。国民投票で否決されても政府の合憲判断には変わりありません(共産党政権が誕生した時は違憲判断がなされます)。司法が違憲と判断した時、違憲になるのであって、司法は合憲判決を下していません(違憲判決も下していません/判断を控えています)が、自衛隊が明記されることによって合憲だと判断すると推定できます。元々自衛隊の世論の支持は高いですから、違法判決リスクを無くすことで、概ね不毛な神学論争は終結すると考えられますし、一部で議論されたとしても、世論も司法も動かないなら、あまり意味があるものとは思えません。

>この先は単に9条の条文の字句にとどまらず、日本の安全保障のあり方を含め、自衛隊の運用の枠組みを定める安全保障基本法の新設もセットで論議を進めていくべきではないだろうか。

安全保障のあり方の議論を進めるのが狙いのひとつでもあると思います。そもそも違憲だ(裁判所が判断することですけど)とか、おまえじゃ話にならない(安倍政権では駄目)とか、そんな野党の言い分を聞くから、一向に実のある議論ができない訳です。違憲かどうかは裁判所、安倍政権では駄目かは選挙(あるいは選挙で選ばれた自民党議員)が判断するのが日本(国憲法)のあり方です。

自衛隊に関する法律は残念ながら今回は新たにつくられないようです。