「定員内入学拒否」のない
公立高校を求める要望書
今年の要望書です。
今日、6月2日、県教委に提出。
ここに書かれていることに、どれだけの人がうなずいてくれるのか。
中学3年生の、0.2%。
1000人に2人です。
中学3年生のクラスが5学級として、200人。
つまり、中学校5校の中3の生徒のうち、二人だけが、
いまの時代、高校生になれない子はいない、と思われている社会で、
教室の椅子がいくつも空いているのに、座らせてもらえないのです。
しかも、その子が何をがんばればよかったのか、を誰も教えてくれません。
ただ、切り捨てるだけ。
ただ、見捨てるだけ。
それが、公平、公正、平等な、この社会のルールだと、人としての心と誇りをもって言えるか。
それを、問いたい。
◇
「定員内入学拒否」のない
千葉県の公立高校を求める要望書
貴職におかれましては、日頃より千葉県の子どもの人権と教育の保障に尽力いただいておりますことに敬意を表します。千葉県ではこの春55,190人の子どもが義務教育を終了し新たな一歩を踏み出しました。
当会では1989年以来、一貫して「希望する生徒全員の高校進学」の実現を要望してきました。当時の中学卒業生数は97,780人、進学率は94.3%であり、9万2千人余りが進学できました。
その後28年余、高校進学を希望する生徒=県民の願いは増え続けました。
当会は障害児者の支援を担う団体ですが、教育支援を必要とする生徒は外にも不登校、社会的養護、貧困、生活保護家庭など多くあり、それ故「希望する生徒全員の高校進学」を要望してきました。
中学卒業する生徒への思いは、県民、貴教育委員会共に違いなく、あらゆる場で子どもの支援の機会や施策が試みられ実現されてきました。
特色化選抜等の受検制度の改革、三部制高校等の新設、自己申告書の制度化(不登校・障害)、特別配慮申請書の制度化、エレベーターや「加配職員」の派遣など、後期中等教育の機会を求める生徒への多様な支援が実現されてきました。
こうした千葉県教育委員会並びに学校現場の理解と実践の下、当会からも119人の生徒の高校進学が実現してきました。
また近年の「障害者差別解消法」「子どもの貧困防止法」「児童福祉法改正」等の成立に伴い、「医療的ケア児」も含め様々な困難を抱えた生徒に教育の機会が広がりつつあります。
民間や市町村においても、生活保護家庭や社会的養護の場で進学を希望する子どもへの学習支援が広がりつつあります。
千葉県子どもの貧困対策大綱においても、中学卒業生の進路保障が貧困の連鎖を食い止める上で必要な支援として掲げられ対策が進められています。
会発足当時2.5%であった中卒での就職者は0.3%にまで減少しましたが、この就職者の多くは生活保護家庭や養護施設の生徒でもあります。
2017年の児童福祉法の改正では、法の対象「児童」を一部22才にまで延長し、高校大学を含めての「自立支援・教育支援」の実現を掲げています。
これらの法律や取り組みは、障害や家庭の貧困等、子どもに責任のない要因で教育を受けられないという「社会的不利益」をなくす取り組みであり、貧困の連鎖、虐待の連鎖、障害者差別の解消を目指すものです。
これら国民の願いと取り組みに反し、今年も千葉県の公立高等学校では160名を超える中学(卒業)生が、「定員内」で「入学を拒否」されました。
しかも「定員内」で入学を拒否される理由・根拠を説明される子どもや保護者は一人もいません。
千葉県教育委員会が一昨年より、「定員確保を遵守するように」と県内のすべての高等学校に通知・指導を行っているにもかかわらず、未だに一部の高等学校では、この「定員内入学拒否」の慣習を継続しています。
高等学校の「定員」は、県民への公約であり、「特別な理由」(例えば退学に値する行為等)がない限り「定員」分の「教育」を行う予算、人員、設備が準備されています。
近年の新しい法律の成立や改正、学習指導要領の改訂等、これほどの知恵と配慮を積みあげ、多様な生徒に教育を与える機会を目指してきた社会において、なお15歳の0.2%の子どもだけが、目の前にある教育の機会と希望を拒否され一切の教育行政の支援から断ち切られる現状は不公平、不公正、不平等そのものです。
高校進学率が50%に満たなかった時代から70年以上をかけて、この社会は、県民は、すべての子どもに平等に教育の機会を与えることを目指してきました。
その願いから疎外されるのが、定員内で入学を拒否されるわずか0.2%の子どもです。
この子たちを救済し支援し教育を保障するために、高校を増設する必要はありません。
教員を増やす必要もありません。
ただ東京や神奈川の学校が何十年も誠実に受け入れているように、進学を希望する生徒を「定員内」で拒否しないこと、それだけです。
千葉県でそれができない理由はありません。
千葉県でもすでに多くの高校に置いて、不登校、社会的養護、生活保護家庭、医療的ケアを必要とする生徒を受け入れ実践されてきた実績があります。
入試の合否は校長の権限ですが、校長がその判断の根拠としているのは県教育委員会が作成する「入学者選抜実施要項」です。
そうであるなら、「説明責任」を伴わない定員内入学拒否者が生じない実施要項を、千葉県教育委員会の責任の下に作成してください。
「千葉県子どもの貧困対策推進計画」の中で森田県知事は、「すべての子どもが、そのおかれた環境に左右されることなく、夢と希望をもって成長して、『千葉で生まれ育ってよかった』と思える社会の実現」を目指すと宣言されています。
東京、神奈川には「定員内入学拒否」される生徒は一人もいません。
神奈川、東京に架かる橋一つを隔てて、千葉には「定員内入学拒否」する学校があるのです。
しかも定時制高校の二次・追加募集は、「作文、面接」のみで、「入学拒否」という校長判断がなされます。
これは個々の受験生の問題ではなく、千葉県の教育の公平・公正の姿勢、教育のセーフティネットの役割を担うべき定時制高校の良心の問題です。
千葉に生まれた子どもが15歳で「定員内入学拒否」され、一言の理由も説明も助言もなく見捨てられる制度を、千葉県から消滅させてください。
1000人に2人の犠牲を生み続ける制度の継続を県民は望んでいません。
千葉県のすべての子どもが安心と希望をもって大人になるため、公平・平等に開かれた教育の実現を切に願い下記事項を要望致します。
記
1. 千葉県教育委員会が定める公立高校の定員は、中学卒業予定者のうち進学希望者全員の後期中等教育機会を保障するに足る数として設定されているのであるから、定員確保が遵守され、かつ「説明責任を伴わない定員内入学拒否」が生じない選抜実施要項を作成し、希望する生徒全員の高校進学を実現してください。
2. 平成29年度千葉県公立高等学校の入学者選抜において、実質「定員内入学拒否」された15歳の生徒について、「障害者差別解消法」「子どもの貧困防止法」「児童福祉法」の主旨に基づき、その後の各生徒の状況について調査し、どのような生徒が入学拒否をされているのか、その生徒に対しどのような教育、福祉等の行政支援が保障されているか否かを検証し、義務教育後の進路保障から疎外される0.2%という少数の生徒への支援策を講じて下さい。
3. 5年間に渡り、定員内で入学拒否されているAさんと、今年東葛飾高等学校(定時制)を3度に渡り定員内入学拒否されたBさんの、高校進学への意欲と希望を認め、学校現場による看護師・介助者加配の不安等を解消し、高校進学を実現させてください。
4. 平成28年6月の「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」により、地方公共団体は、人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児(以下「医療的ケア児」という。)の支援に関する保健、医療、障害福祉、保育、教育等の連携の一層の推進を図るよう努めることとされた内容について、高等学校への理解を進めるための研修会等を実施して下さい。
以上
【添付資料】
定員内入学拒否者 一覧 (当会作成)
最新の画像もっと見る
最近の「定員内入学拒否という差別」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ようこそ就園・就学相談会へ(498)
- 就学相談・いろはカルタ(60)
- 手をかすように知恵をかすこと(29)
- 0点でも高校へ(393)
- 手をかりるように知恵をかりること(60)
- 8才の子ども(161)
- 普通学級の介助の専門性(54)
- 医療的ケアと普通学級(90)
- ホームN通信(103)
- 石川憲彦(36)
- 特別支援教育からの転校・転籍(48)
- 分けられること(67)
- ふつう学級の良さは学校を終えてからの方がよくわかる(14)
- 膨大な量の観察学習(32)
- ≪通級≫を考えるために(15)
- 誰かのまなざしを通して人をみること(134)
- この子がさびしくないように(86)
- こだわりの溶ける時間(58)
- 『みつこさんの右手』と三つの守り(21)
- やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち(50)
- 感情の流れをともに生きる(15)
- 自分を支える自分(15)
- こどものことば・こどものこえ・こどものうちゅう(19)
- 受けとめられ体験について(29)
- 関係の自立(28)
- 星になったhide(25)
- トム・キッドウッド(8)
- Halの冒険(56)
- 金曜日は「ものがたり」♪(15)
- 定員内入学拒否という差別(97)
- Niiといっしょ(23)
- フルインクル(45)
- 無条件の肯定的態度と相互性・応答性のある暮らし(26)
- ワニペディア(14)
- 新しい能力(28)
- みっけ(6)
- ワニなつ(351)
- 本のノート(59)
バックナンバー
人気記事