ジョン万次郎がアメリカの捕鯨船に助けられたのは1841年でした。
それよりずっと昔から言われてきたことがあります。
『教育者というものは、いつの世でも、子どもの感情の激しさ、意固地、わがまま、強情さをなによりもいやがるものです。
いくどとなく、繰り返して、従順教育はどれほど早く始めても早すぎることはない』と。
1784年に出版された本。
『子どもの教育と指導の試み』には、こう書かれています。
『ムチを持ってわがままを追い払うことに成功すれば、
その子どもは従順そして善良な子どもとなり、
以後、立派な教育を施すことができる。
従順とは以下のような状態を言う。
すなわち、子どもが
1・命令されたことを喜んで果たし、
2・禁止されたことを素直にやめ、
3・大人が子どものために決めた定めに喜んで従う。』
◇ ◇ ◇
こられは、私が子どものころに求められたことです。
そして大人になってからは、私が子どもに対して、こうするように求められてきたものです。
私のやり方が、学校や施設で受け入れられないのは、この教えに反するからかもしれません。
普通教育の基本もこれですが、特殊教育や特別支援教育は、さらにです。
「少人数」「個別」のメリットとは、この従順教育が徹底しやすい、ということです。
自閉症という子どもの行動の特徴を、「こだわり」というマイナスの評価で名付けられたのも、従順教育の価値に照らしてのことにすぎません。
自閉症に限らず、ダウン症でも知的障害でも、専門家たちは障害の「特徴」として、「こだわり」といい、「パニック」といい、「頑固」といい、「強情」といい、「柔軟性がない」といい、「わがまま」といいます。
どれも、「従順ではない」と言っているだけの表現です。
それは、「科学的な言葉」なんかではなく、18世紀に書かれた古い教育書の教えをなぞっているだけのことだと分かります。「人権」という言葉がなかった時代の教育書の教えです。
大人は、「従順」でない子どもを嫌い、分けたがります。
大人たちは、「分ける」理屈を時代に合わせて作り、時代に合わせて教育方法を思いついてきただけなのです。
「廃人学校」という言葉から始まり、「特殊教育」から「特別支援教育」と名前は変わっても、結局のところ、教育の目的が「従順教育」であるかぎり、子どもたちが自分のありのままを肯定して生きるのは難しくなります。
だから私は、子どもが「命令されたことを喜んで果たす」とき、「私の命令」に立ち止ります。
私は誰に対しても、「命令」などしたくはありません。
だから、私が「会話」だと思っていることが、子どもにとって「命令」になっていないかと立ち止ります。
子どもが、「禁止されたことを素直にやめる」とき、その子どもの「素直」の中身に立ち止ります。
「素直」の内容が、本当に納得してのことなのか、あきらめてのことなのか、思考停止の結果なのか。それが気になります。
「素直」でなく、「抵抗」してくれた方が、コミュニケーションはできます。
『大人が子どものために決めた定めに喜んで従う』
そんな子どもを育てる気持ちは、私にはありません。
「子どもを守る? 何から?」
「とりあえず、私から」
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