ワニなつノート

守る? 何から? (その7)

守る? 何から? (その7)

《なっちの現場検証》



なっちの事故を知ったとき、私はかなり動揺しました。

「ずっと縛っておくわけにもいかないし…」
「注意力0のように見えても、ちゃんと自分なりに危険回避してるし…」
「自分で危険を感じるしかないし、最悪のことを考えれば、骨折くらい…」

相談会や例会での、自分のセリフをいくつも思い出していました。

現実に骨折…、もしかしたら切断かも…。
なにより一歩間違ってたら…と考えると、自分の言葉が取り返しのつかないものに思えました。

幸い、命は助かりました。
でも…。
そのとき、本棚から取り出したのは、「危険な学校」という本でした。

著者は、失敗学で有名な畑村洋太郎。
副題に「わが子を学校で死なせないために」。
帯に「年間70人もの子どもが、学校内の事故で命を落としている…!」とあります。

なっちの事故は学校内ではありませんが、とにかく何をどう考えはじめればいいのか。ヒントがほしくて本を読みなおしました。

学校内で毎年70件以上の死亡災害が起こっていることについて、次のように書かれています。

「うまくいく方向からだけ見て守るべきルールを考え、それを徹底的に遵守させることで安全を確保するのが、従来型の安全対策の姿です。
このやり方はすべてが想定したとおりに動いているときには大きな力を発揮しますが、想定外のことが起こったときには途端に正しい対処ができなくなってしまう危うさがあります。」



そう、守るべき規則を、私たちが分かっていても仕方ありません。
障害のある子、たとえば言葉を話さない子が、重大な事故にあうのを防ぐには、何をどう考えたらいいのか。
規則をひたすら守ることができるなら、こんな心配はしません。
学校の死亡事故と同じように、私たちが「想定」できない、子どもの動き、行動で、事故にあうことを防ぐにはどうすればいいのか。

なっちが、同じような事故に合わないようにするには、どうしたらいいのか。

「安全対策には理屈で考えたとおりにいかない難しさがあります。
どのような対策に効果があるかは、過去の事故を見ながら判断するしかありません。
重大事故はなるべくなら起こってほしくないものですが、起こったら起こったで、そこから真摯に学ぶ姿勢を持つことが大切です。
そこで学んだことを生かせば、次の事故を防止したり、被害を最小限に食い止めることができるのです。」


これらの言葉をすがるように読み返しました。

事故から数日後、なっちのお見舞いに行ったとき、なっちママの心配は「次の事故」でした。
「絶対、いつか交通事故に合うと思ってた。」
「こんなに落ち着きがなくて、絶対にひかれない方がおかしい」
「事故の前日にも、なっちはいつか車にぶつかるよねって話してたばかりだったの」
「だから、絶対にまた事故に合うにきまってる…」

それを聞いて、私は少し落ち着きました。
「なっちが事故に合ったのは、なっちが『落ち着きがない』からなのかな…」
「ほんとに、なっちが注意力ゼロで、車とか意識してなくて飛び出してばかりいる子なら、とっくの昔にひかれてたんじゃないかな…」
「でも1年生から一人で通学してて、6年まで何もなかったんだから、なっちの「障害」とは別に考えないといけないんじゃないかなぁ…」

そんなことを話しながら、じゃあ退院したら事故現場と、なっちの通学路を歩いてみようということになりました。

(つづく)


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