トラウマとフルインクル(その89)
《「同調」といくつか「新しい能力」について(Z)》
ふつう学級という世界で、子どもたちは何をしていたのか。
「授業という生活」を送っているのだと書いたことがある。
それも間違いじゃない。それも含めて、ふつう学級という世界がある。
そこで子どもたちがしているのは、一人ひとりが主人公として、一緒に生きること。
男とか女とか、障害があるとかないとか、歩けるとか話せるとか、じゃなく、こどもたちが「している」こと」は、「同調」と「共鳴」のなかにいまがら「主体感覚」を失くさないでいること。
やっちゃんの運動会の6年間が、一日の6回としてうかぶ。
ともちゃんやたっくんの6年間、9年間の季節の移り変わりがうかぶ。
子どもたちが、身体と人生と主体感覚を使って、何をしていたか。
「同調」していた。「共鳴」していた。
「文字」はあまり覚えなかった。「言葉」はあまり覚えなかった。「計算」は興味のないままだった。
だけど、一日24時間の中で、8時過ぎから午後までの時間を、主体感覚をなくさないで、孤独感を感じないで、仲間集団の声を聞き、話しかけ、話しかけられ、授業中の先生の声とみんなの声に、自分の声や体を同調させてきた。
毎日、毎月、毎年、小学校の6年間に、彼らが学んだ「同調」と「共鳴」と「リズム」と歌や、1年生の声、2年生の声、3年生の話題、4年生の人間関係、5年生の希望、6年生の人間関係、みんなの小学生という子ども時代の思いでの共有と同調と共鳴と、思い出、懐かしさ、ぬくもり、やさしさ、楽しさ、感動、の記憶。目には見えない「同調」というもの。
◇
「星の王子さま」に書いてあること。
「かんじんなことは目には見えない」
「あんたが、あんたのバラの花をとても大切に思っているのはね、そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ」
「人間っていうものは、このたいせつなことを忘れているんだよ。
だけど、あんたは、このことを忘れちゃいけない。
めんどうみたあいてには、いつまでも責任があるんだ。
まもらなけりゃならないんだよ。」
そういえば、物語の最初は、うわばみにのまれているぞうの話でした。
その絵が帽子にしか見えない大人のために、中身が見えるように描いてみる、「同調」の話でした。
しかも、相手を大切におもうためには、「ひまつぶし」しなきゃいけないんだ。
「ひまつぶし」する場所を、ふつう学級という。
◇
「贈る能力、受け取る能力」とは、お互いに同調することで生まれ、同調する日々の積み重なれは重なるほどその能力は向上していく。
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