「あほリズム」
(109)
以前ポートリー(養鶏場)でアルバイトをしている時、誤ってケ
ージの扉を閉め忘れても鶏たちはすぐには逃げ出そうとはせずに、
もちろん檻から逃げ出せたとしても厳重な鶏舎から脱出することは
叶わないのだが、押し込められた狭い檻の中でまるで当惑している
ように頻りと頭を傾いで外の世界を眺めていた。すでに彼女等(卵
を取る為全部メス)は檻の外の世界を見失ってしまったのだ。
さて、こんなことを言うと非難を免れられないのだが、秋葉原事
件や数多の無差別殺傷事件を犯した青年たち、さらには同級生から
の集団による迫害に苦しんで自ら命を絶つ少年少女たち、或は年間
三万人を超える自殺者たちは、逃げ場のない狭い「檻」社会の中で
必死で檻の外へ逃げ出そうと足掻いたのではないだろうか。我々は
短絡的に彼等の異常を非難するが、自ら生きることの困難から逃れ
る為にたとえ扉が開いていても狭い檻の中に留まり、檻から逃げ出
そうとする者たちを嘲笑うことでしか僅かばかりの自尊心を保てな
いのだ。果たして、檻から逃げ出そうと必死で足掻いた彼等が異常
なのか、否、開け放たれた扉の前で頭を傾げながら新しい世界へ飛
び立とうとしない我々の方が異常だということはないだろうか。
12月17日の朝、中高生らが乗るバスに包丁を持って乱入し多
数の未成年者に危害を与えた事件の容疑者(27)は「人生を終わ
りにしたかった」と供述した。(asahi.comより抜粋)
http://www.asahi.com/national/update/1229/TKY201012290338.html
(番外)
「あほリズム」を一年の煩悩の数(108)で年内は収めるつも
りでしたが、煩悩だらけの自分にはやはり無理でした。
私の煩悩に付き合って下さった皆様の新年の幸福を願っています。
どうぞ、良いお年をお迎え下さい。
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