「まさか、なでしこが勝つなんて!」

2011-07-19 04:18:38 | 「閑話放題」


「まさか、なでしこが勝つなんて!」

 十八日未明にキックオフしたフランクフルトでの女子サッカーW

杯決勝「なでしこ」対USA戦をテレビで見た。既に一日が経とうと

しているので様々な論評がマス・メディアを賑しているから被るか

もしれないが、ちょうど裏番組のNHKでは男子の南米杯の準々

決勝ブラジル対パラグアイ戦もほぼ同時刻に放送されていた。

本来ならそっちが見たかったが、「なでしこ」戦のキックオフの方

が少し早かったのでこっちにチャンネルを合わせた。

 開始早々「なでしこ」は米国の激しい攻撃に遭い為す術もなく防

戦に終始していた。過去の対戦成績(22戦3分19敗)が表してい

るように体躯に勝る米国は競り合いを制してほぼワンサイドでボー

ルを支配していた。「なでしこ」のパスは尽くカットされて「ああ、

これは絶対負けるな」と、サッカーを見てきた者なら誰しもそう思

ったに違いない。余りの実力の差に嫌気が差して何度かNHKへチ

ャンネルを変えた。そして、もう2,3点は取られているに違いな

いと思いながら、それでも「なでしこ」が気になってCXに戻ると

何故かゴールラインは破られていなかった。米国の執拗な攻撃に、

譬え競り合いに負けてもフリーでシュートだけは打たせまいとチェ

ックを怠らなかった。米国の拙い攻めにも助けられて何本ものシュ

ートがサイドネットを揺らし、或いはバーに救われた。勝敗の行方

を決定づけたものを挙げるなら、前半の米国の攻撃を耐え忍んだこ

とだ思う。もちろん、後半に入ってからも米国の優勢は変わらなか

ったが、その勢いは幾分衰えて縦パスを多用するようになった。そ

のうちの一本がゴールに繋がったが「なでしこ」は諦めなかった。

全く幸運としか言いようのない、とは言っても詰めてなければ生ま

れなったのだが、リバウンドを押し込んで同点に持ち込んだ。延長

戦終了間際の同点ゴールはコーナーキックから生まれたが、高さに

勝る米国選手と競らずにゴールを狙うにはニアサイドしかなかった。

しかもダイレクトで決めなければ潰されてしまうことは明らかだ。

沢選手のバックキックは見事だったが、蹴ったボールが何処へ行く

か確信を持てないのがバックキックやオーバーヘッドキックなのだ。

延長ロスタイム直前にはゴール前でフリーでボールを受けた相手に

果敢にチャージしてレッドカードを受けて退場させられた選手が被

災地東北の出身であったこと、あのチャージがなければ決定的な決

勝ゴールを決められて、恐らく惜敗は免れなかっただろう。その想い

は残りの10人にも伝わってPK戦でも自分を失わずに戦えたのでは

ないだろうか。一方の米国の得点は何れも意図した通りの得点だっ

た。しかし「なでしこ」のそれは意図を越えた意地の得点だった。つまり、

実力では劣っていたが精神では勝っていた。そして、その精神力がPK

戦のプレッシャーを跳ね飛ばした。

 ありがとう!「なでしこ」ジャパン、おめでとう!「なでしこ」ジャパン。

 そして、「なでしこ」に熱中して全く忘れてしまった南米杯の試

合もまた、強豪ブラジルがパラグアイに一本のシュートも打たせ

ず圧倒しながら得点出来ず、0対0の末PK戦で敗退したことを

眠りから覚めて知った。


                                    (おわり)