「あほリズム」
(275)
共産党による一党独裁体制の中国にとって、戦後一貫して自民党
が一党支配してきた日本が、民主的な国民投票によって政権交代を
果たしたことがどれほど彼らに恐怖を与えていたかを未だ我々は気
付いていない。いま彼らは、選挙によって選ばれた民主党政権が崩
壊して政権が守旧派の手に戻ったことに胸を撫で下ろしているに違
いない。そして、
「ほら見たことか、民主主義は国家を誤らせるではないか」
と、民主化を求める国民の排撃に利用する。
(276)
つまり、中国共産党幹部たちにとって、自民党とは国は違えども
同じ国家利権に群がる謂わば同じ穴の何とかなのだ。その利権政治
は日本の自民党政権に、敢て言えば恩師と仰ぐ田中角栄に倣ってい
る。彼らは、国家が経済成長する限りに於いては、国民は権力者の
不正にも目をつぶるものだと信じている。つまり、いま中国共産党
指導者たちが真似ているのは高度成長期に利権を食いものにした自
民党政治なのだ。彼らは少なからず自民党にはシンパシーを感じて
いるに違いない。
(277)
だから、一党独裁の中国共産党指導者たちが、その師たる日本の
自民党が政権を奪われたことを忌々しき事態だと思った違いない。
民主化は独裁体制を危うくすると。しかし、独裁国家が繁栄を存え
た例がないことを洋の東西を問わず歴史が証明している、と言いた
いところだが、自己を虚しう処するを美徳とする東洋では権力者の
不正は見逃されて長らえる。
(278)
もしかしたら、中国が尖閣諸島に領海侵犯して民主党政権を揺さ
ぶった背景には、民主主義によって政権交代を成し遂げた日本の政
治が、自国内の民主化運動を勢いづかせることを最も怖れたからで
はなかっただろうか。
(279)
更に付け加えるなら、わが国が成長戦略に失敗して財政緩和によ
る債務の積み増しによって国家破産にでもなれば、何もせずに、尖
閣諸島どころか沖縄さえも、それどころか日本本土ですら中国共産
党が買い叩いて支配するようになるかもしれない。そして、彼らは
残された古文書を見せてこう言うのだ、
「そもそも、古より邪馬台国は中国の従属国だった」
と。